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【完全版】関節の構成運動と運動連鎖の臨床応用【サブスク】

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運動連鎖とは

1955年にSteindler¹⁾²⁾は「ある関節で運動が生じると、その運動の影響が隣接関節に波及すること」を運動連鎖(kinetic chain)として発表しました。

運動連鎖の言葉の由来される英語には、kinetic chainkinematic chainの2つ³⁾挙げられています。

一般的に使われることが多いkinetic chainは、open kinetic chain(以下OKC、開放性運動連鎖)もしくはclosed kinetic chain(以下CKC、閉鎖性運動連鎖)に分類されます(図1)。

図1 CKC(閉鎖性運動連鎖)とOKC(開放性運動連鎖)
4)より画像引用

OKCは、開放性運動連鎖と訳され、肢体の遠位端が自由な状態で生じる運動連鎖²⁾とされています。
CKCは、閉鎖性運動連鎖と訳され、肢体の遠位端の動きが抵抗によって抑止されている状態で生じる運動連鎖²⁾とされています。

kinematic chainは、多関節運動における関節間の時間的・空間的な連動性を指す(ある関節の運動が他の隣接する関節へ影響を及ぼす)³⁾とされています。

本記事では、kinematic chainで表現される運動連鎖を中心とした内容を多く含みます。

頚椎運動と多関節運動連鎖

頸椎のカップルドモーション

カップルドモーションとは、ある運動に随伴して生じる異なる方向への運動のこと⁵⁾⁶⁾です。脊柱の運動(カップルドモーション)では、側屈時に回旋を、回旋時に側屈を伴います。

頸椎の運動では、側屈時に上位頸椎は反対側へ回旋し、下位頸椎は同側へ回旋します(図2)。回旋時に上位頸椎は反対側へ側屈し、下位頸椎は同側へ側屈します(図3)

図2 頸椎の左側屈時のカップルドモーション
5)より画像引用

図3 頸椎の左回旋時のカップルドモーション
5)より画像引用

上位頸椎の反対側への側屈や回旋は、翼状靱帯の牽引⁷⁾によって引き起こされるとされています。

座圧中心と頸椎アライメントの連動性⁸⁾

座圧中心頸椎アライメントには連動性があります(図4)。

図4 座圧中心位置の前後方向と頸椎の関連性
a:座圧中心の前方偏位、b:座圧中心の後方偏位
8)より画像引用

座圧中心を前方へ移動すると、下位頚椎は伸展位となり上位頚椎は屈曲位になる傾向があります。
座圧中心を後方へ移動すると下位頚椎は屈曲位となり上位頚椎は伸展位になる傾向があります。

