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「市谷の杜 本と活字館」に行ってきました
こんにちは。
フォレスト出版 編集部の美馬です。
本日はいつもと趣向を変えて、先週末に訪れた「市谷の杜 本と活字館」についてお届けしたいと思います。
以前の投稿でご紹介した『「本をつくる」という仕事』(稲泉連/ちくま文庫)でも、取り上げられている"秀英体"や活版印刷、製本など、古き良き本づくりの舞台裏を肌で感じることのできる文化施設です。
この書籍を読んでいるうちに活版印刷に興味を持ちはじめ、この施設を知りました。普段はインドアな私ですが、新人編集者として、本づくりの歴史を知らないわけにはいかない! と、重い腰を持ち上げました。
大日本印刷市谷工場
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1886年(明治19年)、市谷の地に当時"秀英舎"という名称で印刷工場が誕生しました。これが後々の大日本印刷です。
1990年代に至るまで、大日本印刷市谷工場は雑誌や書籍の一大製造拠点であったと聞いています。2000年代に入り、大量印刷の技術が浸透したことで大型機械を郊外の工場に移設。この建物は、出版印刷の象徴として新たな形で活用されることになりました。
活版印刷で本をつくる
活版印刷で本をつくるには、大きく分けて6つの工程があるようで、こちらの施設では各ブースごとに職人の技を体感することができます。
鋳造と呼ばれる工程では、1文字ずつ型に金属を流し込んで「活字」をつくるのですが、この活字がそのまま印刷版を構成するため、高さが均一であることが必須だと教わりました。高すぎると文字がつぶれ、高さが足りないとインキがつかずに、かすれや文字抜けの原因となるようです。
特にこのルビの活字の大きさは、本文の半分になります。非常に細かく小さいものです。精度の高い仕事が要求されますので、まさに職人の腕の見せ所です。
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鋳造された活字は、使用頻度ごとに区分されて棚に配列され、この活字を1文字ずつ拾って、文章をつくります。この作業のことを「文選」と言うようです。
拾った活字を、印刷のために版に仕上げる作業を「植字」と言い、下の写真は、名刺の活字組版と呼ばれるものです。
調べてみたところ、今でも名刺を活版印刷の技術でつくっているスタジオは多くあるようです。モダンな雰囲気が出ていて、とにかくお洒落なんです!たまに名刺交換をした方のそれが活版印刷だったとき、ついつい興奮して見惚れてしまっているのは内緒です……。
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版が完成したら印刷の工程に入ります。
今回、卓上活版印刷機を使用したしおりの印刷体験をさせていただきました。こちらが通称テキンと呼ばれるものです。なぜテキンと呼ばれているのか、スタッフの方が丁寧に説明してくださいましたが、すみません。忘れてしまいました(笑)。気になる方は是非聞いてみてください!
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さて、私がつくったしおりはこちらです。
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可愛いですよね。ちなみにモチーフになっているバレリーナは、活版印刷全盛期の時代、まだ日本では認知されていなかったようで、お相撲さんのように太ったイメージで描かれていたそうです。
そうとも知らず、「そのお相撲さんの柄にします!」とスタッフの方に申し出て、恥ずかしい思いをしてしまいました。他にも時代背景に合った柄が5、6種類用意されていたので、歴史を学びながら選ぶのも楽しかったです。
その他にも、実際に明治時代にベストセラーとなった書籍をモチーフにした絵葉書なども、印刷されていて、しかも無料でいただけちゃうんです!
企画展 「100年くらい前の本づくり」
さらに、現在期間限定で企画展が開催されているようで、印刷、製本技術の進展と豊かになっていく装幀の表現力、本づくりの進化を目で見て体感することができます。
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学校の歴史の教科書に載っているような、和紙を折って綴じた「和本」は今ではなかなかお目にかかれません。その時代ならではの特徴を見つけてまわるのも面白いです。
大日本印刷でつくられた本や雑誌には、お馴染みの『広辞苑』(岩波書店)、『週刊新潮』(新潮社)そして日本で初めて発行部数100万部を超えた大衆雑誌『キング』(大日本雄弁講談社)などがあるようです。時代を象徴する本や雑誌にふれるのはなかなか感慨深いものですね。
こちらの企画展は7月10日まで開催されているとのことです。興味がある方はお早めに!
いかがでしたでしょうか。
本文よりも写真のほうが大部分を占めてしまいましたが、少しでも「市谷の杜 本と活字館」の魅力が伝わっていたらうれしいです。
ちなみに写真の掲載許可はスタッフの方にいただいています。もっとインパクトのあるレアな写真はたくさんありますが、今日はここまで。
本好きにはたまらない「市谷の杜 本と活字館」でした。