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フランスワインを巡る旅 ボルドーでサイクリング② シャトー・スミス・オー・ラフィット
前回に引き続き、ボルドーサイクリング日記。
1軒目のシャトー・カルボニューを訪問後、さらに南東に向かってシャトー・スミス・オー・ラフィットへ。
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移動距離は2.2km程度で、風景を見る限りそれほど大きな高低差を感じることはないだろう。でも、ここはラフィット(昔のフランス語で「丘」の意味)というだけあって、実際に走ると高低差がきつかった!
ボルドーの人気シャトーのひとつ
独自路線を歩むシャトー
名前に「スミス」という英語圏の男性の名前が入っているところからも想像できるとおり、このシャトーもイギリスとの交易で繫栄した。
14世紀にボスク一族がこの地を開拓してぶどうの木を植え、「シャトー・オー・ラフィット」としてワイン作りが始まる。その後、18世紀にスコットランドの商人・スミス氏がこのワイナリーを買収し、シャトーの名前に自分の名前を付け足したことで、現在のシャトーの名前となる。
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1842年、後のボルドー市長で、1855年のメドック地区のシャトー格付けにOKサインを出したボルドーワインビジネス界の大物、デュフォー・デュヴェルジエ氏がこのシャトーを気に入り、買収。メドック格付けのタイミングで、どさくさにまぎれて(とはどこにも書かれていないけれど、そんな気がする)メドック地区にあるわけでもないこのシャトーに「グラン・クリュ・クラッセ」(「特級」の意味)の名を与えた。
この頃から高品質なワインが作られていたことがうかがえるが、1959年にグラーヴ地区で行われた格付け再評価の際、ここの赤ワインが仲間入り。
長い歴史を持つワイナリーだが、ワインの質にさらに磨きをかけ、そして訪れる人にワインにとどまらない感動を与える素晴らしいワイナリーづくりに励んでいるのが、現在のオーナーであるカティヤール夫妻。スキーのオリンピック選手で、実業家としても成功を収めたダニエル・カティヤールと、メディアで活躍していたその妻・フロランスが1990 年に訪れたこのワイナリーに一目ぼれし、その後2人ともこれまでのキャリアを捨ててワイン醸造家に転向。有機農法に切り替え、最先端の醸造設備の導入や樽の製作まで自分たちで行うほどの徹底ぶり。現在もなお、ワインにただならぬ情熱を注きつづけている。
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予約が取れないシャトー
ボルドーでのワイナリー見学にあたり、実はこのシャトーは何人もの友人からすすめられた。ガイドは1時間の醸造場見学+ワイン試飲の基本コースの他に、個人用、団体用といくつかのメニューが設定されている。なお、料金は他のワイナリーよりもだいぶお高く設定されている。
ウェブサイトの問い合わせフォームから担当の方とメールのやりとりをしたが、私が指定した日は受け付けてもらえなかった。他のコースでも構いません、訪問日をずらしますのでそこを何とか・・・・・・など、未練たらたらとメールのやりとりを続けたが、結局予約は叶わなかった。
そう、9月下旬のグラーヴ地区は、黒ぶどうの収穫作業とワインの仕込みで最も忙しい時期なのだ。訪問時期には要注意。
ちなみに今回、後からニュースで知ったのだが、ちょうど私たちが訪問した数日後にフランスを周遊していた英国王室がこのシャトーを訪問したそうだ。この準備もあって見学を受け付けてもらえなかったようだ。
そんなわけで、今回は外観だけでも見学するつもりで訪問。醸造見学やガイドの参加はできなかったが、屋外のぶどう畑を散策させてもらうことができた。
訪れて楽しいシャトー
このシャトーは高級なワインを手掛けるだけにとどまらず、訪れる人を楽しませるためのさまざまな取り組みが行われている。
ワインを作るときに捨てられるぶどうの種には、抗酸化作用のあるポリフェノールをはじめとした美容成分が豊富。そのことを確信したオーナーの娘夫婦は、捨てられる運命にあったぶどうの種を活用したスキンケアメーカー・コーダリー(Caudalie)を1993年に立ち上げた。現在ではフランスの薬局を始め、海外でも展開されている。
