斧を砥ぐことの価値
仕事では日々の忙しさに追われ、根本的な問題解決に手が回らないことがよくあります。
やらなきゃいけない大切なことがある。でも、日々の業務が忙しくて着手できない…このような問題を『樵のジレンマ』と呼びます。
昔々、樵が木を切っているところに、旅人が通りがかりました。
ある樵が、必死に木を切っていました。
そこへ通りがかった旅人が、
樵の斧は長く手入れがしてないようで、刃がボロボロです。
これでは切れるわけがありません。
旅人は見かねて「そんな斧では仕事ができなかろう。斧を砥いだほうがいいのでは?」と、樵に助言をしました。
すると樵は、答えました。
「そんなことは知ってるよ…でも、今日の仕事が一杯で、それどころじゃないんだ」
中長期で考えれば、未来への投資をするほうが正しいのに、短期視点では現在の作業に全リソースを投入せざるをえない。
いわゆるパラドックスの一種ですね。
斧を砥ぐ価値をゲームで考える
では、実際のところ斧を砥ぐことの価値は、どれほどのものなのか?
シンプルなゲームとしてモデル化して考えてみましょう。
プレイヤーは以下のルールで生産か訓練を行い、成果の最大化を求められます。どのようなプレイが最適でしょうか?
生産性ゲーム
・初期の能力値は100。
・仕事を1日すると、能力値分の成果が得られる
・訓練を1日すると、能力値が+1増える
・1年間の成果をはかる
一見すると、訓練はたいして意味がなさそうに見えます。訓練を1日やっても、100の能力が101になるだけです。
「だったら1日働いて、100の成果を出すほうがよい」。
直感的には、そういう風に見えます。では実際のところどうなのか、試してみましょう。
斧を砥ぐ価値
プレイヤーが365日ガムシャラに仕事をした場合、1年間の成果は36,500になります。
成果の計算式
成果 = (初期能力 + 訓練増加量 * 訓練日数) * (トータル日数 - 訓練日数)
ところが、ゲーム開始時にたった10日訓練するだけで、1年間の成果は39,050になります。
1ヶ月訓練を受けて11ヶ月働いた場合の成果は、43,550です。
さらに最初に6ヶ月訓練を受けて6ヵ月働いた場合には、なんと51,800の成果がでます。1年の半分しか働いていないのに!
グラフをかくとこんな感じ、1年限定の成果としては、4ヶ月ほど訓練をしてから8か月ほど働いたとき、成果が最大化されました。
1年間でこれほど差がでてしまう。より長期、たとえば5年10年の長さならば、成果の差はさらに極端になります。
これが斧を砥ぐことの価値です。
中長期の生産性は、今日の生産そのものより大事
そんなわけで生産性や能力に伸びしろがあり、中長期の成果を求められる場合、だいたいのケースでは「最初に斧を砥ぐ」ことが大きな力と意味を持ちます。
日々の仕事に追われてる…と感じるときは、いったん立ち止まって「斧を砥ぐ余地」がないかを考える。
たった1日手を止めて、マニュアルを作ったり、VBスクリプトを書いたり、チェックリストを作ったりするだけで、仕事の効率はビックリするほどあがる。
とても大事なことだし、楽になることなので、そういうスポットを見かけたら積極的にご相談ください。