【応援小説】自分が正しいと言い張る上司の末路
佐藤課長は、いつも「自分が正しい」と信じて疑わなかった。部下たちはその強い姿勢に圧倒されていたが、同時に次第に恐れを抱き始めていた。彼の意見が最優先され、どんなに部下が自分の方法に疑問を持とうとも、それを口にすることすら許されない雰囲気が職場には漂っていた。
課長は、仕事に関しては常に完璧を求め、結果を出すことが最も重要だと強調していた。「成功するためには、自己の方法を貫き通せ」と。そのためには部下の意見も、時には無視してでも自分の指示を押し通すことが必要だと考えていた。
だが、その「正しさ」を強調しすぎるあまり、徐々に佐藤課長は周囲との関係を築くことができなくなっていた。部下たちは表面上は従うものの、内心では課長のやり方に反発を覚えていた。指示が不明確であったり、時には非現実的な要求をされることもあったが、課長はそれに対して疑問を持たなかった。
ある日、佐藤課長の部下である田中が、ある大きなプロジェクトの進行方法について、課長に提案をした。田中はプロジェクトの進行状況を見て、もっと効率的な方法を取った方がよいと感じていた。しかし、提案を持ちかけた瞬間、佐藤課長は冷たく言い放った。
「田中、お前のやり方ではうまくいかない。俺の方法が最善なんだ。」
田中は言葉を飲み込み、強く反論することはできなかった。その後、プロジェクトは予想通り進行が遅れ、数度の修正を強いられた。しかし、佐藤課長は依然として「自分の方法が正しい」と言い張り、部下たちを責め続けた。
その結果、次第に部下たちの士気は低下し、仕事の質も落ちていった。意見を出せない空気の中で、チームのパフォーマンスは落ちる一方だった。それでも課長は、「自分が正しい」という信念を変えることなく、さらに厳しい指示を出し続けた。
そんな中、ある取引先から大きなクレームが入った。提案した新商品の進行が遅れたため、契約が破棄されることになった。佐藤課長はその場で強く反省し、責任を感じたが、社内の上司たちはすでにその失敗の原因を課長の一貫した独断専行に求めていた。
数週間後、佐藤課長は人事部門から呼び出され、結果的に降格処分となった。彼が自分の「正しさ」を強調し続けたため、職場の雰囲気は悪化し、チームの信頼を失っていたことが原因だった。
課長の末路は、孤立と失敗という形で表れた。最初は強気に見えたその姿勢も、結局は自分一人では物事を動かすことができないという現実に直面することとなった。
降格後も、佐藤課長は自分の信念を曲げることはなかった。彼は引き続き、自分が間違っていないと主張し続けたが、周りからは誰も耳を傾けることはなく、次第に職場から疎外されていった。
「自分が正しい」と信じ続けた結果、佐藤課長は自分の周りにいる人々を失い、最終的には孤立してしまった。そして、その「正しさ」を貫いた末路は、誰にも共感されることなく、ただの過去の話となっていった。