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シャトーの広大な敷地内には「レ・ソース・ドゥ・コーダリ―」という木造の宿泊施設群がある。ここでは宿泊や食事だけでなく、このコーダリーのスキンケアのノウハウを最大限に取り入れられたスパがある。このスパは、ぶどうのエッセンスのほかにも地下540mからくみ上げた温泉を活用し、これらを組み合わせて開発されたヴィノテラピー(日本語にすればぶどう療法)を体験できる。
・・・今回こちらにも訪問しておらず、これ以上ドヤ顔で書きつづけるのもはばかられるので、次回の訪問の際に体験記としてお届けしたい。
ワインは飲めなかったけど楽しかった訪問記
ボルドーには珍しい、木造建築
ボルドーのぶどうが高品質なのは、ぶどう畑と海の間にランドの森という松林があるおかげ。これが海から吹く強い風からぶどうを守ってくれるのだ。このシャトーの建物の多くは、そんな松の木と、杉の木でできている。
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木造建築はボルドーにとどまらず、ヨーロッパにしては珍しいだろう。赤い扉に、どことなくオリエンタルな時計台。たたずまいが独特だ。
建物はイギリスのスミス氏がオーナーだった17世紀に建てられたそうだ。建築様式などを調べてはいるが、ネットではなかなかヒットせず、今のところは不明(すみません)。
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メインの建物の近くの塔。こちらは16世紀に建てられ、イギリス人のスミス氏がオーナーだった17世紀に改築されたもの。中に入って登ることはできなかったが、この塔から地域全体を眺めることができるそうだ。
畑の中をアート散策
86ヘクタールもの壮大な敷地の中を歩いていると、現代風?の彫刻に出合うことができて面白い。
たわわに実ったカベルネ・ソーヴィニョンが収穫を待っている畑の近くでは、ブロンズのうさぎが飛躍を遂げていた。
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耳だけでなく手足まで長いこのうさぎの風貌に、デジャヴ感を覚えた。
そう、これはイギリス人彫刻家のバリー・フラナガンの「野うさぎ」シリーズのひとつだ。私の地元でもそうだが、日本の各地でも、別の体形で飛躍していたり、おすまししている姿を見ることができる。
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このぶどう畑に点在するアートは、現オーナー夫妻がシャトーを購入した1991年以降、少しずつコレクションしているもので、現在は28もの作品がぶどうの成長を見守っているようだ。
写真を撮らなかったのが悔やまれるが、ぶどう畑のら南に宿泊施設やレストランがある。敷地には池あり、鴨の親子がのんびりしていたり、馬屋で馬たちが餌をはんでいるのどかな景色が広がっていた。さらに奥に進むと森があり、そこでも自然のアート、そして人の手で作られたアートが楽しめるという。
そんな見どころ満載なシャトーで、最も我々を惹きつけたのが、こちら。
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今回は一部しか見ることができなかったが、とにかく見どころ満載のシャトーに違いない。今度は宿泊して温泉に入り、ワインと料理を楽しんでみたい。
最後のぼやき(お誘い)
余談だが、ぶどう畑で飛んでいる野うさぎのシルエットがラベルに描かれたワインが存在し、サードワインとして展開されているようだが、その情報は公式サイトには掲載されていない。しかしある情報筋では、ファーストワインと同じ作り方をしており、コーダリーの施設で供されている数少ないワインの模様。そんなおもしろいワインをある日本のインポーターが取り扱っていることを知り、このブログを書きつつ勢いでポチった(ファースト、セカンドではなく、このサードを)。このワインを味わう会を3月ごろにやりたいと思っているので、もし気になる方はお声がけを🍷
シャトー情報
Château Smith-Haut-Lafitte
33650 BORDEAUX MARTILLAC, FRANCE
参考資料