売上のキーは「人財」。 採用・育成の土壌を整え、売上・人員数ともにアップさせた話
人財不足が招いていた事態
日本全国に10支店を構えるA社はコロナの特需で問い合わせが社外からの問い合わせを多く獲得していました。
A社の業界構造は受注単価が低く、細かい受注を積み上げるモデルです。
トップの営業が売上を牽引する、ということではなく全員で売上を作っていく構造です。
A社の課題として、問い合わせ数は1.8倍にもなりましたが
その後の受注数にインパクトが出せていないという状況でした。
原因は人員不足。
顧客対応が雑になり、問い合わせの取りこぼしが起こっていました。
また同時に退職ラッシュも重なり、売上が逓減していました。
売上が人員数に依存しやすいA社のビジネスモデルにおいて
事業成長のためには採用による人員の増加と離職を防止する2点が急務でした。
採用課題を見立てる
販促領域と人材領域の観点からアプローチをします。
店舗業績や集客状況などのデータはマーケティング部に、
人員や採用計画、教育施策などは人事部にコンタクトをとります。
しかし改革案をお持ちしてもスムーズには進みません。
組織が縦割りで分断されていたのです。
組織図的に、社長の直下に営業系役員をトップとした営業部隊と
本社のコーポレート系役員をトップとして人事組織がありましたが
この2人の役員は社内的にも対立している状況でした。
社長が「事業成長のためには人員の増員が必要」と話をしても
営業からは
「トッププレイヤーが欲しい。」
「売れない人は辞めても仕方ない。昔からそういうもの。」
「そもそも売れない人を採用する人事に問題がある。」
と育成から後ろ向きなご意見がありました。
一方で人事では、採用活動は支店毎で実施しているので
「今期は予算を抑えないといけない」
「営業からは全然手伝ってもらえない」など不満の声がありました。
経営層⇔営業⇔人事の間で意識の乖離が発生していました。
社長に、営業や人事からヒアリングしたことや現状を報告します。
なぜ人員が重要なのかが営業現場には伝わっていないこと。
採用〜退職抑制は営業現場の強力なしでは成功しないこと。
経営層⇔営業へのアプローチ
営業現場にとって重要な売上を主語に
再度このテーマを会話することにしました。
例えば
・事業部の営業が○人違うと、○○円も売上が変わること。
・入社時期が数ヶ月違えば、稼げる1人あたりの売上にも大きく変わること。
役員の月例会や各事業部会議、経営計画発表会などで
社長→営業現場に落とし込みいただき理解を浸透させていきました。
営業⇔人事へのアプローチ
まず人事からの発信は営業に置き換えて伝えていただくことにしました。
営業では問い合わせ→商談→受注というプロセスがあるように
採用でも応募→面接→入社というプロセスがあります。
せっかく応募があったのにも関わらず現場の対応が遅かったりすると
面接まで結びつきづらくなることを実際の数字でお伝えしました。
面接の対応においては、面接後求職者へ人事からフォローアップの連絡をすることで
面接対応に対する声を拾い上げ、各支店にフィードバックしていただきます。
また採用計画通りに行われているか?については進捗状況を週次で配信し
支店毎に競わせるというA社の営業らしい風土を活かし推進していきました。
組織間の乖離に対してで間に入らせていただき情報・接点を共有し
それぞれの立場に合わせた言葉に翻訳して伝えていくことで認識を共通化、施策の推進を行いました。
「人員数」が重要だと全員が思う状態を作り上げていきました。
離職課題を見立てる
採用施策の推進の土台はできつつあったので
次は離職抑制についても策を検討します。
まず過去の営業の退職者のデータについて確認します。
時期別で分析すると、年間3つのタイミングに退職が集中していることが分かりました。
なぜ時期によって変わるのか?深堀ります。
A社には業界の特性上、年間2回の繁忙期があり、その間が閑散期と季節労働化しています。
営業現場からすると、閑散期は問い合わせがすくなく、繁忙期は対応が忙しいです。
この営業の年間スケジュールと人事施策を重ねて見てみると
人事施策が適切なタイミングで行われていないのではないか?という仮説が生まれました。
・人事が推進する資格取得が繁忙期に実施のため勉強時間がとれない。
・若手の成績優秀者を決める新人賞があるのですが
この評価時期が問い合わせの少ない閑散期の成績をもって
評価されていたので評価にムラがあったり納得感がない
またA社の全員に声を傾けられるように施策を検討します。
Geppoというツールを使い「仕事満足度」「人間関係」「健康」+フリーコメントで働く状態をモニタングします。
「仕事満足度」などの各設問に対して天気で回答をする仕組みです。
特に離職率の割合が高かった新卒入社してから3年以内の社員に対して施策を行います。
「仕事」「健康」が雨状態のBくんの場合
・勤怠上のデータ上、残業が長くなっている
・Bくんが所属する支店は問い合わせに対する人員が不足しており帰りづらい環境
→支店長に共有し、タスクの整理や困っていることなどを会話していただき残業抑制の依頼
Bくんと同じく「仕事」「健康」が雨状態のCくんの場合
・Cくんが所属する支店は先輩社員の年次が高く、ギャップがあるかもしれない
・競合が多いエリアなのでベテランを多く配置している背景があるが、先輩がフォローしづらい環境
→人事が支店長とCくんの間に入り、コミュニケーションの橋渡しを行う
「人間関係」が雨なDさん
・支店長がプレイヤーで業績もよく査定評価も良い
・支店長の前職が○○という会社で営業スキルは高いけれども
実力至上主義の会社で新卒育成の経験がない
→新卒とは合わない可能性があるし、場所を変えるともっと活躍できるかもしれない。Dくんの別支店への異動も検討
このように営業からのアラートを早期にキャッチアップし
個人毎に合わせてプランを人事で策定いただきました。
より働きやすい環境でモチベーション高く働いてほしかったのです。
取り組みの結果
これらの取り組みを1年間続けた結果
営業の人員は前年同月比1.3倍にになりました。
これまで採用した人数以上に退職者が多く
少しずつ営業の人員が減っていたわけですから
取り組みの効果がうまく出たと言っていいはずです。
また人員数に比例して売上も同様にアップし
継続して上記の取り組みを続けられるというご報告をいただいております。
今回のようなケースの企業様は多くいらっしゃるかと思います。
人材確保・育成の打ち手の一つとしてご参考にしていただけますと幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?