頸椎運動と上位胸椎および上肢帯の運動連鎖⁹⁾¹⁰⁾

頭頸部の運動は下行性に胸椎のアライメントまで変化させる¹¹⁾と報告されています。

頸部屈曲運動に伴い、上位胸椎は屈曲肩甲骨は挙上・前傾します(図5)。

図5 頸椎屈曲運動に伴う上位胸椎および上肢帯の運動

頸部伸展運動に伴い、下位胸椎は伸展肩甲骨は下制・後傾します(図6)。

図6 頸椎伸展運動に伴う上位胸椎および上肢帯の運動

頸部側屈運動に伴い、上位胸椎は同側側屈、同側肩甲骨は下制対側肩甲骨は挙上します(図7)。

図7 頸椎側屈運動に伴う上位胸椎および上肢帯の運動

頸部回旋運動に伴い、上位胸椎は同側回旋同側肩甲骨は内転対側肩甲骨は外転します(図8)。

図8 頸椎回旋運動に伴う上位胸椎および上肢帯の運動

これらの運動連鎖から逸脱する動きが観察される場合は、病態運動と解釈されます。

🎥頸椎運動に伴う上位胸椎および上肢帯の運動連鎖

上半身質量中心と頸椎アライメントの連動性⁸⁾

上半身質量中心とは、身体重心よりも上部の質量中心であり、第7〜9胸椎の高位に位置しています¹²⁾(図9)。

図9 上半身質量中心、下半身質量中心、身体重心の位置

上半身質量中心頸椎アライメントおよび頸椎運動には連動性があります(図10)。

図10 上半身質量中心位置の左右方向と頸椎の関連性
a:上半身質量中心の左偏位、b:上半身質量中心の右偏位
8)より画像引用

上半身質量中心が左に偏位すると、下位頸椎が右側屈および右回旋します。この時、頸椎右回旋可動域が向上する傾向があります。
上半身質量中心が右に偏位すると、下位頸椎が左側屈および左回旋します。

座圧中心と脊柱アライメントの連動性⁹⁾¹⁰⁾¹²⁾

座面を左前方左後方右前方右後方の4区画に分類した際、座圧中心位置の違いにより脊柱アライメントが変化します(図11)。

図11 座圧中心と脊柱アライメントの関係性
9)を参考に作成

座圧中心が左前方では、下部体幹は伸展・右側屈・左回旋をし、上部体幹は、伸展・右側屈・右回旋をします(図12)。

図12 座圧中心左前方と脊柱アライメントの関係性
9)を参考に作成

座圧中心が左後方では、下部体幹は屈曲・右側屈・右回旋をし、上部体幹は、屈曲・右側屈・左回旋をします(図13)。

図13 座圧中心左後方と脊柱アライメントの関係性
9)を参考に作成

座圧中心が右前方では、下部体幹は伸展・左側屈・右回旋をし、上部体幹は、伸展・左側屈・左回旋をします(図14)。

図14 座圧中心左前方と脊柱アライメントの関係性
9)を参考に作成

座圧中心が右後方では、下部体幹は屈曲・左側屈・左回旋をし、上部体幹は、屈曲・左側屈・右回旋をします(図15)。

図15 座圧中心右後方と脊柱アライメントの関係性
9)を参考に作成

頚椎運動と多関節運動連鎖の臨床応用

頚椎伸展時の骨盤前傾・脊柱伸展誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は、対象者の後方に位置し、骨盤を両手で把持します。そこから検査者は骨盤前傾方向へ徒手誘導し、対象者には、同時に腰椎⇨胸椎⇨頸椎の順序で脊柱を伸展するように促します。

解釈
 骨盤前傾方向へ誘導することで座圧中心を前方に偏位させ、上位胸椎および下位胸椎の伸展運動を促しています。疼痛が軽減または消失する場合には、上位胸椎および下位頸椎の可動域制限や運動パターンの問題が挙げられます。

備考
 頸椎伸展運動では、上位胸椎の伸展運動を伴います。そのため、上位胸椎の可動域制限は頸部動作時痛の誘因となることがあります。

頚椎伸展時の上位胸椎伸展徒手誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は、対象者の後方に位置し、両手の母指を重ねて対象者の上位胸椎棘突起に当て固定します。対象者の頸部伸展運動に追従するようにして、検査者は上位胸椎伸展方向(押し下げるように)に徒手誘導します。

解釈
 頸部伸展運動に伴う上位胸椎運動伸展を誘導しています。疼痛が軽減または消失する場合には、上位胸椎の可動域制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

頚椎伸展時の肩甲骨下制・後傾徒手誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は、対象者の側方に位置し、疼痛側の肩甲帯を両手で把持します。そこから対象者の頸部伸展運動に追従するようにして、検査者は肩甲骨を下制・後傾方向へ徒手誘導します。

解釈
 頸部伸展運動に伴う肩甲骨の下制・後傾運動を誘導しています。疼痛が軽減または消失する場合には、肩甲骨の挙上・前傾マルアライメントや肩甲骨下制・後傾可動域制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

備考
 
頸部伸展運動に伴い、肩甲骨は下制・後傾します。

頚椎伸展時の肩甲骨内転・挙上誘導(徒手/セルフ)

