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【全文公開】わが子が「お友達」関係で悩まない本(風路京輝・著)

2017年5月刊

親の目が届きにくい「わが子の人間関係」介入しすぎず、応援するために、親としてできること。38年に及ぶ教室の現場を通して見いだした「お友達に好かれる子ども」の育て方を徹底解説。

【著者プロフィール】
風路京輝(かぜみち・きょうこ)

元小学校教師。「小学生子育てプロママ養成講座」主宰。
東京生まれ。小学校高学年から福島県在住。幼・小・中(英語、数学)・高等学校(英語)の教員免許を有するが、小学校に最も長く勤務。教員生活38年で、接してきた親子の数はのべ1500 組以上。「今の小学校の本当のところを知りたい」という親の疑問や不安に答えるブログ「先生が教える小学校と勉強 小学生子育てプロママ養成講座」を2011年にスタート。2015年3月に教員を退職し、小学生の子どもを持つ親の子育て支援を中心に積極的に活動を展開。「親の駆け込み寺」のカリスマとして、小学生を持つ親を中心に高い評価を受けている。

はじめに──わが子の人間関係を応援するために、親ができること

小学校入学は、「人間関係づくり」デビュー

「一年生になったら、一年生になったら、友達100 人 できるかな〜」
 幼稚園・保育園から、いよいよ小学校入学!
 子どもも親も、ドキドキ、ワクワクの瞬間でもあります。
 親としてみれば、「あんな小さかった子が、いよいよ小学生か……」と感慨にふけるとともに、わが子の成長に対するうれしさと期待感でいっぱいになるものですよね。
 一方で、「どんな小学校生活を送るんだろう?」「授業にちゃんとついていけるかしら?」「担任の先生はどんな人?」といったものに加え、ある1つの大きな不安が生じるのではないでしょうか?
 それは、「わが子のお友達関係」です。
「仲のいいお友達ができるだろうか?」
「仲間外れにならないだろうか?」
「いじめに遭わないだろうか?」
「いじめる側にならないだろうか?」
 小学校入学は、子どもたちにとって、幼稚園・保育園に比べて、人間関係の幅が広がることを意味します。それは、社会に出ていく第一歩でもあります。
 だからこそ、お勉強の心配をする以上に、わが子の人間関係は、親であれば誰もが心配になるものです。
 本書では、そんなお子さんたちの人間関係について、38 年に及ぶ教師歴での教室の現場を通して見いだした「お友達に好かれる子ども」の特徴を基に、親としてわが子の人間関係を応援する方法をお伝えします。

学校でできること、家庭でできること

私は38年にわたり、教員として多くの子どもたちと接してきました。直接担任した子どもたちのみならず、生徒指導面でかかわったり、いろいろな特別活動でかかわった子どもたちも合わせれば、1500人以上になります。
 2015年3月に教員を退職しましたが、その後も、「風路教育研究所」として、小学生のお子さんを持つ親御さんの子育て支援を中心に、積極的に活動を続けています。
 私のところに相談に来られる親御さんで一番多い相談テーマが、「わが子の人間関係」です。
「仲間外れにされているようだ」
「ちょっと無視されたみたい」
「『学校に行きたくない』と言い出した」
「どうやら、ウチの子がいじめる側にいるようだ」
「学校の担任に嫌われているみたい」
 などなど、学校生活における人間関係について、さまざまな相談を受けます。
 ただ、相談内容の中身に問わず、子どもの人間関係問題対策として、ある共通した基本的な考えがあります。
 それは、「子どもの人間関係対策には、学校でできること、親でできることが、それぞれある」というものです。
 人間関係づくりに限らず、「教育・子育て」に共通するのですが、どちらかに偏っている(まかせっきり)と、うまくいきません。
 学校とご家庭の両輪を回すことで初めて、子どもの教育は成り立ちます。
 当たり前ですが、子どもは、つねに学校にいるわけでなく、家でも過ごします。その明確な境界線があるわけでなく、学校にいる時間も、家で過ごす時間もあっての一日です。
 また、学校の先生だから伝えられること、教えられること、親御さんだから伝えられること、教えられること。それぞれの立場で役割があり、やれることがあります。
 本書では、子どもたちが楽しく心穏やかに充実した小学校生活を送るために、「親が支援してやれることは何なのか?」についてお伝えしていきます。

