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滅びの前のシャングリラ 凪良ゆう
【あらすじ】1か月後に小惑星が地球に衝突し、人類は滅亡する。滅亡を前にした世界で「人生をうまく生きられなかった」4人が見つけた光とは。明日死ねたら楽なのにと夢見ていた。なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている。学校でいじめを受ける友樹(ユウキ)、人を殺したヤクザの信士(シンジ)、恋人から逃げ出した静香(シズカ)。スターでありながら、追い詰められた自身の精神を危ういバランスで必死に保とうとするLoco(ロコ)。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
通常、起こりえないような設定の小説でした。だけど、登場人物の心情は、共感できるものや尊敬できるものがあって。どうなるの?どう思うの?どうするの?と夢中になって読み進めました。
滅びを目の前に、スーパーヒーローが地球を助けてくれるわけでも、どんでん返しが起こるわけでもありません。
クライマックスに向かって、登場人物のさえない人生が、急に光輝くわけでもありません。
着実に、滅びに向かっていきます。
だけど、気持ちは変わっていく。それぞれに想う、「幸せ」に本気で、手を伸ばしていく。
自分が滅びることが分かってしまったら。
それが1ヶ月後だとしたら。
滅亡はなくとも、人生の終わりというのは、「もし」でなく、必ずいつか、誰にとってもくるものですよね。人類滅亡でも、1ヶ月後でもないけど、いつか必ず迎えるもの。
架空の設定だけど、
「今の目の前を生きる」という意味では通ずるものがありました。フィクションだよなあ、とスルー出来ず、問いかけられるような、怖さすらありました。
また、この本には知らない言葉に出逢うおもしろさもありました。
例えば
朱昏い(あかぐらい)廊下にはぼくしかいない。
自分の矜持(きょうじ)を守っただけだろう。
ハンカチをくんくんと匂いだ(においだ)。
文章の前後を読めば意味は分かるし、漢字も難しいものではない。だけど、そう読むんだ!とか、そういう言い方もあるんだ!とか。「朱昏い」は情景が浮かびます。「矜持」は登場人物にピタッとはまる感覚がして、顔まで浮かんできそう。「匂いだ」は「嗅ぐ」とは違う印象を受ける。どの言葉も、活字を追っている私を、いつもとは違う風に楽しませてくれました。
私が言葉を知らないだけで、知ってる人もたくさんいるのだと思います。
でも、会話で使う様な言葉ではないはず。
これだけの聞いたことがない、様々な言葉で作られた文章に、作者が本に込めた熱を感じました。
こんなに色々な言葉や表現を、自分が使いたいように、使えるようになるまでには、多くの時間や手間がかけられていると想像します。
私の手元にある本は丁寧に、綴られたもの。読むのがもったいなくて、でも、もっと読みたくなる。そんな、価値あるものに思えました。本がただの本には見えない瞬間。
私もいつか、こんな風に文章が書けたら楽しいだろなと、わくわくしました。
また、別の本の話なのですが
今朝、「本を読む」ということに関して、胸がきゅっとする嬉しいことがでありました。
小学1,2年生くらいの、小さな女の子が本を読みながら通学路を歩いていました。小さな歩幅で歩きながら読んでる。危なっかしいけど、その夢中な姿が可愛くて!
そして、何を読んでるのかな、と目を配ると
——————あの本だ、、、!
私も数年前に読んだ、ある本でした。
大好きな小説で、今でも繰り返し読んでいるもの。
私が書いたわけではないけど笑
すごく、すごくすごく嬉しかった。
全く知らない小さな女の子に
突然話しかけるわけにはいきませんが、確実に友だちになれちゃうなあ!と思いました。
本を熱い気持ちで書いてくれる人がいて
それをいろんな思いで読んでいる人がいる。
その事実を感じることが出来て、心暖まりました。