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光の海とともに「Official髭男dism Arena Tour 2024 – Rejoice –」

横浜のキラキラしたビルの間を早歩きで進む。植え込みの緑には、クリスマスを意識したイルミネーションが施されており、小さな青い光たちが目にまぶしい。

荘厳なたたずまいのヒルトン横浜に隣接する通りを抜け、たどり着いた先はKアリーナ横浜。『Official髭男dism Arena Tour 2024 – Rejoice –』横浜公演初日の開演まであと少し。

いつもならチケットが当選した瞬間に有給をぶち込むのだが、巡り合わせが悪く休暇取得とは相成らなかった。仕方がないので定時ダッシュをかまして開場に乗り込む。

リストバンド型のライトを受け取り、入口付近に並ぶ祝花の数々に圧倒されつつ、はやる気持ちを抑えきれないまま席に着く。ライブツアーは「SHOCKING NUTS TOUR」から1年7か月ぶり、発声ありとなると、「Official髭男dism Tour 19/20 - Hall Travelers -」から4年ぶりだ。3か月前の「one-man live 2024 -UNOFFICIAL-」に運良く参戦できた身ではあるが、時間の重みに改めて感慨深くなる。

「Welcome to the Black Parade」が流れたら開演の合図だ。待ち遠しくてたまらないというように、観客が次々に立ち上がった。

ヒゲダンのライブはいつも最高だが、今回はツアーライブでの再会に加え、オタクの感情を狂わすセトリだったため情緒が安定していない。曲順に関する言及をしつつ、後半になるにつれ穏やかではいられないひとりの人間の叫びを綴っていく。

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Finder

曲がかかるとメンバー4人のシルエットが映像となって映し出される。ヒゲダンの最新アルバム『Rejoice』より「Finder」がオープニングとして流れる。

再び出会えた 呼吸の証を見せて
比べるものもないほど 隔たる物のない世界で

Official髭男dism「Finder」

ライブという素晴らしい場所で、Official髭男dismに再び出会えたことを実感する一曲。今夜、彼らは素晴らしい歌と曲を私たちに届けてくれて、私たちも歌ったり歓声をあげたり手拍子をしてその演奏にお返しをする。

メンバーが登場すると、モニターがステージいっぱいに広がって、藤原さんが見ている世界が画面上に映し出される。そこには2万人の観客とライトがきらめく光の海。きっと今この瞬間、この場所は、Official髭男dismにとって「悲しみも戸惑いも掻き消えて癒える沈黙の向こう側」なんだろうなと思う。

そんな大切な場所から見える光景は、きっと様々な苦労をしてきて、多くの人に認められた、一握りの人たちにしか体験できない景色だ。でもそれを聴き手である私たちにも共有してくれて、一緒にこの瞬間を喜びあおうとしてくれる。私たちの間に隔たるものはなにもなくて、それがとても嬉しい。まさに「It's time to "Rejoice"」だ。

Sharon

社会情勢だとか様々な困難がたくさんあって、「ただいま」を言いたくても、なかなか言えない場面がたくさんある。そんな人を慮って、「さみしい」と言えない人もたくさんいる。お互いが大切だからわがままは言わないし、できるだけ相手を元気づけたい。どんなに待ちわびてても、「気を付けて」とだけ伝える。「ただいま」と「おかえり」にたどり着くまでの、優しい関係性を歌った曲。

「UNOFFICIAL」開催のタイミングで既にリリースされていたにも関わらず、そこでは演奏されなくて、なんでだろうと不思議に思った記憶がある。でも、このツアーがオフィシャルな「ただいま」「おかえり」のタイミングだから、とっておきにしてくれたのかなと想像したりする。

Get Back To 人生

ドーパミンが嬉し泣く 全俺が君と踊りたがる 人の目耳憚らず
好きにして Please Rejoice, Let's Get Back To 人生

Official髭男dism「Get Back To 人生」

「ただいま」「おかえり」のくだりのあとにこの曲はずるくない?こんな最大級の喜びをそのまま歌詞にできるのすごくない?最高のバンドじゃない?ドーパミンが嬉し泣くって表現が最高に分かりすぎる。まさに今、体験してるからな。

宿命

夢じゃない 夢じゃない 涙の足跡
嘘じゃない 嘘じゃない 泥だらけの笑顔
夢じゃない 夢じゃない 肩を組んで叫びたい
僕らの想い 届け!

