こどおじライツ・ムーブメント
主に20代以上の女性が「彼氏にしたくない男性の特徴」として挙げることの多い、"実家暮らし"。
いい歳こいても一人暮らしをせず、実家に住み続けている男性……俗に言う子供部屋おじさんである。
なぜ子供部屋おじさん、通称"こどおじ"が世の女性から忌避されがちかというと、あくまで筆者の体感だが「実家暮らしの男性は掃除・炊事・洗濯等をすべて親に任せきっているので家事能力が皆無」だと思われているからだ。
故に世には「実家暮らし」という単語を耳にするだけで全身に蕁麻疹が出てしまうぐらいの拒絶反応を示す女性が少なからず存在する(しない)。
まあ流石に蕁麻疹が出るほどまではいかなくても、残酷にも「成人男性実家暮らし」という文言から連想されるものはどうしたってネガティブなものになる。
その負のイメージは残酷にもすでに世間に浸透しきってしまっており、世の女性からはいつまで経っても自立出来ないカス、ゴミ、怠け者、マザコン、家族の面汚し、社会的弱者、引きこもり、腐ったミカン、創造主の発注ミスによりこの世に誤って産み落とされてしまったイレギュラー型番、ナシナシの実を食べた能ナシ種ナシ用ナシとどのつまり存在価値ナシ人間、居酒屋に行くと必ずテーブル滞在時間よりトイレ滞在時間の方が長くなるコミュニケーション至上主義時代の敗北者、インターネットポルノ中毒、シンプルにクズ……等々と、世にも不名誉な烙印を押されがちだ(後半の方のフレーズは筆者の誇張された被害者意識が生んだものだが)。
いつだか何の特集だったかも忘れたがTV番組『ザ・ノンフィクション』で父親が娘に向かって「いい歳こいて実家暮らしの男性とだけは結婚するな、何かをやってもらうのが当たり前になっている男はダメだ」と説法を垂れるシーンがあった。
これではまるでメディアによる"こどおじ"への社会的迫害である。実際に筆者は27歳のこどおじなのだが、なんだか生きていること自体が罪な気がしてくる。
お茶の間で「港区女子100人に街頭インタビュー!求婚されたら嫌な男性ランキング」みたいな番組が流れてくるともう地獄である(ちなみに筆者は家庭内で人権を剥奪されているのでテレビのリモコン生殺与奪の権を弟に握られている。惨めだね)。
「えぇ~!?実家暮らしィ!?実家暮らしが許されるのは小学生までだよね~プークスクス」
「やっぱ"こどおじ"ってムリだわ~、親のペットみたいなモンじゃん笑」
「一人暮らししてることは最低条件、さらに経験豊富な男じゃないと私はダメですね、一片の傷も負わずに素手で半径2メートル大の蜂の巣を駆除したことあるぐらいの経験がないと」
「やっぱタワマンの最上階に住んでて~、ワインに造詣が深くて~、将来的に結婚した時に私が何もやらなくてもいいように家事をこなせる全知全能のメイドロボットを製作できて~、え?家事ができる男であればわざわざロボットなんて造らなくていいじゃんって?いや、私実は工学系の学校出てるんですけど、そのロボットを改造して盗用スキルを追加オプションで付ければ莫大な資産を手にできるじゃないですか、またはそのロボット内に遺体を隠蔽する機能をこっそりつければ相続財産がピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(倫理上放送出来ません)」
「アタシの両親は私が将来"こどおじ"と付き合うことが無いように英才教育してくれて~、教育テレビの『おしりかじり虫』のあの曲を替え歌して『親のすねかじり虫~♪親のすねかじり虫~♪かじってかじってそのツケ回り♪結局孤独死最悪だァ♪』って毎日アタシが寝る前の子守歌として歌ってくれたんですよ~。おかげでアタシ自身も親のすねをかじることなく現在は転売ヤーとして優雅な生活を送っています♪」
「絶対自立性とか主体性がなくて草。職場で常に受け身っぽいから生涯平社員確定で草生えすぎて森。」
