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ただそれだけ。~芽吹いたばかりの小さな気持ちを忘れたくないので書き留めておく~

#20240206-353

2024年2月6日(火)
 書いた途端、また新たな波がきて、私の心も――里子であるノコ(娘小4)の心も荒立ってしまいそうで書くのをためらっていた。
 ここ数日、とても淡く、とてもはかない想いが私のなかにある。

 言語化すると、消えてしまいそうで直視できない。
 でも、残しておかねばとも思う。

 「する/しない」で悩んだとき、私はできるだけ腰が重いほうを選ぶ
 その行為が浮かんだ時点で、おそらく私のなかにそれを「したい」気持ちがあると思うからだ。なかなか実行しないのは、なにかしら面倒で億劫で手間がかかる壁があるためで、それでもたもたしている。
 「する」と決めれば、壁をどうするか、次のステップに進める。
 後悔するかもしれない。
 でも、私は「しない」後悔より「した」後悔のほうがマシだ。

 ノコがかわいい。

 長い前置きの上、それかい!と突っ込まれそうだが、里子であるノコが委託されて4年半。
 ようやく芽吹いたのだ。
 日々、ノコには「かわいい」「愛してる」「大好き」と伝えている。
 だが、心が伴っていなかった。ノコが知ったら人間不信になりかねない、とても残酷なことだと思う。口にしていれば、私のなかでそういった想いが生まれるかもしれないという願いもあった。
 他人同士で作る「家族」であっても、夫婦は惚れた腫れたがあり、合意の上で婚姻関係を結ぶ。お見合いであっても好ましくない人とはしない。政略結婚が現代日本でもあるのかわからないが、多くの人が好み、望んで家族になる。
 お互い成人しているため、性格もある程度形成されている。

 里子の場合は異なる。
 一時保護でない限り、いきなり一緒に暮らすことはなく、交流期間がある。我が家は11ヶ月と長くかかった。だが、子どもが暮らす施設に足を運んだり、里親家庭を訪問したりする交流と同じ家で暮らすのは違う。
 交流でその子がわかるなんて、ありえない。
 少しずつ、環境に慣れる期間といったほうがいい。
 よほど双方馬が合わない、里親が養育できないと思わない限り、受託になる。
 そこに「運命」や「一目惚れ」なんてないと私は思う。
 確かなものは何ひとつないが、これも何かの「ご縁」だと信じるだけだ。
 少なくとも私の場合はそうだった。

 一緒に暮らすようになっても、わからないことだらけの日々だった。
 今もそうだが、ノコはなんせ不機嫌で怒っていることが多い。いくら説明しても我を通したがる。
 話し合いたくても癇癪かんしゃくを起こし、あふれる怒りをぶつけてくる。
 暴言や荒れた行動に疲れ果ててしまう。ひとつ屋根のしたにいるため、里親側も気持ちの切り替えが難しい。
 養育者ゆえ、嫌な気分になるからと放置し、距離――この距離は冷静にいなるための距離ではなく、関わるのをやめる距離――を置くわけにもいかない。
 互いに心が壊れたらおしまいだと思っても、委託解除をすべき限界が判断できない。
 とにかく。
 一日一日を乗り切る。

 ノコは幼稚園年長児で我が家にきた。
 施設が作ってくれたアルバムにある写真はすでに幼児で、私たち夫婦はノコの赤ちゃんの姿を知らない。
 よく赤ちゃんのときに抱いた愛おしさがあれば、手こずる年代も乗り越えられるという話を聞くが、それがない私たちは何を支えに荒れるノコに向き合えばいいのかわからなくなる
 もっと幼いうちに、私たちのもとにきたのなら、互いにしんどい思いをせずに済んだのではないか。時間は巻き戻せないのに、そう思ってしまう。

 ノコがかわいい。

 これを書いている今、ノコは小学校にいる。
 今朝も朝食はのろのろ。ちょっと目を離すと、食事中なのに漫画本に手を伸ばす。家を出る5分前に慌てて歯を磨き、顔を洗い、髪を結んで飛び出して行った。登校班のメンバーはすでに集合場所にそろい、ノコが加わると同時に出発した。
 未だに機嫌よく帰宅する日は少ない。
 玄関ドアを開けた途端、靴も脱がず、ああだったこうだったと怒り、嘆く。
 それでも、なんだかかわいい。
 私が図太く、鈍くなったのか、それはわからない。
 ノコの背からランドセルを下ろしながら、私は「そうだったの」と返す。
 以前なら、その返答さえ気に入らず、ノコは怒鳴っていた。
 「ママには、どうせ私の気持ちなんてわからないし!」
 それも減った。
 とはいえ、穏やかな日々が訪れたわけではない。
 それでも、なんだかノコがかわいくて、ちょっと笑いたくなる。
 ただそれだけ。
 ただそれだけの話。

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森谷はち🐝里母&子育て&読み聞かせ
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