【新NISA】から読み解く資産運用の必要性!理由はやはり老後不安?それともインフレ対策か!
昨年の6月、「資産所得倍増元年」とし、「貯蓄から投資へ」と加速するため、2024年1月から旧NISAから新NISA(新しい少額投資非課税制度)へと新しく生まれ変わりました。
新NISAでは非課税で投資できる額が大幅に増え、非課税の保有期間が無期限など、より使いやすい制度となっています。
新制度になったことで、この機会に「投資を始めた人」が大幅に増加、また新NISAをきっかけに「資産運用は必要」だと思う人も増えています。
では、なぜ増えたのでしょうか。
要因としては、「将来・老後不安への準備」や「インフレに対応」するためです。その中でも近年の医療技術の進歩などによって、平均寿命が伸び「人生100年時代」と呼ばれるようになりました。
つまり、現役時代と同じ時間が老後生活になると言うことです。
長生きすることは、喜ばしいことです。しかし、そのぶん「年金だけで老後生活は安心なのだろうか」と漠然と不安を抱いている方は多いいと思います。
そこで本記事は、まずは「新NISA」ついて、そして一般的なデータを参考に「老後生活費」と老後生活の支えとなる「公的年金の受給額」について解説していきます。
長文にはなりますが、最後までお付き合いください。
NISAとは「個人の資産運用を応援する制度」
多くの方はすでにNISAについてご存知だと思いますが、簡単に制度について解説していきます。
NISAとは2014年から開始された「少額投資非課税制度」です。「NISA口座(非課税口座)」内で購入した金融商品の配当や分配金、そして値上がり益にかかる20.315%(復興特別所得税:0.315%)の税金が非課税となります。
簡単に言ってしまえば税金がかからない制度です。
たとえば、100万円を投資して売却時の資産評価額が150万円(利益:50万円)になっていたとします。
通常では投資して50万円の利益が出た場合、約10万円(50万円×20.315%)の税金がかかるので手取りは約40万円となります。
一方、NISAには税金がかからないので50万円の利益が丸々手元に残るということになります。
また確定申告が不要(非課税)となるので税金計算をする必要がなく、自分の資産の増減を直感的に把握ができます。
これらからNISAとは、税制優遇制度を通じて個人の資産運用を応援(投資初心者)する制度だといえます。
新NISAの仕組み
ここでは新NISAの仕組みについて解説していきます。
新NISAとは、新しい少額投資非課税制度のことです。2024年1月から従来の制度から大きく変わり、分かりやすく便利な制度になりました。
下図は、旧NISAと新NISAの違いです。
とくに注目したいのが生涯投資枠の大きさです。総枠の限度額が1,800万円(成長投資枠の上限:1,200万円)までが非課税で投資ができるようになりました。
加えて「つみたて投資枠:120万円/年」と「成長投資枠:240万円/年」との2つの枠を併用できるようになったのも大きなメリットです。
また、旧NISAでは口座開設期間が2023年末までと制限がありましたが、新NISAは制度自体が恒久化するため、いつでも非課税投資枠を活用して資産運用が始められます。
つまり、より柔軟で使いやすい制度に生まれ変わったことで、この機会に投資を始めるよいきっかけ作りとなっています。
では、実際に新NISAをきっかけにどれだけの口座開設が行われたのか見ていきましょう。
NISA口座数の推移からわかる資産運用への意識の高まり
下図は、日本証券業協会より証券会社10社のNISA口座数の推移です。
口座の開設状況は、2023年12月末時点のNISA口座数は「一般NISA」と「つみたてNISA」を合わせて合計2,125万口座です。
2024年1月からは新NISAが始まり、6月末で約300万口座(14.3%)増えNISA口座数は合計2,428万口座となりました。
総務省のデータによると、2023年10月1日時点で18歳以上の人口は約1億700万人であるため、「4人に1人」はNISA口座を開設していると言うことになります。
6月末でNISA口座を開設した方が約300万人(50万人/月)であることから、新NISAをきっかけに積極的に資産運用をしている方が多いことがうかがえます。
将来起こりうるライフイベントへの不安解消
前述から、なぜ資産運用が必要だと思い至ったのでしょうか。
日本証券業協会が2024年度(3年に1回実施)に行った「証券投資に関する全国調査」から、その理由について2つの視点から見ていきます。
証券投資:株式、投資信託、債券など
運用することで、値上り益(キャピタルゲイン:売却益)、配当金や債券の利子(インカムゲイン:継続的な収入)を受け取れる
1つは、回答が最も多いのが「将来・老後の生活資金として準備できる」が64.5%、ついで「預貯金だけでは十分な利息を期待できない」が58.9%となっています。
2つは、2021年度との上昇率で比較すると「将来のインフレに備えることができる」が最も高く14.2% → 21.4%(7.2pt)、そして、ここでも「将来・老後の生活資金として準備できる」がランクイン(2位)して59.2% → 64.5%(5.3pt)です。
前者は、将来の生活資金には「結婚・教育・住宅など」があります。その先の老後を見据えると安定した生活には公的年金だけでは足りず、ある程度の蓄えが必要となるからです。(銀行に預金しても金利0.1%)
後者は、インフレ環境下での負けない資産をつくるには、インフレに強い資産(有価証券「株や投資信託など」・実物資産「金・不動産投資など」)への投資を行ない、資産の目減りを防ぐことで自身の資産を守ることができるからです。(インフレ率より高い利回りで資産を増やす)
つまり将来起こりうる「ライフイベントへの準備」、かつ、インフレによる自身の「資産を守る、そして増やす」ことで、経済的自由、より安定した将来を築こうとしていることが読み取れます。