こういうインタビュー映像が家族全員がいる食卓の前のモニターに流れる度、非常にやるせなくなってくる(筆者の港区女子に対する解像度が粗すぎるため実際に放映された回答とは多少異なります)。
あまりにも"こどおじ"はナメられすぎている。
私はこうした"こどおじ"無条件批判に対して今こそ異を唱えたい。
すべての"こどおじ"が例の如く家事全般をせず、楽をして生きている訳ではないのだと―――――――。
現に私は今日も掃除や洗濯、食器洗いなどをして20代の貴重な休日の半分以上を家事に費やした。
親が仕事だか友人と会うんだか何だか知らんが家を空けることになり、そういう土日は大抵私が家事を請け負うのだ。
平日も夜の家事は半分ぐらい私が請け負っている。
このように家事の労苦を味わいながら生きている"こどおじ"だっているのだ。
やりたくないならサボれば良いじゃないかという話だが、やらないと親の帰宅後にネチネチ文句を言われ続け、自室に避難してもホラー映画の如くどこまでも追いかけてきて隣でネチネチ文句を言い続けるので諦めて素直に家事をやった方が結果的に時間の節約になる。
だから私はいつも不本意ながら律儀に家事をやっている。にも関わらず、現状家事をしない"こどおじ"の所為でかなりの風評被害を受けている。
考えてみよう。一人暮らしの場合、たとえば洗濯においては自分一人分だけの衣服を洗って干せば良いが、実家暮らしの場合家族全員分の衣服を洗って干さなければならない。
あくまで世俗的な価値観に基づけば母親が家族全員分の衣服を洗濯しているようなイメージを持つだろうが、27歳独身男性が家族全員分の衣服を洗濯することだってあるのだ。
結果的に、一人暮らしで家事をしているよりも実家暮らしで家族全員分の家事をする方が負担が大きくなる。それなのに、婚活市場などで「実家暮らし」であることをカミングアウトするとどうしても「”こどおじ”だからどうせ家事も出来ないポンコツ男なんでしょ」、という目を向けられてしまう。
ゴミ屋敷の様相を呈しているようなアパートに一人暮らししている男と、高級ホテルかのように隅々まで清掃が行き届いた(行き届かせた、と言った方が良いだろう)実家に暮らしている男、果たして一体どちらの方が生活能力があると言えるだろうか?
今のところ、実家暮らしではあるがちゃんと家事もする(せざるを得ない)のだと理解してもらうためには追加で何ターンかの会話が必要になってしまう。
それほどまでに「実家暮らし」に付着している負の要素は強すぎる。
「婚活市場とかで『実家暮らし=家事も出来ないポンコツ』だと安直に決めつける女性や、世の中には家事をせざるを得なかったり経済的な事情だったりで”こどおじ”として生きなければならない人間もいるんだってことを想像出来ない女性、これね、全員バカですw 逆にこんな視野の狭い女性とは結婚しない方が良いよってことでね、最良な結婚相手を見極めるための指標にもなりますw」という風に私の心の中に巣くう闇ひろゆきも言っている(私の主張ではなく、あくまで私の心の中に潜む闇ひろゆきの主張なので悪しからず。無論女性蔑視の意図は毛頭ございません。デリケートな時代だから一応こういう補記もしとかないとね)。
ヤングケアラーという言葉がある。本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話を日常的に行っている子どものことを指す。
私はヤングケアラーの方達と比べるのもおこがましい程ちゃんと家事をやっている訳ではないが、自分以外の人間が住む家の家事をすることでその実態の一端を僅かながらではあるが想像することが出来る。
きっと世の中には経済的困窮や、家族の身体的事情による介護の必要から成人していても実家暮らしを選択するしかない人間がかなりの数いることだろう。
そういう人たちが、社会において「"こどおじ"=いい歳ブッこいて自立出来ない未熟野郎」として誤解されてしまうのはいただけない。
今のところ、「実家暮らし」にネガティブイメージが蔓延りすぎてそういう誤解を解くためにはいちいち内情を説明しなくてはならない。
