焚き火日和
2月の11日12日の土日は、2週間前の大雪が嘘のようなうららかな晴天に恵まれました。
『啓蟄 けいちつ』とはよく言ったもので、〝冬籠りの虫が這い出る〟ように、気温が高まるとそわそわと人も動き出すのですね。
お陰様で、コヤキチをご見学されたい方や、家づくりのご相談、この由布の森に土地を購入して2拠点生活をはじめたいという方などにご来場いただき、森も小さな賑わいに包まれたのでした。
森のオモテナシは、焚き火です。
そこそこに温かい陽射しがあったので、外で会話していても、焚き火があれば寒くなく、この上ない開放感も堪能できます。
前日までの雨で濡れていた焚き火場の中に、焚き付け用の針葉樹を井桁に組んでなんとか火をつけました。やがて轟々という炎が立ち上がってくると、
アルミホイルでくるんだサツマイモを数個放り込んで、オモテナシの準備完了。
訪れていただいた方にコヤキチをご覧いただいた後は、
外のウッドデッキを自由にお使いいただき、サツマイモを頬張ったり、コーヒーを楽しんでいただいたり、合い間合間に森暮らしのことで話は盛り上がります。
敷地が広々としているので、焚き火をしていても隣近所に迷惑をかけることもなく、モクモクと煙が上がっても、「木の燃えるいい匂いだなぁ~」と思うだけで、まったく気になりません。
もちろん、風向きによっては煙が目に染みるので風上に回り込むように焚き火の周りを周回しながら、火の通りを考えて形よく薪をくべます。そして、その火照りに向かって手をかざし、サツマイモが焼けすぎていないか、時折り火かき棒でホイルを挟んでは弾力を手で感じ、その焼き具合を確認するのです。
そうこうしていると、昔やった焚き火の記憶が蘇ります。
かつて日本の家では、それぞれの家の庭で焚き火をして枯れ葉などを燃やし、そのついでに焼き芋をつくって家族全員で楽しんだものです。
そんなささいな楽しみが、幸せだったんだなあと、今思います。
そんなささいなことさえ、今の日本の家ではなかなかできないのです。
快適な分、ルールの多い都市生活では、焚き火などという野蛮な行為は
〝何を燃やしているんだろう?〟という変な疑念に直結して厳禁とされているのですから。
焚き火のフィナーレは、赤々と輝く熾火と、そこから漏れ出るチリチリという微かな音です。
今そこに居る幸せ。
焚き火をするだけで、他には何もなくても幸福なのです。
春の予感さえ感じさせるうららかな焚き火日和。
ここにあるのは、原始的な小さな暮らしです。
それは不便だけれど、一欠片のストレスもない自分のままで居られる楽園の日々。
温かそうに、コヤキチも佇んでいます。