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勇気をくれるイギリス映画『小さな恋のメロディ』

私は時々「いくつになってもピュアな気持ちを失いたくない」と思う。

新鮮な気持ち、ドキドキする気持ち、それは素晴らしいことだし、年齢を重ねたからといって失いたくないものだ。

けれど実際にはどうだろう?以前ほど小説を読んでいても興奮できない。人と分かりあう前から、あきらめてしまうこともある。

そんな時、一気にピュアな気持ちを取り戻させてくれる映画がある。それはイギリス映画『小さな恋のメロディ』

11歳の少年少女の、あまりにもピュアで、透き通るように純粋な恋物語。1971年公開の映画で、当時のイギリス、ロンドンの学校生活の様子も映し出されている。

私が毎回興味深いと思うのは、この映画に出てくる少年少女の、大人への純粋な反発心だ

映画の脚本を書くのは初めてだったというアラン・パーカー(当時27歳)、監督のワリス・フセイン(当時33歳)をはじめとしたスタッフは、全員若かった。(なんと平均年齢27歳)スタッフが若者ばかりで、楽しみながら作った映画だということは、映画を観たら画面から溢れるほど伝わってくる。

ビージーズの曲も良い。主題歌の『メロディ・フェア』を含む5曲、すべて私は大好きだ。

映画に出てくる子供たちは11歳で、ロンドンの小学校に通っている。親、学校の先生、友達、それに学校にいる好きな子。それが世界のすべて。時には大人に反発することもある。

子供たちの日々での小さな反発は、やがて子供VS大人という革命戦争へと導かれていく。

思えば私だって、子供の頃嫌というほど反発心があった。この小さな恋のメロディのように、学校の先生に反発したこともあるし、靴でお尻を叩かれるわけではないにしても、クラス全員で罰を受けたこともある。

けれどその時の気持ちを今になって思い出そうとしても、もうよく覚えていないのだ。私は今41歳。何に反発したのか覚えていても、今考えると「なんで自分あんなに怒っていたんだろ?」と思うだけなのだ。

けれどこの映画では、平均年齢27歳のスタッフたちで考えられた、『子供が主役のストーリー』がしっかりと表現されている。『子供にとって意味不明な大人たち』を、子供目線でしっかりとスクリーンにおさめている。スタッフみんなまだ若いから、シンプルにまだ子供の頃の感情をよく覚えていたのではないだろうか。

『大人が描いた子供』ではない。子供の目線で撮った、『真に子供が主役の映画』なのだ


この映画のキャラクターは、主役のダニエルとメロディ、それにダニエルの友人で、2人の関係に複雑な嫉妬心を持つトムの3人。さらに私が気になるのが、チョイ役なのに抜群の存在感を醸し出している、爆弾少年。

爆弾少年とは、授業中も勉強なんてそっちのけで手作りの爆弾を作っている、ダニエルとトムのクラスメイトだ。

いつも「今日こそうまくいく。実験をする」と男子たちを集め、空き地のようなところでお手製爆弾に火をつけるが、毎回プスッという音を立てるだけで、失敗しているのだ。

友人たちはガッカリして呆れているけれど、爆弾少年は諦めずにコツコツと改良を重ねている。

ラストでクラスの全員がダニエルとメロディの結婚式に出払っていた時も、1人教室で黙々と爆弾を作っていた。

その後完成した爆弾を持って駆けつけた子供だけの結婚式。先生や親の大人集団を追い払わなければならない切羽詰まった状況で、爆弾はついに成功。予期せぬ爆発は大活躍したのだった。

このようにして、子供たちは大人たち相手に革命を起こした。その革命は満を持して行われたものであり、子供たちは日頃から大人の小言や、意味不明な説明に、うんざりしていたのだ。

本気のピュアな感情で行動を起こした子供たちは、つまらない常識に囚われた大人たちに、完全勝利した。

そこには100%の爽快さがある。

今、いち親になった私が映画を観てみると、ダニエルもメロディも親に対してとても良い子で、「どうして好きなのに結婚しちゃいけないの?」と一生懸命親と分かり合おうとしている。親たちがすっかり困り果てるシーンにも共感するが、子供たち2人にだって、「今じゃなきゃいけない」という事情があって、強行突破に出るしかなかったんだということも分かる。

自分がしてきたのと同じように、子供は大人を困らせる生き物なのだ。それに、子供たちと大人たち。そこには境界線のようなものがあって当たり前なのだ。むしろそれが健全なのではないか?ということ。子供には子供だけの世界があるってことである。

もしかしたら子供のピュアな感情は、何よりも強くて、世界をも変える力を持っているのかもしれない

そして大人になっても、ピュアな気持ちで何かに頑張ること、時々は子供の頃のように、常識に囚われないで物事を考えるのが大事なのかも。ピュアが1番強いかも

そんな気持ちにさせてくれる映画だ。


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