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BGM conte vol.3 《God Only Knows》

 雉鳩の鳴き音がする。

 ホーホーフッフー
 ホーホーフッフー
 ……

 フッフーのところはクックーに近い。鳥の鳴き真似は僕の十八番だ。
 昼下がりの柔らかな光がカーテンの隙間から差し込んでいる。
 いつまでも寝床でぐずぐずしていて、窓の外のそれに合わせ、知らず鳴き真似していることもあった。雉鳩の鳴き音が止む。こちらもやや遅れて止める。
 探るような間合いのあとで、また鳴き始める。こちらもやや遅れてそれを追いかける。
 雉鳩の惑うような様が手に取れるようで、それが面白い。

 若さを持てあましながら全活動の停滞した一時期に、僕は鳥に馴染んだ。
 雉鳩ばかりでない。
 庭には鵯が来る。目白が来る。尾長が来る。
 小啄木鳥が来て、すっかり枝葉の落ちた小楢に取りついた。
 朝な朝なに戸外に小刻みに何かを打つ音が渡って、朝ぼらけに大工仕事とは非常識にもほどがある、と寝床のなかで悶々とした。悩まされたのは僕ばかりではなかった。往来に人が出て、見上げて、
「やあ、ちんまい鳥が、木をつついてら」
 となって、寒さに首をすくめながら安堵して家に戻る。
 しかし人が来ては見ていくのに落ち着かなかったのだろう、小啄木鳥は数日もしないで新居の建築を中途で放擲し、どこぞへ去った。
 小啄木鳥が去ってまもなく、方々の庭で梅がほころんだ。

 僕はまだ、あの物憂い季節を脱していないのだ。
 夢うつつにそう思いながら、寝床から天井を見上げて、はて、と首を傾げる。
 馴染んだ天井の木目模様でない。
 ようやく浮遊した魂と現在の肉体とが一致するような感覚を得て、それが新居の天井の木目であることを思い出す。
 耳元で、妻が雉鳩の鳴き真似をしている。
 それで、錯覚された憂鬱の季節。
 目を覚ましたこちらを覗いて、くるくると笑っている。
 いたずらな妻。

 初夜明けの、初めての朝。

I may not always love you
But long as there are stars above you
You never need to doubt it
I'll make you so sure about it
God only knows what I'd be without you

If you should ever leave me
Though life would still go on, 
believe me
The world could show nothing to me
So what good would living do me
God only knows what I'd be without you

God only knows 
what I'd be without you

If you should ever leave me
Though life would still go on, 
believe me
The world could show nothing to me
So what good would living do me
God only knows what I'd be without you

ずっと君を愛しているわけではないかもしれない
でも君の頭上に星のまたたく限り
そんなこと疑う必要はない
これだけは君に言っておきたい
君なしでどうなってしまうか、神様だけが知っている

もし君が僕のもとを去ることがあっても
人生はつづくだろう
でも信じてほしい
世界はなにも見せてくれなくなるだろうし
生きてて良いことなんかなにひとつないだろう
君なしでどうなってしまうか、神様だけが知っている……

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