教室の現場から見いだした知恵とアドバイス

 また、私は、長期にわたって初等教育の現場にいて、いろいろなご家庭の子育てを見守ってきました。
 ここから得られた「この子とお友達になれたら、うれしいな」と周囲の子どもたちから思われるような魅力あふれるお子さんに育つよう、ママ、パパがサポートしていくためのいくつかのヒントもお伝えします。
 第1章では、まわりから仲良くなりたいと思われる子の特徴をお伝えしていきます。
 第2章「『お友達に好かれる子』の育て方」では、ご家庭でできる「人間関係づくり」の能力を高める方法をお伝えします。
 第3章では、「こんなとき、どうすればいいの?」と題して、よく親御さんから受ける「悩み」別に、それぞれの対策方法をお伝えします。
 第4章では、親御さんにとって、学校生活における教育パートナー、支援者である学校の先生と上手な付き合い方、動かし方をお伝えしていきます。
 本書が、お子さんの楽しい学校生活を過ごすためにお役に立てたら、著者としてそれほどうれしいものはありません。

第1章 みんなが「お友達になりたい」と思うのはどんな子?

最初に、親として「意識」したほうがいいこと

 人が二人以上集まれば、そこには人間関係が生じます。
 それは、子どもだって同じです。小学校に入学したり、クラス替えがあったりして、まわりを取り巻く人間の顔ぶれがリニューアルする――。
 そんな中で、新しい人間関係を築き、友達をつくって、楽しく心豊かに学校生活を過ごせたら、親としても安心ですよね。仲良しのすてきな友達がいたら、子ども自身も、学校生活がとっても楽しいものになるはずです。
 では、心穏やかには聞くことのできない子どもを取り巻くニュースがいろいろと聞こえてくる昨今、親としてわが子にできることとは何なのでしょう。
 そのことを考えるファーストステップとして、みんなが「お友達になりたいなあ。仲良くなりたいなあ」と思うような子どもはどんな子なのかを、親としてイメージしておくことをおすすめします。
 もちろん、「さあ、お友達を探してみよう」と呼びかけるだけでもいいのですが、もう一歩進めて、わが子のことを一番理解している親が、好かれる子どものイメージを意識しておくだけで、その後のわが子のお友達関係に大きく役立つからです。
 本書で、順を追って具体的に解説していきます。

教師が使っている、クラスの人間関係を把握するツール──ソシオマトリックス

「ソシオマトリックス」というものがあります。
 教師が、クラスの中での子どもたちの人間関係を把握するために簡単な質問を投げかけ、その答えを図解して確認し、指導に役立てようとするものです。
その質問は、たとえば、
「あなたは、誰のお隣の席になりたいですか?」
 といったものです。
 学期の初めに行なわれる「席替え」は、子どもたちにとっては一大イベントです。
 自分の周辺に誰が配置されるかによって、次の席替えまでの期間が、バラ色になったり、憂鬱(ゆううつ)なものになったり、大げさに言えば、死活問題にすらなる子がいるのです。
 この本をお読みのママ、パパの中にも、ご自身が子どもの頃、「そうだったなあ」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 この問いかけによって、個人的な仲良しさん同士が浮き彫りになったり、みんなから「あの子のそばにいたい」と思われている子がはっきりすることもあります。
 逆に、「四六時中あの子のそばで授業を受けるのは勘弁してほしい」と思われている子がわかったりもするわけです。
 クラスを〝経営〞している担任から見ると、「ああ、あの子なら、さもあろう」という鉄板の子もいれば、「へえ、あの子がねえ。あの子の魅力は、どのあたりにあるんだろう?」という子もいたりして、特に新しい学級を担任することになったときなど、大いに参考になることが多いのです。

子どもは、相手の真の姿を見抜いている

 幼稚園時代から小学校を卒業するまでずっと同じ顔ぶれでクラス替えがないという小さな学校から、1学年に5組も6組も存在し、最後まで同じ組になったことのない子もいるというマンモス学校まで、地域や学校規模の違いがあるので、「初めて顔を合わせる」という体験を何度もする子どもたちばかりではありません。
 ただ、学校においての集団は、学級だけではありません。クラブ活動だったり、委員会だったり、集団登校の班だったり、といろいろな集団に属することになります。
新学期あるいは新学年ごとにリニューアルされる「顔合わせ」が、さまざまあるわけです。
 今の教育現場では、親御さんの時代にあったような「学級委員」や「児童会会長」を選挙や推薦で選ぶというところは少なくなってきています。
「学期ごとに交替で代表を決め、各学級の代表が集まって意見交換の場を形づくる」
「児童会では、その代表委員会の中の代表が取りまとめを行なう」など、「学級委員」
「児童会会長」は、特別という感じがなくなってきています。
 子どもたちは、1年生に入学したとき、あるいは、クラス替えがあったとき、はたまた、4年生から6年生までが何かの委員会で最初に集まったときなど、イベントや区切りごとに、お互いに「この子はどんな子なんだろう?」と、いろいろな情報を受け取りながら判断しようとします。
 最初はあくまで印象から入ります。

