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【往来堂書店】2024年文庫売上冊数ランキング

今年の年末は繁忙のピークが12月の半ばにあり、日によっては前年比600%というイミワカラン数字を叩き出したりとかなりの盛り上がりだったんですが、そのぶん下旬は例年より穏やかで、溜まった仕事をゆっくり片付けていました。ようやく落ち着いて本が読めるかな、といったところですが、はたして。

さて、昨年に引き続き今年も文庫の売上冊数ランキングを公開します。今年は文庫がよく売れた! 3ケタ越えのタイトルが複数あったり、ご当地本の発売が重なったりと、往来堂としては豊作な一年でした。それでは10位から、簡単なご紹介とともにどうぞ。


第10位

津村記久子『この世にたやすい仕事はない』(新潮文庫)

2018年発売の文庫ですが、新潮社営業部の方による手書き帯が功を奏して全国的にも売れたようです。切実さと可笑しみが共存した津村作品の特徴を捉えた名コメントはこちらから。帯ひとつでこんなにも既刊を売り伸ばせるなんて、書店員も負けてられないですな。

第9位

彬子女王『赤と青のガウン』(PHP文庫)

刊行から8年経ち品切れとなっていたものが、去年の5月にツイッターでバズり、今年の春文庫となって復刊したという、その経緯も含めて印象的な一冊。きっかけはSNSだったものの、上の世代の方にもよく手に取られていました。先日小学館文庫に入った『日本美のこころ』も初動からよく売れています。

(元ツイート、Kindleのスクショを貼っているが、これは真似しちゃいかんぞ!)

第8位

乗代雄介『旅する練習』(講談社文庫)

まだ一年経っていなかったのか。この小説に関してはいまだ語る言葉を持てていないのがもどかしい。現代小説のオールタイムベストを挙げろと言われたらまず間違いなく入る一冊。発売時からたくさん仕入れて、たくさん売ることができました。

乗代さんといえば、最新作『二十四五』が来月選考の芥川賞にノミネートされましたね。今回で五回目のノミネート。受賞云々はともかく、単行本の発売が楽しみです。もちろんたくさん仕入れます!

第7位

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』(河出文庫)

邦訳の少ない(あるいは未紹介の)作家の受賞が続いていたノーベル文学賞で、いきなりアジアの、しかも邦訳作品が多数ある作家が受賞し、読書・書店業界が色めきだちましたね。単著として唯一文庫で出ていたのが本作でした。

ハン・ガン作品、実はまだ読めておらず……。かねがね評判は聞いていたのですが、「ずっしりくる」イメージがあり、これは"元気なとき"に読んだほうがいいかもと、先延ばしにしていたのでした。『菜食主義者』は積まれてはや4年ほど……。"元気なとき"なんて、なかなかないですねえ。来年こそ。

第6位

高山羽根子『首里の馬』(新潮文庫)

隔月で開催している「空犬の読書会@往来堂」の課題図書がランクイン。高橋も読みましたが、この小説はすごかった。散りばめられた要素を丁寧に読みほぐしていくことで、幾層にも連なる物語の流れが見えてくる。まさしく読書会に向いた一冊だと感じました。

個人的にも、今年は「読書会」というものに目覚めた一年でした。友人たちを誘ってレンタルスペースを借りて、二時間みっちりおしゃべりする。たいてい話し足りないので、居酒屋に移動して二次会をしたり。みんなで同じ本を読んできて話すだけのことに、こんなにも豊かで愉しい拡がりが秘められていたなんて。来年一発目は同じく高山羽根子さんの『パンダ・パシフィカ』でやる予定になっていて、とても楽しみです。

次回の往来堂での読書会は2/21、課題図書はオースン・スコット・カード「無伴奏ソナタ」です。空犬さんが司会進行・解説をしてくださいますので、初めての方もぜひお気軽にご参加ください! お申し込みはこちらから。

第5位

本橋信宏『上野アンダーグラウンド』(新潮文庫)

ご当地本その1。上野はすぐそこですからね。「とりあえず買っておくか」という感じで皆さんお手にとっていただけたようです。まだまだ山積み中! 

第4位

森まゆみ 編『谷根千文学傑作選』(中公文庫)

ご当地本その2。まさに谷根千ど真ん中のウチが売らねば!と意気込んで初回100冊注文、一週間足らずで半分捌けてびっくり仰天。10月の刊行以来毎週コンスタントに売れ続け、ちょうど本日200冊突破。スバラシイ!

(毎日一作品ずつ読む店長の計画、うまくいったのかしら……?)

第3位

ガルシア=マルケス、鼓直 訳『百年の孤独』(新潮文庫)

今年一番の事件、『百年の孤独』がバカ売れしたこと。いやあ、売れるだろうとは思っていたんですよ、長らく待たれていた文庫化だし、往来堂のお客さんにはガイブン読みも多いし。それで結構思い切った数を初っ端から入れてもらってはいたんです。まさか一週間で消えるとは。あの慎重な新潮社もかなり多めに刷っていたはずなんですが、予想を大きく超える反響、重版に次ぐ重版。ちょっとした、いやちゃんとしたお祭り騒ぎになってましたね。数年前に単行本で読んでいた高橋も、まんまと買ってしまいました。しかも2冊。なぜ……?

↑これは公式グッズに「ゴキゲンなガルシアマルケスTシャツ」があるのを発見して即購入、るんるんで着ている図です。

↑これは思わぬところに百年の孤独を見つけてしまった例です。なんでこんなツイートにこんなにいいねがつくんだ。世の大人たちはいったい何をやっているのか。

ちなみに公式サイトいわく「ムーチョ」は「もっと」を意味するスペイン語とのことで、これはほんとうに百年の孤独なのかもしれない。湖池屋はいったい何をやっているのか。

第2位

「D坂文庫2024夏 小冊子」

毎年恒例の文庫フェア「D坂文庫」の推薦文をまとめた小冊子です。高橋の夏はこれの編集作業に消えました。毎度のことながら作業が大幅に遅れ(なにぶんひとりで準備しているもので……)開催時期がずれ込んでしまいましたが、今年もたくさんの方にお買い上げいただき、フェアとしての売上も好調でありがたい限りです。

過去開催分含め、小冊子はまだまだ販売中です。まとめ買い大歓迎! 往来堂にお越しの際はぜひ!

第1位

「謎の文庫」

すみません、よくわからないものが1位です。

はじめは文庫棚の一角でひっそりと始めた試みでしたが、ありがたいことに置いてすぐに反応があり、追加追加で気付けば売り場が拡張していました。現在は文庫棚一列と入口平台+αで展開中です。

こちら、展開開始した9月頭から現在までで累計300冊以上売れています。題を伏せているとはいえ、ひとつのタイトルをこれだけの冊数売ったのは、書店員人生で初めての出来事です。1000円ちょっとで映画が見放題の時代に、得体の知れない商品(中身はほんとうにオススメなのです)を手に取ってくださること、奇跡だと思います。お買い上げいただいた皆様、誠にありがとうございました。元の表紙もすごくいい雰囲気なので、読み終えたらカバーを外して愛でていただけると嬉しいです。


今年もたくさんお買い上げいただき、ありがとうございました!

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