方法
 対象者は端座位となります。検査者は、対象者の後方に位置し、両側の肩甲帯を把持します。検査者は、肩甲骨を内転・挙上させて固定し、そこから対象者には頸部伸展運動を行ってもらいます。

解釈
 疼痛が軽減または消失する場合には、僧帽筋や頸部伸展筋群の過緊張および滑走不全、鎖骨挙上・後方回旋制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

備考
 頚部伸展運動に伴い鎖骨は挙上・後方回旋します。

頸部回旋時の胸椎同側回旋誘導

方法
 対象者は端座位となります。そこから対象者には、同側の体幹回旋⇨頸椎回旋の順序で、頸椎回旋運動を行ってもらいます。検査者は、必要に応じて胸椎回旋運動を徒手で誘導します。

解釈
 疼痛が軽減または消失する場合には、体幹(主に上位胸椎)の回旋制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

備考
 頸部回旋運動に伴い、上位胸椎は同側回旋します。

頸部回旋時の同側肩甲骨内転・対側肩甲骨外転誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は対象者の後方に位置し、両側の肩甲帯を把持します。そこから対象者の頸部回旋運動に追従するようにして、検査者は同側の肩甲骨を内転、対側の肩甲骨を外転方向へ徒手誘導します。

解釈
 疼痛が軽減または消失する場合には、同側の肩甲骨内転制限、対側の肩甲骨外転制限、上位胸椎の回旋制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

備考
 頸部回旋運動に伴い、同側の肩甲骨は内転、対側の肩甲骨は外転します。また、この手技により上位胸椎の同側回旋運動も促しています。

頸部回旋時の座圧中心位置の左右への誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は対象者の後方に位置し、骨盤を両手で把持します。骨盤運動によって、頸部回旋の反対側へ座圧中心を移動させ、その位置を保持します(頸部左回旋の場合は、右の坐骨結節に荷重を移動させます)。そこから対象者に頸部回旋運動を行ってもらいます。

解釈
 
座圧中心を左右方向に移動させることで、上半身質量中心位置を偏位させ、運動連鎖を用いた頸部回旋運動を促しています。疼痛が軽減または消失する場合には、座圧中心の偏位や上半身質量中心の偏位、骨盤帯〜脊柱のマルアライメント、運動パターンの問題が頸部痛の誘因となっている可能性を考慮します。

頸部側屈時の同側肩甲骨下制・対側肩甲骨挙上誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は対象者の後方に位置し、同側の肩甲帯と対側の上肢を把持します。そこから対象者の頸部側屈運動に追従するようにして、検査者は同側の肩甲骨を下制、対側の上肢(肩甲骨)を挙上方向へ徒手誘導します。

解釈
 疼痛が軽減または消失する場合には、同側の肩甲骨下制制限、対側の肩甲骨挙上制限、上位胸椎の同側側屈制限が頸部痛の誘因として挙げられます。

備考
 頸部側屈運動に伴い、同側の肩甲骨は下制、対側の肩甲骨は挙上します。また、この手技により上位胸椎の側屈運動も促しています。

頸部側屈時の座圧中心位置の左右への誘導

方法
 対象者は端座位となります。検査者は対象者の後方に位置し、骨盤を両手で把持します。骨盤運動によって、頸部側屈の反対側へ座圧中心を移動させ、その位置を保持します(頸部左側屈の場合は、右の坐骨結節に荷重を移動させます)。そこから対象者に頸部側屈運動を行ってもらいます。

解釈
 
座圧中心を左右方向に移動させることで、上半身質量中心位置を偏位させ、運動連鎖を用いた頸部側屈運動を促しています。疼痛が軽減または消失する場合には、座圧中心の偏位や上半身質量中心の偏位、骨盤帯〜脊柱のマルアライメント、運動パターンの問題が頸部痛の誘因となっている可能性を考慮します。

🎥運動連鎖の臨床評価

肩関節運動と多関節運動連鎖

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