◎頭がよさそう、に見える
◎優しそう、に見える
◎親切そう、に見える
◎意地悪そう、に見える
◎かっこよさそう、に見える

 などなど、人それぞれの印象で相手を判断します。
 でも、朝の「おはよう」から帰りの「さようなら」までずっと同じ教室で過ごしたり、定期的に同じ活動をしたりするうちに、真実の姿、正体は時間の経過とともにわかっていきます。
「優しそうに見えるのに、案外底意地が悪いんだよね」とか、「意地が悪いのかと思ったけど、困ったときに手を貸してくれたのは、あの子だけだった」とか、子どもたちが心の中で、「あの子といると心地いい」と感じる子と、「あまり付き合いたくないなあ」と思う子が出てくるのです。
 子どもたちは口に出しては言いませんが、小学生にもなれば、お友達の真の姿をしっかり見抜いています。
 親としては、子どもだからといって、お友達の真の姿を見抜けるはずはないと決めつけないほうがいいでしょう。基本的に、子どもたちはわかっているのです。
 ですので、学校から帰ってきたときなどに、お友達関係についての話が出た場合、その話を尊重して耳を傾けてあげることが、とても大切になってきます。
 自分ではしっかりわかっているつもりなのに、一番認めてほしい相手に自分の話を半信半疑で聞かれるのは、大人だってとてもつらいことですよね。子どもだったらなおさらです。

低い学年ほど、打算では動かない

 とはいえ、1年生や2年生などの低学年生は、まだ人間関係にそれほどもまれていないので、自分の思ったことや感情にストレートです。「○○ちゃん、嫌い。意地悪!」などと、本人の前でもストレートに言ってしまうケースが多く見られます。
「あの子は嫌いだけど、頭がいいから付き合っておこう」とか、「逆らうと、あとで嫌なことをされるから、いい顔しとこう」みたいなことを考えた上で友達関係を築くことは、あまりありません。
 ただ、今問題にされているような陰湿ないじめをするタイプではなく、いわゆる昔ながらの「ジャイアン型」いじめっ子などに対して「おとなしくしておこう」というのは、低学年の時点でも見受けられます。
 小学3年生になると、打算的に考えたりしながら、お友達関係をつくるようになってきます。それは、けっして悪いことではなく、集団の中で自分の身を守る、防衛本能であり、正常なことです。
 親や教師からすると、子どもの本音が見えにくくなってくるとも言えます。大切なのは、「この人(パパ、ママ)の前では、本音を言っていいんだ」という信頼関係を築いておくことです。
 とはいっても、特別難しいことではありません。
 学校での話があれば、ふだんからどんな些細なことでも、尊重して耳を傾けて、反応してあげることです。
 特別なアドバイスができなくてもいいのです。とにかく聞いてあげて、うなずいたり、共感してあげるだけでも十分信頼関係の基礎は築けます。

わが子のお友達になってほしい子の条件を決める

 わが子のまわりに存在する子どもたちは、多かれ少なかれ、何らかの影響を及ぼす存在ですから、ママ、パパにとっても気になるものですよね。
 数多くの私立の学校が存在する都市部では、「朱に交われば赤くなる」を念頭に置いて、友達選びを周到に進めるために、義務教育の時期から受験させ、ゆくゆくはわが子の友人となり得る子どもたちを「選びたい」と考える親御さんも少なからずいらっしゃいます。
 家庭環境も学力もさまざまな公立の学校よりは、厳選された家庭のそれなりのしつけをされたお子さんが入学してくるのではないか、という期待をするわけです(だからといって、必ず期待どおりにいくとは限らないのが、この世の常ではありますが……)。
 その気持ちは、ホントによくわかります。
 ただ、47都道府県のうち、そういった選択が可能なエリアは、そんなに多くはありません。また、ある程度の経済的な余裕がなければ、小学校から私立という選択肢は選べないでしょう。
 そういう選択の余地のない状況の中でも、「こういった子と友達になってほしい」という親の望みはあるものですよね。
 親御さんからの望みを聞くと、いろいろ条件が出てきます。一例を挙げてみます。

◎挨拶がちゃんとできるなど、しつけられている子
◎思いやりがある子
◎性格のいい子
◎明るい子
◎人の悪口を言わない子
◎運動ができる子
◎勉強ができる子
◎お金の管理ができる子
◎ご両親がそれなりの仕事をしている子

などなど。本音を伺うと、いろいろ出てくるものです。
 とはいっても、すべてが揃っているお子さんは、めったにいるものではありません。
 そうだとすれば、「これだけは外せない」という条件を、親として決めておきたいものです。

見た目は、お友達関係に影響するのか?

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