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発達障害の理解に役立つ本のご紹介(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~


はじめに(チームより)

フローレンスは、親子を取り巻く社会課題の解決を目指しているNPOで、現在、約700名が所属しています。多様なメンバーの「働く」を支えているのがバックオフィス業務を主に担っている働き方革命事業部、通称「ハタカク」です。
ハタカクは人事、経理、法務、総務、といった業務で構成されていて、障害者雇用チームも含まれています。フローレンスの事業を裏で支えるハタカクメンバーの業務や仕事への思いをnoteに投稿しています。


認定NPO法人フローレンスの総務関連チームで障害者雇用のスタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。記事執筆の背景>>

フローレンスの障害者雇用についての視察や講演などの問い合わせは、 https://florence.or.jp/contact/ の取材・広報申込みフォームよりご連絡ください。


▼本日のお悩み
「発達障害の社員について理解を深めたいのですが、発達障害についてわかりやすく説明している本はありませんか?」

お仕事ハック①まずは、漫画(コミックエッセイ)を読もう

現在はジョブコーチをしていますが、10ヶ月前に障害者雇用チームに配属された頃は「知的障害はなんとなく理解出来るけど、発達障害はどんな障害なんだろう」という状態でした。

もちろん、「発達障害」と検索して出てくる基本的な情報としての「障害特性」などは知っていたものの、実際にサポートしていくなかで、障害のあるスタッフの気持ちや行動が理解できないことがありました。悩む中で様々な本を読みましたので、今回は番外編として「発達障害を理解するのに役立だった本」をご紹介していきます。

まず、発達障害についての書籍は沢山ありますが、入門編としておすすめなのは「発達障害の当事者が書いた漫画(コミックエッセイ)」の2冊です。

書籍「凸凹あるかな?わたし、発達障害と生きてきました」

書籍「おとなの発達障害かもしれない!?」

どちらの著者も大人になってから「発達障害」の診断を受けますが、子どもの頃からの違和感や辛かった経験の中から、「自分には障害があるのでは?」と気がつき、葛藤しながらも病院で検査を受け、発達障害だと診断され、受け入れていきます。

初めて「発達障害のある社員」と出会った時に「不得意なこと、出来ないこと」に目がいきがちです。ですが、この本を読み、発達障害のある人がどのような経験をして、現状をどう生きているのかを知ることで、「不得意なことや出来ないこと」の前に「何に興味を持ち、何が得意なのか」など、障害のあるなし以外の別の視点で接することができると思います。

私はこの本を読んでから、障害のあるスタッフを誰かに紹介する時には「スタッフの人となり」に興味をもってもらえるように「スタッフの趣味や好きなこと」も一緒にお伝えするようになりました。人となりを知ってもらうことで障害を超えて仲良くなってくれるような気がします。

お仕事ハック②発達障害の現状を知ろう

書籍「「発達障害」を生きる NHKスペシャル取材班」

この書籍はNHKスペシャルという番組の取材を元に書籍化されたものです。「発達障害」の特性から二次障害、当事者や医師、学校、職場、研究機関まで、あらゆる方面の事例や意見をまとめてあり、この1冊を読めば、発達障害の基本から現状まで包括的に見えてくる内容でした。

この本を読んだ後に、自分がどの立場から見た「発達障害」について興味があるのか、深掘りしていくのが良いと思います。私はこの本を読んでから、「発達障害を専門に診察している医師」に興味を持ち、医師が執筆している本やYouTubeを見ることが多くなりました。

職場で障害のある社員をサポートしていると「もっと頑張れるのでは?違う仕事も出来たほうがキャリアアップになるのでは?」と思いがちですが、医師は障害のある人の仕事だけでなく、生活面などトータルでの状態を見て診察しているので「仕事も生活も無理をせず、程よく生きる」ことを推奨する医師もいます。それを知ってからは、障害のあるスタッフの面談でも、本人のやりたい仕事を確認したり、現状維持でいたいのか、少しステップアップしたいのか、意志を丁寧に確認するようになりました。
そういった、自分とは違う立場で見た「発達障害」の考えを知ることでさらに理解が深まると思います。

ライフハック③発達障害のノウハウ本を読もう

書籍「発達障害サバイバルガイド」

障害のある社員をサポートしていて「この手順ではわからないんだ、どうやったらわかりやすく教えることができるんだろう」と悩んだ時にこの本が役立ちました。

筆者は「ADHD/注意欠如・多動症」と診断された当事者です。筆者があみだした、家事方法や睡眠方法、家での過ごし方などの生活環境や生活習慣をうまく回すコツが書かれています。

障害のある社員がどのように環境を整えれば動きやすくなるのかを知り、仕事のやり方や手順にも応用させることでサポートがしやすくなりました。

社内の様子が気になって業務が止まってしまわないように、仕事に集中できるような業務設計や執務環境を整えています。例えば、スケジュールが守れませんで書いたように、オンラインツールだけのスケジュール管理から見える化することなどの工夫をしています。

その他のおすすめ本

書籍「「能力」の生きづらさをほぐす」

これは発達障害の本ではありませんが、障害のある社員のサポートをしている方には、ぜひ読んでいただきたい本です。

私たちは能力社会を生きています。「リーダーシップ力、コミュニケーション力、生産性向上、タイパ(タイムパフォーマンス)…」など、当たり前のように求められています。
健常の社員にも得意不得意がありますが、障害のある社員には、得意不得意にプラスして特性もあります。平均化した「能力」という基準に合わせるのではなく、個々人の得意不得意や特性を組み合わせて、サポートしたり評価していく必要があるのだと考えさせられました。

例えば、同じミスを繰り返して(厳しく指導を受けて)きた社員でも、特性にあった業務環境を整えることでミスが減りました。個々人の得意不得意や特性に合わせたサポートをすることで、『能力』を発揮する可能性はいくらでもあります。

最後に

「発達障害」に関する本は、ネット検索すれば山程出てきますし、本屋さんにも多く並べられて、内容も学術的な本からコミックエッセイまで様々なものがあります。

ぜひ、「読みたい」と思ったものは出来るだけ読み、良かった本はバイブルとして本棚に残しておいてください。きっと、障害のある社員をサポートしていて悩んだ時に助けてくれることでしょう。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。


執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

▼過去記事一覧はこちら

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