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忘れられない夏の思い出


 この間めずらしく六本木に足を運ぶ機会があったのだが、駅を降りたら周囲にほとんど若い女性しかいなくてちょっとびっくりした。


 郊外に活動拠点を置く僕にとって、俗に言う「港区女子」は半ば都市伝説的なものだと思っていたから、それが現実にちゃんと実在するものなんだとわかって不思議な感じがした。


 っていうか街を歩いていくうちにだんだんと「いや顔面偏差値至上主義暴力の街か!!」というツッコミを入れたくなってくる。まあこれは悪口ではなくて容姿が端麗な方が多いですね~という趣旨の、至って前向きな褒め言葉なんですけどね。


 う~ん、この件に関してこれ以上何を書いても余計な反感を買う気がする。まあ六本木は都会慣れしてない冴えない独身男性が行くには敷居が高すぎるという話です。別に六本木という街がどうこう主張する気もないし、僕自身も六本木に対して抱いた感情を上手く言語化出来ないので(じゃあ最初から何も書くなよ)。


 話を変えよう。ちなみに今回は頭が正常に機能しないほどの連日の暑さにかこつけてしょっちゅう話が変わると思われる。そしていつにも増して散文的かつ頭からっぽ状態で書いてるので、逆に言えば読者諸賢側も頭からっぽにして読めるからwin-winである。たまには何も難しいこと考えずに無益な時間を過ごすことも息抜きとして必要なんじゃないだろうか。知らんけど。困ったら大体暑さのせいにしとけば良いという筆者の最悪な人間性が垣間見えますね。


 まあそんなこんなで茹だるようなこの暑さの中ですが、この時期は皆こぞってアイスを食べたがるじゃないですか。僕も例に漏れず退勤後とかにコンビニに寄ってアイス買って食べるんだけど十中八九食べた後に腹壊すんですよ。


 いつでもトイレに駆け込めるような状況を確保して臨戦態勢を取っておかないとアイスが食べられない。こんな哀しいことがあるか?


 小さい頃からそうだった。夏場のワンシーン、ラジオ体操でもプールのスクールでもどこでも、大人の厚意によってアイスが差し入れされると皆が歓声を上げて喜ぶのに自分だけ素直に喜べない。大人が作った「アイス=子どもが喜ぶもの」という固定概念に適合出来ないマイノリティ。皆が喜んでアイスにパクつく中「アイス食べたら腹壊すので食べない」と言うと変な空気になる。


 程度は違うだろうが特定の食物アレルギーを持った人たちも少なからず同じような経験をしたことがあるのではないかと想像する。


 そういう場面に遭遇する時に何故やるせなくなるかって、その場に同じような体質を持った人間が自分以外にいないことが多いからだ。もう一人自分と同じような体質を持った人間がいるだけでその場の居心地がだいぶ変わるのに。結局この腐った世界を生き抜くには孤軍奮闘するしかねえのかよって思いながら真剣な表情でクーリッシュのパッケージと見つめ合った回数が多すぎる。


 あとアレルギーでも何でもないが、スイカも別にそこまでテンション上がらない。これも子どもの頃、同級生の家とかで遊んでる時にその子のお母さんが「スイカあるわよ~」っつってカット済みのヤツ持ってきてくれたことあったけど周りが喜ぶほど素直に喜べなかった。っていうかなんで周りの同級生はスイカでこんなにテンション上げられるんだって思ってちょっと怖かった。子どもの頃なんて正直な感情に赴くままに行動したり発言したりするのが常なはずなのに、スイカで異様なほどにテンションが上がっているのがその純粋な心のメカニズムに反している気がした。


 まあ、単に好き嫌いの問題だが。  


 あと、チーズも巷が言うほど高揚感を感じない。基本的に乳製品がダメだから仕方ない。


 チーズをはじめとした乳製品を使用した絶品グルメみたいな存在に恨めしさが募りすぎておかしくなってしまい、スイーツの中でチーズケーキが一番好きだと言っている人間は大体偽善者だと思っている時期もあった(どんな時期だよ)


 なんか書いてて哀しくなってきた。流石に暑さに責任転嫁して逃げ切ることが出来ないほどの内面性の醜さがどんどん顕著になっていく。改めて振り返ると可愛げがなさすぎるだろコイツ。人の家で出されたスイカはテンションがそこまで上がらなくとも無理矢理にでも志村けんを憑依させて爆速で貪り食えよ。


 たとえ幼少期、夏に家で飼育していたカブトムシに与えていた昆虫ゼリーにスイカ味っていうのがあって、それ以来スイカを見るとカブトムシを連想してしまい「スイカ=カブトムシの餌」という図式が自分の中で出来上がってしまってスイカを見るだけでどうしても腐葉土の匂いが想起されて食欲が失せてしまうというバックグラウンドを持ち合わせているにしてもだよ。いやスイカをそこまで好きじゃない理由しょうもなさすぎるだろ。



 「はい、はい、皆さん静かに、全員着席しましたね、では隠遁者くんが提出した「忘れられない夏の思い出」というお題に対しての作文に対してのフィードバックを行いますが、え~、まず夏の思い出とは別に全然関係ない冒頭の港区に対する不要な所感、これが本題を逸してる上に七つの大罪においての最大の罪とされる「嫉妬」を如実に感じさせるので大幅に減点、そしてアイスメーカーで勤める方々やスイカ農家、酪農家へのリスペクトが欠如している、これも大幅に減点、え~それから隙あらば自己卑下をすることで他者からダメ出しをされた時のダメージが少なくなるように予防線を張っている、これもやり方が姑息で汚らしいので減点、え~それから、ハイなんですかそこの君、口を挟まないでください、私は先週の土曜の夜に港区になんかいませんでしたよ、人違いじゃないですか、いや肌の露出度が高いグラマラスな身体つきの女性の眼前で土下座なんかしてないですよ、根拠のないフェイクニュースを創り上げるのはやめなさい、え~なんだっけ、君が適当な嘘をでっち上げるから何を言おうとしてたか忘れちゃったじゃないですか、とりあえず君が土曜日の夜に港区周辺で不健全な遊び方をしているということに関して連帯責任で減点、あっそうだ思い出した、カブトムシに直でスイカを上げるのではなく昆虫ゼリーを与えていたという点に関しては昆虫愛護の観点から2点加点、え~これらを総合して隠遁者くんの点数は-36548207点。
 え~、皆さんも隠遁者くんの作文を読んでその内向性と消極性や陰険さに辟易していると思いますが、やっぱりこのように自分の好きなものではなく苦手なものを語る場合は神経に気を遣わなければなりません。
 食べ物に対しての拒否反応や、謂れのない非難ばかりをしていると次第に自分自身が人から拒絶されるような人間になっていってしまいます。食べ物だけに留まらず、悪いところではなく良いところを探すようにしましょう。そうすれば人生を豊かに過ごすことが出来ます。港区にある飲食店なんかもお値段は張りますがその分美味しいものがたくさん食べられますからね、いやだから君先週の土曜日にいた人は人違いですから、公衆の面前で土下座もしてないですし某ホテルで密会もしてないですし誘いを20回以上断られての土下座じゃないですから、いろいろ混同しないでください、ハイ、じゃあ今日のホームルームはここまでとします。さようなら。君はあとで個別にお話があるので職員室に来なさい。




 ……まあ、頭空っぽ状態で書いた酷暑クオリティのこういうオチもたまには乙ですわな。



おしまい

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