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古典文学お手軽読本その16 堤中納言物語編

はじめに


 堤中納言物語は、平安時代の短編小説集です。よく題材として上げられているのは『虫めずる姫君』の話です。
 どうも、世の中では、昆虫を飼育したり採集したりする人に対して、差別的な目で見る人が多いですね。虫の音などは愛でる人がいるのに、昆虫を手にする人には非難の目で見る傾向があります。この物語を紹介する文学者の文章にも、「姫君のくせに昆虫の飼育などをするような変わり者」的な紹介の文章が多くて、困ったものです。
 ここに出てくる姫君も、見た目の気持ち悪い毛虫や芋虫が、色鮮やかな美しい蝶に変身するという所に、本当の美しさというものをを感じていた思うののですが、お付きの女性や、文学を教えている人にはそのあたりのことが理解されていないのでしょう。姫君の世の中の真実を見る目というものを、評価してほしいものです。
 この物語の特徴は、最後にクスッと笑えるような文章が多いので、皆さんにも是非親しんでもらえたらと思います。

1.現代語訳 


◎『ビギナーズクラシックス 堤中納言物語』
 坂口由美子:編 KADOKAWA 角川ソフィア文庫
(季節ごとに、色分けをされた短編小説集であるとのこと。最後にちょっと笑えるような短編小説を集めているようです。第八話の『花々のをんな子』では、一族の女性が有名どころの家にそれぞれ仕えている話が出てきます。歴史にはあまり出てきませんが、平安時代には色々な専門集団を生み出す家があったのでしょうね。例えば、この話の家では女房の仕事をする娘を多く輩出していると言うことです。他にも、和歌の指南とか、漢文の指南とか、着物の仕立て、布の染色、香の調合、絵の指南、さらには性の手ほどきなどなど色々な専門集団が存在していたんだと思います。そういう専門集団の指南書などがあれば面白いのになと思います。)

◎『虫めずる姫君 堤中納言物語』
 蜂飼 耳:訳 光文社 光文社古典新訳文庫
(この本の特徴は、現代語訳の後に、「○○を読むために」というコーナーがあり、それぞれの物語の解説が入っているので、作品を理解するのに役立ちます。現代語訳を一回読んで、「○○を読むために」を読んで、また現代語訳を読んでみると良いかもしれません。)

◎『夜半の寝覚・堤中納言物語』
 中村真一郎:訳 河出書房新社 日本古典文庫9
(堤中納言物語の方は、中村真一郎さんによって、淡々と訳されています。)

2.漫画


◎『堤中納言物語』 マンガ日本の古典7
 坂田靖子:著 中央公論新社 中公文庫
(坂田さんか~ 絵がギャグ漫画っぽいしなあ~。と思ったのですが、読み進めるうちに、妙に絵と物語の内容がシックリと合ってきて、いい作品だなと思いました。この作家を選択した編集者もすごいなと感心しました。)

扉の写真
 アゲハチョウのつがい。 


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