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能登の現状
今回は、これまでに訪れたことがない集落へとボランティア活動にお邪魔させていただきました。
震災だけでなく、その後の豪雨で大変な被害に遭われた集落です。
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震災からは丸1年。
豪雨からは4ヶ月が経ったところでしょうか。
復興という言葉に、現実感は一切ありません。
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ボランティア活動として、瓦礫の撤去や解体作業をする傍ら、
仮設住宅から自宅の片付けの為に戻って来ている被災者の皆さん、そして全国各地から集まっているボランティアスタッフさん達に、コーヒーをふるまいます。
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この日は80杯近く、淹れ続けました。
腕がプルプルでした。
そして、非力な私ですが、今回も解体作業でも意外と役に立つことができました。
倒壊した小屋のポリカーボネートで葺かれた屋根を解体する必要があったのですが、同じ素材で同じような小屋を自作したことがあり、構造が理解できておりますので、バール一本で素早くバラし終えることができました。
「コーヒー屋さんではなく、こっちが本業なんですか?」と他のボランティアスタッフさんに驚かれました。笑
コーヒーのふるまい・出張カフェをさせていただく現場となったガレージを貸してくれたおばあちゃんは、優しくてずっとニコニコしています。
「折角、こんな本式のコーヒー淹れてくれるなら、喫茶店の看板の一つでも出さなきゃね」
そう言って、この集落の名物である雪割草群生地の写真を外壁に掛けてくれました。
なので、本日の出張カフェは、【喫茶・雪割草】という名前に決まりました。
お母さん、ずっとニコニコだけれど、ガレージの隣の母屋は、地震と豪雨とで立ち直れない損壊で、もう解体することが決まっています。
震災の後には、崩壊が迫る母屋からガレージへと、全ての家財と荷物を運び入れたそうです。
最低限、崩れずに済んだガレージで、仮の暮らしを営めるように。
そしたら豪雨災害で、目の前の川が氾濫した。 川から溢れた水は、ガレージの中で渦を巻き、人の背丈まで泥水が来た。
水が引いた後には、大変な量の泥だけが残り、一生懸命ガレージに運び入れた家財と荷物は、割り箸一本すらも残っていなかった。
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「地震で瓦礫だらけとなった集落の、いらないもの、嫌なものばかりを、豪雨が流し去ってくれればよかったのに、実際には大切なものばかりを全部持っていってしまって、ゴミと泥だけを運んで来た」
そう呟いてお母さんは笑っています。
「あんた達が来てくれたから、今日は冬にしてはほんとに珍しく暖かく良い天気やわ。」
そう言ってくれて、家から少し離れた御主人様のお墓に堆積した泥を、一人で小さなスコップを手に崩していました。
仮設住宅に引きこもっていると、一日が長くて仕方がないのだそうです。
それを見た僕達夫婦は、翌日は朝からそのお墓の泥の掻き出しをお手伝いすることに決めました。(勿論、ボランティア団体のリーダーさんにはしっかり報連相を行い、指示を仰いだ上です。)
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奥に見える泥の山を見れば想像がつくかと思います。
こんなことを言ったら、大変非難されるかもしれないけれど、僕個人的には、信じられない程の被害に立て続けに遭われた方々に、【復興】という言葉はミスマッチだと感じています。
始末をつける。
ちゃんと終わらせる。
その為に必要な作業も、沢山あります。
倒壊し、例え解体が決まった建物でも、ちゃんとお別れをする為には、しっかりお別れをする為には、準備が必要です。
ボランティアの力は、まだまだ必要だと感じます。
ガレージを貸してくれたおばあちゃん、
「あんた達、こんなことまでしてくれて〜!」
とお墓を見てとっても喜んでくれました。
「あんた、きれいにしてもらえて、よかったね〜!」
と、御主人様のお墓にしゃべりかけます。
立派だったお家は、取り壊される。
家財も、何も残っていない。
でも、ご先祖様と、そして御主人様のお墓は、これからもこの場所に残るでしょう。
「またコーヒー淹れに来て〜」
とおばあちゃんが言う。
「じゃあ、【喫茶・雪割草】の看板を作って、ママさんにしっかり働いてもらわないとね」
そう返して、笑う。
思い出すと、泣けてくる。
一旦、終わります。
続きをまた書きます。