■どの年代が資産運用を必要だと思っているのか
では、どの年代が証券投資(資産運用)が必要だと思っているのでしょうか。
下図は、日本証券協会「証券投資に関する全国調査(n=7,000)」の各年代の割合です。
前回の調査と比較して、すべての年代が大幅に上昇しているのが分かります。各年代では「50代以下」が半数を占めており、とくに40代が最も高く56.8%、そして30代が53.4%となっています。
つまり3年前と比べ、働き盛りの20代~50代(現役世代)の半数の方が、現在や未来の生活をより豊かにするために資産運用への意識が高まっていることが分かります。
ライフイベントに備えよう
資産運用が必要だと思う主な理由は、将来起こりうる「ライフイベント」だと言うことが分かりました。
ライフイベントとは、結婚・出産・住宅・教育・退職など、人生の節目節目で訪れる出来事です。
とくに「人生の三大支出」と呼ばれる、教育費・住宅費・老後資金は人生で大きな出費となります。これらは多額の資金を用意を必要とするため、長期的に計画の準備が求められます。
なかでも近年の医療技術の進歩などにより寿命が伸び続け、人生100年時代とも呼ばれています。つまり、現役時代と同じ時間が老後生活になるということです。
そこで、ここからは誰もが関心がある「老後資金」を焦点にあてていきます。
平均寿命、3年ぶりに延びる
老後というと、多くの場合は退職後にあたる60歳〜65歳からの人生をイメージされる方が多いと思います。
では、退職後に迎える老後生活=平均寿命はどのくらいなのでしょうか。
下図は厚生労働省「令和5年簡易生命表」より、1980年~2023年の平均寿命の推移です。
2023年の男性の平均寿命は81.09歳(前年比:+0.04歳)、女性は87.14歳(前年比:+0.05歳)と3年ぶりに前年の上回りました。
平均寿命が延びた要因は、「コロナ」「がん」による死亡率の低下によるものです。また、43年前(1980年)と比較すると、男性7.74歳、女性8.38歳も延びています。
現在の平均寿命から考えると、老後生活はおよそ20年〜30年ほどの年数だと分かります。今後も長寿化が進むと考えると、事前に必要な老後資金を知っておくことで計画的に備えることができます。
当然ながら、老後生活にはさまざまな要因(貯蓄・持家の有無、家族構成)が影響するため明確にこのくらいは必要だとは言えません。
なので一般的なデータを参考に必要額の目安をご紹介します。
老後の生活費(ゆとりある生活を送るために)
実際には老後にかかる費用は、世帯(夫婦・単身者)によって異なります。
生命保険文化センターが実施している「2022年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は平均23.2万円/月です。
そして、ゆとりある老後生活を送るために必要となる費用は平均14.8万円/月。(最低日常生活費以外に必要と考えらる金額)
つまり、ゆとりある老後生活に必要な金額は平均37.9万円/月となります。
かりに退職後の老後生活を20年とした場合、ゆとりある老後を迎えるには日常生活費とは別に約3,500万円(14.8万円×240ヶ月:20年)の資金が必要となります。
なお、総務省統計局から65歳以上の家計収支(2023年)は、平均的な生活費は夫婦二人で「約28.2万円」、単身者は「約15.8万円」です。
下図は、ゆとりのための上乗せ額の使途です。
公的年金の受給金額はどれくらい
老後生活にかかる月の生活費は分かりました。ここで気になるのが老後の収入がいくらあるのか、ということです。
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(2022年度)」によると、老後に受け取れるの厚生年金の平均受給月額は「約14.4万円」(老齢基礎年金も含む)です。
一方、自営業者などが加入している国民年金(老齢基礎年金)は平均受給額は「約5.6万」となっています。
前述の老後に必要な生活費と比較すると、以下となります。
公的年金だけでは全然足りていないことがわかります。
実際の受給額は、国民年金や厚生年金(年収により変わる)の加入期間よって金額は大きく変わります。
当然ながら全ての方に当てはまるわけではありませんが、大半のケースに置いて、公的年金のみでの生活は難しいと言えます。
参考元:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」P10・P21
まとめ
まとめると以下です。
新NISAで投資人口増(1月~6月末:+300万人)、その影響で40代・30代が投資への意識が高まる、理由は「将来・老後不安の備え」や「インフレ対応」
平均寿命(2023年)は男性「81.09歳」・女性「87.14歳」、老後生活は20年から30年(現時点)
最低生活費「23.2万円」・ゆとりある生活「37.9万円」・平均的な生活費「約28万円:夫婦二人」、「約15.8万円:単身者」
厚生年金「約14.4万円」・国民年金「約5.6万円」、上記から公的年金だけでの生活は厳しい
「貯蓄から投資へ」という世の中の流れで、新NISAをきっかけに投資を始めた方、そして何よりも資産運用への意識が高まりました。
なぜならば銀行にお金を預けても利息は0.1%、さらに物価が上昇している昨今では、資産運用の重要性が高まってきているからです。
また、近年の医療技術により平均寿命も伸び「人生100年時代」迎えようとしています。
本文で説明した通り、老後に必要な生活費と年金とを比較しても生活費を十分に補うことはできません。
つまり、年金はあくまでも老後の生活費を補助するだけだと言えます。
不足部分は資産運用で補い、特定の商品だけに集中投資をするのではなく、分散投資を行い「インフレ対策」や「老後不安」を解消していきませんか。