オマージュ小説 『秋桜のスローバラード』 #シロクマ文芸部
秋桜畑をドライブした帰り道
フロントガラスから落陽を眺めて
俺は絶望を覚える。
パンクした車の中で
助けを待つなんて……
ドライブになんか誘わなければ
あのときに道を間違わなければ
こんなことには
ならなかったかもしれないのに。
今さら悔やんでも仕方ないことを
うじうじと考え、また落ち込む。
小春もさぞ不安な思いをしているだろう
と ちらりと助手席に視線を送れば
「このままだとスローバラード的な
展開になるのかな?」
と呑気に呟いていた。
その声には不安な色が
微塵も感じられなくて
俺は少し救われる。
「このままクルマの中で寝る気?」
「市営グランドの駐車場とは
ほど遠い山奥だけどね」
「なら、小春のねごと聞かせてくれよな」
「手つないでくれたらね」
笑顔とともに差し出された手に
「……ん」
自分の手を重ねる。
じんわりと感じる
小春の体温にほっとする。
俺の方がよっぽど不安だったんだな
と 気づいて少し恥ずかしくなった。
「旺志郎」
「ん?」
「二人でくるまる毛布はないけどさ」
「こんなことになるとは
思ってなかったからな……」
「それでも私、旺志郎と一緒なら
悪い予感のかけらもないよ」
僕ら夢を見たのさ
「旺志郎はどう?」
とっても似た夢を
「不思議だな。俺も小春がいれば
大丈夫な気がしてる」
とっても幸せな夢を
image song / スローバラード
(作詞・作曲:忌野清志郎・みかん)
忌野清志郎さんは亡くなってから好きになって……というか、当時は10代で名前くらいしか知らなかったのに亡くなったことを知りショックを受けたことが今でも忘れられなくて……自分でも不思議なんだけれども。(後になって『野ブタ。をプロデュース』に出てたんだよな~と気づいたけど、何でなんだろ🤔?)
そして、今回は『スローバラード』の曲から物語を創作してみました。どうやら実話を基にした歌詞のようですね。
個人的には、奥様と結婚にいたった時のエピソードがとても好きですね🤭(『ぼくの好きな先生』も素敵な曲ですよね!)そして、改めてWikipediaを読み、忌野清志郎さんも晩年は咽頭癌で苦労されたんだな……と思い、その後の復活して歌をうたっている姿になんとなく励まされた私なのでした。
こちらの小説とつながりがあるような……?
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