Official髭男dism「宿命」

「Get Back To 人生」からの「宿命」の流れが素晴らし過ぎる。取り戻した人生の先にあるのが宿命、って。夢じゃない、って。そのセトリは私の情緒にめちゃくちゃ効く。ここまでの道のりを知ってるからなおさら効く。「届け!」って言いながら片手を掲げるの、何度味わっても最高。

Stand By You

何度も繰り返し繰り返し言うけれど、セトリが本当に素晴らし過ぎて言葉を失っている。「Finder」でステージに立つ感動と喜びの時が来て、「Sharon」で「ただいま」と「おかえり」の間にある優しさをひもといて、「Get back To 人生」で困難に打ち勝って人生を取り戻したことを宣言して、「宿命」でこれが夢じゃなく宿命であることを届けてくれて、「Stand By You」で寄り添い歩むことを歌ってくれるの、本当に最高が過ぎませんか?私たちもいつも以上にウォウウォウしちゃうし、最高の8ビートのクラップ聴かせちゃうってわけよ。

MCでは「東京近郊のお客さんは行儀が良いというか、かしこまっている傾向があるけれど、今回の横浜はノリが良くてヤバい(要約)」といった話を聞く。そりゃそうよ。オープニングから感情はジェットコースターよ。仕事明けの脳を揺さぶる、とんでもない感情の起伏。既に情緒がおかしくなっているので、記憶が断片的になっている。中盤戦はダイジェストでお送りしたい。

キャッチボール〜日常~濁点〜Subtitle〜115万キロのフィルム

いつもといつも以外の境界線をぼやかした先に日常がある。きれいごとだけじゃない濁った日もあって、美しい結晶も届けたい日があって……。気がついたら「Subtitle」のしんとした雰囲気に引き込まれてびっくりした。「ノリが良くてヤバい」横浜のファンたち、ヒゲダンの世界観へ素直に没入していくタイプ。会場が今度は、雪の降る静かな夜を迎えたような雰囲気になった。

そこから「この曲を聴いたらどうなるかな?」って言って「115万キロのフィルム」に入るの、稀代のストーリーテラーかと思った。独りよがりの濁った声を出してた人間が、雪の結晶のような言葉を相手に届けられるようになって、その先に助演で監督でカメラマンになる未来があるって、それなんて物語?全私が咽び泣くわ。

ホワイトノイズ〜FIRE GROUND

そこからは一気に熱量を上げて、ギターヒーロー 大輔氏の時間。「FIRE GROUND」は火柱が欠かせない。火柱とニコイチ。火柱演出が久しぶりで、冒頭でちょっとびっくりしちゃったのは内緒。「ホワイトノイズ」からの「FIRE GROUND」は白と赤の色の対比が良い。どちらもアッパーな曲なのに印象が違う。そういえば、ヒゲダンの曲は色のイメージが強いな、と思うなどする。

MCタイム

小笹さん、ならちゃん、ちゃんまつのMCのお時間。突然の「ポケポケ」トークが楽しい。レアカードの引きが課金額に応じないのあるある過ぎる。スペインの方と交流するならちゃん。自由。

そして藤原さんの再登場と、「髭」の漢字が書けなかった夢の話。笑い話にしてるけど、ライブに対するプレッシャーが分かるエピソードでもあり、「Sharon」で歌われる心情がちょっと胸をよぎる。気をつけて、無理はしないで、と伝えたくなる。ただ、それを伝えるすべが見つからないけれども。

せめてその想いが少しでも届いてくれればと、とにかく歓声や手拍子でお返しする。誇張なしで本気で「届け!」って思う。

うらみつわみきわみ

最新アルバムを聴いて一聴き惚れした曲。いや、ヒゲダンの曲は全部そうなんですけどもね。「URAMI」「TSUWAMI」「KIWAMI」「YEAH」などの単語と一緒にちゃんまつの顔が流れるスクリーンが好きすぎる。この映像、YouTubeにあげてくれないかな。全力で布教する。

ネガティブな感情をさらけ出して、本当は良くないことだとは思いつつ、でもそれを一緒に認めてくれる豪快な曲。社会生活を送るうえで生まれるゴタゴタした感情、すなわち「うらみつわみきわみ」を「それでいいじゃん」って存在ごと許しちゃう曲。それを自分で肯定するのは気が引けてしまうし、秩序が保てなくなるから大人の顔して抑え込んでいるけど、代わりにヒゲダンが歌ってくれるから救われる曲。全人類聴いてほしい。

そしてあわよくばライブで「YEAH」「まだする」「わ!」の合いの手にチャレンジしてほしい。めちゃくちゃ難しいけど、ハマったときは得も言われぬ達成感がある(死ぬほど予習した民からの伝言)。

ミックスナッツ〜Anarchy

「うらみつわみきわみ」から「ミックスナッツ」「Anarchy」の流れも本当に良くて……社会人生活を送る全ての大人への応援歌……。いや、勉強に部活に青春も頑張る学生だって応援されちゃって良いんだ……。うらみつわみきわみも隠し事も感情の大乱闘も、全部アゴゴベルの音色にあわせて吹っ飛ばしちゃえば良いんだよ!