ヤングケアラーのような存在の認知度が未だ低いことが、遠因的ではあるにせよ"こどおじ"がほぼ無条件でバカにされてしまう所以である。困ったことだ。
特に私なんかはそこまで深刻な家庭問題があるわけではないので(あくまで介護などの必要がなく表面上は、というだけで内面的には機能不全家族としてかなりの問題があるのだがその話はまた別の記事で書く)、説明のバランスが難しい。
初対面の他人等に「実家暮らし」であることを公表したら誤解されないように、まず有象無象が俗物メディアによって植え付けられている「"こどおじ"=弱」という先入観を排除しなければならない。
「まあ実家暮らしは実家暮らしなんですけど家事はほとんど全部僕がやってて~、料理は味噌汁とサラダ専門ですが美味しんぼ全巻読破してるんで実質調理師免許持ってるようなモンだし~、趣味は掃除で~部屋の窓の雑巾がけをしすぎて全治2ヶ月の腱鞘炎になったこともあるし~」とか言ってちゃんと家事をやっていることをアピールしなければならない。
しかしこれでは必死感が出過ぎている。実家暮らしコンプレックス丸出しである。ジムでヒョロガリが腕プルプルさせながらダンベルプレスしてるのを見てるような、いたたまれない気持ちになってくる。まあジムで腕プルプルさせながらダンベルプレスしてるヒョロガリは俺なんだけど(迅速な伏線回収)。
大体、某部屋探しのCMで某野七瀬と結婚した男が「三食、洗濯、お掃除つき!実家マジ最高~!」とか言ってるのも「"こどおじ"=何もしないし何も出来ない哀れなるものたち」という偏見を助長している気がする。
某田裕貴は何も悪くないのだが、多分この台詞を考案した人間は「実家で暮らす男はどうせ料理も作らんし洗濯もしないし掃除もしないだろう」という先入観があるのだろう。まったく想像力の欠如も甚だしい。
そもそもあんな可愛い妹がいて、その上兄妹仲良く会話が出来ている時点でCM制作陣は現実というものがまるで見えちゃいねーだろ!現実にいるかあんな兄妹!妹いないからわからんけど兄に対しては基本無愛想だろ多分!独りよがりな幻想をCMに投影するな!こうであって欲しいという理想を抱きすぎなんだよ!
嗚呼、俺も結婚相手とまでは言わないから某野七瀬みたいな妹が欲しかった……『江南スタイル』を歌ってるPSYに風貌が激似の弟ではなく……
ハァ……ハァ……ハァ……失礼、少し取り乱したようだ………(筆者は中高生時代を男子校で過ごしたことにより、あの『結束バンド』も歌い上げきれないほどに膨大な”青春コンプレックス”を拗らせてしまっている)。
私の精密分析によれば私が"こどおじ"代表として正式に某CMを訴えたら勝訴出来る確率37%、逆にこのnoteが某CMを批判しているとして訴えられる確率62%、話の本筋には直接関係ないが私が某野七瀬と実は遠い血縁関係にある可能性1%、つまり当記事が某部屋ネットのCMを非難する目的で書かれたものではないことを早急に明示しておかなくてはならない。
嘘ですやん、全部ジョークですやん、ジョークジョーク(笑)。
就活においての学歴による足切りみたいに、婚活市場とかで"こどおじ"が足切りされないようにするための『"こどおじ"ライツ・ムーブメント』の一環ですやん。
家事をしない"こどおじ"と家事をする"こどおじ"、今のところどちらも"こどおじ"という枠組みの中に組み込まれてしまっているから早急に呼称を分別した方が良いってことですやん。
同じ『天下一品』でも店舗毎によって微妙に味が異なるように、同じ"こどおじ"でもその内情は人によりけり。だから「実家暮らし」という肩書きだけを見て判断するのではなく、人間そのものを深く知ることが大事っちゅー話やな。
まあ結局この記事を通して私が何を伝えたかったかというと、『天下一品』は池袋東口店が一番美味いよねっていうことと、東京都民の借りてきたような関西弁は生粋の関西人からしたらさぞかし鼻につくんやろなあってことですわ!(※個人的な所感です)
おしまい