『ラーメン部骨伝導』 #毎週ショートショートnote【A麺】
うちの病棟でもVRを取り入れることになった。私はメニューを手に担当患者の部屋に赴く。
体験できるVRには
①思い出の場所巡り
②叶えたい夢の世界
③もう一度食べたい料理
等の種類がある。
「どれにされますか?」
いつもぼんやりとしている中さんだが、少し上体を起こしメニュー表を見やすい位置にかざすと骨張った指で③を差した。
「何の料理をご希望ですか?」
「…豚骨ラーメンを」
嗄れた声から切実さが伝わってきた。
VRの設定をし、中さんの耳に骨伝導イヤホンをはめ、ゴーグルをかけた。
今、中さんはVRの世界でラーメンを啜っているのだろう。まるで落語家が麺を啜る芝居をしているように手を動かしていた。
「どうでしたか?」
「最高な冥土の土産が味わえたよ。ありがとう」
まともに食事も摂れなくなった患者に仮想とはいえ好きな料理を見せるのは酷ではないかという意見もあった。
でも中さんの満足げな顔を見ると、緩和ケアとしてのVRも悪くないのではないかと私は思った。
油断するとブラック路線になりそうなのをグッと堪えて書きました。(何の報告や!)
もう一つの作品もこちらの作品とリンクできるように、ちょっぱやで仕上げましたよ!
(もはや煮込んでる暇がねぇ!とはいえ、トッピングは忘れてないはず…)
よかったら、B麺もどうぞ~
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