多様性の欺瞞を暴いた先で、僕たちは繋がれるのか 朝井リョウ『正欲』
私がこの小説を初めて読んだのは2年前、新しく知った多様性という概念を万歳三唱して信じてみたけれど、それで自分の人生が救われるわけではないと気付いた後だった。
発刊間もないハードカバーを定価で買って読み、本棚の一軍エリアにしっかり並べていた朝井リョウの『正欲』。こないだふと、もう一度読み返してみようと手に取った。当時書き散らした未完の感想文も発掘したので読み返したら、ずいぶん多様性に対して反動的な書き味で笑った。揺り戻しもある程度落ち着き、物語のあらすじを理解した今なら、新た