Chessboard

美しい緑色 こちらには見えているよ
あなたが生きた証は 時間と共に育つのでしょう
美しい緑色 役に立たない思い出も
消したいような過去も
いつかきっと色付くのでしょう

Official髭男dism「Chessboard」

人生をチェスボードに例えた名曲。どこか閉塞感があって、定められたルールに基づいて、歩む道を決めなければいけない人生。でも、そこには素敵な出会いや大切な決断があって、そのひとつひとつが自分の種となりやがて芽となり、美しい緑を育む糧となっている。

「美しい緑色」のコーラスが始まると、会場全体か緑色のライトでいっぱいになった。優しくて幻想的で光景で、「見えているよ」「いつかきっと色付くよ」とあたたかく見守ってくれている。リリース当初から大好きで、いつかライブで聴きたいな、一緒に歌いたいな、と焦がれていた。だからか鼻の奥がちょっとつんとした。

B-side Blues

分厚い世界がやがて 保存期限いつか迎え
僕らを追い出してしまったとしても
多分大抵困らないくらいでいいよ
大抵忘れられるくらいがいいの

Official髭男dism「B-side Blues」

自分の意のままにならない出来事の中で、大切な機会を失ってしまったり、思うような日々を過ごせないこともある。「ああだったらな」「こうだったらな」って思うこともたくさんある。

でも、そういう日々がいつか遠い日々になって、明日は笑い合えればそれで良い。「たられば」と言いたくなってしまうことを、肯定も否定もするのではなく、ただ受け入れてくれるそんな曲。こんな風にお守りみたいな曲があるだけで、明日もちょっとだけ頑張ろうってみようと思う人がたくさんいるんだろうな。私もそのひとりだもん。

*****

大きな会場にもかかわらず、アンコールの手拍子がきれいにそろう。私たちは普段から8ビートのクラップで鍛えているので、これくらいは朝飯前である。ここからアンコール。

Same Blue

キラキラの青春アニメの主題歌に、5拍子と6拍子の変則リズムな主題歌もってくるやつはどこのどいつだい?それはOfficial髭男dism。

まじで青春アニメのオープニングに変拍子の曲を提出したわけ?天才の発想すぎるよ。恋をしてるときの鼓動を表現するようなテンポに、ときめきで胸がキュッとなった瞬間を切り取ったような変則的なリズムが混じって、曲を聴いてるこっちの情緒がやられちゃうという寸法よ。

季節と感情とともに移ろいゆく青春の「青」を歌った詩がとても良い。同じ青でも、春夏秋冬で色合いは異なって、晴々してたり、爽やかだったり、悲しみにまみれたり、切なさでいっぱいになったり、喜びに溢れたり、濃淡があってとてもカラフル。青のライトで照らされた会場で、私のなかのアン・ミカが叫ぶ。そう、「青って200色あんねん」!!

SOUL SOUP〜TATOO

すでに約5,000字以上の文章量らしい。ただただヒゲダンが好きという感情だけでここまできた。原稿用紙12枚以上だ。こんなとこまでついてきてくれる人はいるのだろうか。分からない。

独りきりで生きてた時より 大盛になったな
ギブアップなんて言える空気でもないよな
でも独りきりで生きて良いよと言われたとしたってももう
選ぶわけないほど あなたとの日々を欠かしたくないの

Official髭男dism「SOUL SOUP」

そっけないくらいで僕らは丁度良いんじゃない?
きっと涙も言葉もおまけでも良いんじゃない?
多分世界が次のフェーズで行こうと見つけてみせるよ
いや嫌でもみつかるんだろうよ

Official髭男dism「TATOO」

大好きな曲の大好きなフレーズたちだ。会場で一緒に歌いながら、この言葉と曲があるだけで生きていける気になってしまう。

まとめる気のないまとめ

最新アルバム『Rejoice』の完成度がめちゃくちゃ高くて、そのままライブのセトリにしても完璧なくらいだと思っていた。このアルバム名を冠したツアーライブがどんな風になるのか、まったく想像ができなかった。

でも、実際に体験してみた今なら分かる。アルバムで「最高」を味わって、ライブに来てみたら美しい光の海とともに「極上」をまんまと食らわされた。ヒゲダンは本当にすごい。5月にはスタジアムライブもあるよ!大きな会場でヒゲダンを浴びれるよ!

さて、「うらみつらみきわみ」の映像配信をしてほしいという切実な願いを書いてたら、数分前に「Official髭男dismちゃんまつスタンプKIWAMI」が発売された。どういうことだってばよ!!!!!いつもヒゲダンは想像の上をゆく。そういうところが本当に好き。爆速でスタンプ購入した。


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