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11月24日(日):不登校増加の背景にある教員の「数」と「質」の変化と構造的な課題

昨日は文部科学省の調査で不登校の小中学生が昨年度に過去最多の34万人に上ったことを取り上げ、関連のことを記しました。

本日もその続きをもう少しばかり。

そこでは不登校の低年齢化と長期化、それに付随して、いじめや暴力行為の件数も過去最多になっていることに触れたと思います。

これらの事象について日経新聞に掲載されていた立命館大学大学院 教職研究科の伊田教授の考察が参考になりました。

同教授は小中学校で不登校の増加が10年以上続いている背景には数と質の両面での教員の変化があると指摘し、そこには2つの構造的な理由があると示唆しています。

1つ目の観点として教員の世代交代をあげ、記事内では以下のように説明しています。

「教員の採用数は人口の増減に連動し、年齢構成に凹凸ができる。1980年代、第2次ベビーブーム世代が就学・進学するタイミングで大量採用された教員が2010年代半ば以降、続々と定年退職を迎えた。40代後半から50歳前後の層が薄くなり、20~30代の若手が一気に増えた。

昭和の時代、登校拒否(当時はこう呼ばれた)が著しく増え始めた80年代も若手教員が多く採用された。増加の手前にみられる極小期は74年度で、今回の不登校増加前の極小期である12年度との間隔はくしくも38年、新卒採用から60歳定年退職までの年数だ。どちらも教員組織の力量が下がりやすいタイミングだったといえるかもしれない。」

続く2つ目は量的な観点で教員不足の深刻化をあげ、次のような見解を示しています。

「全日本教職員組合の調べによると、24年5月時点の教員未配置は4千人を超え、現場教員の余力を奪い子どもの声にじっくり耳を傾けることを難しくしている。

例えば小学校の場合、特定教科の授業を担当する専科教員(時間講師など)を確保できないと、学級担任の時間割に空き時間ができない。

最近では、放課後すぐに退勤する短時間勤務適用の教員(育休明けの30代に多い)も学級担任にならざるをえない状況がある。放課後に同学年の教員が集まり、スクールカウンセラーなどの専門職と連携を図ることも非常に難しくなっている。

不登校児童生徒の直近の増加率は小学校低学年が中学校を上回る。中3はこの11年間で2.2倍に増えたのに対し、小1は9.7倍に増えた。そして、教員不足が最も深刻なのが小学校である。

学級が少人数になると教員の目が行き届きやすくなり、不登校は減ると思われるかもしれない。実際には、この35人学級化も教員需要を拡大し、教員不足を深刻化させる一因となって教員の多忙化を招いているおそれがある。」

その他、教員不足に拍車をかけている教員志望者の減少に触れています。

具体的にはこの10年で教員採用試験の女性の受験者数が半減し、受験者に占める女性比率が従来の6~7割から直近の23年度の受験者で4割を切った点をあげていました。

これら教員の世代交代と不足がもたらす状況を端的に示す数字として、昨日にも取り上げた不登校におけるいじめの事実把握の低さを指摘しています。
(不登校の小中学生のうち「いじめ」の事実が学校側に把握されているのは1.3%(4463件)にとどまる。)

この数字についての掘り下げとして、以下のように説明が続きます。

「いじめの有無について、不登校の児童生徒本人と保護者に聞いた別の文科省調査では、この数字は20~30%。つまり、不登校の背景要因かもしれないいじめに関する情報を、学校側は少なくとも公式には、ほとんど把握できていない。

いじめ防止対策推進法は、いじめが不登校の原因となった『疑いがある』時点で重大事態とみなして調査することを求めている。しかし、教員が不登校の本人や保護者の話を丁寧に聞くことすら難しくなっている。」

我が家は小中学生の子どもがいて、見聞きする学校の様子から察するに、説明されている点と重なる部分は大きいですね。

中堅どころの教師と新任教師のバランスや、新任教師の定着度合い、また若手教師がクラス運営を機能させられずに途中で担任が交代してしまうケースもありました。

先に説明されていたような構造的な背景をふまえると、このようになってしまうのも致し方ないと思えてきます。

構造に起因する問題であれば、やはり表面的な対策だけに終始するのではなく、構造そのものを転換していく必要はあるでしょうね。

例えば学校における外部専門人材の活用で、特別免許状や特別非常勤講師制度をこれまで以上に積極的に使い、教師の数と質の両面を補完していくことはひとつです。

また新任教師へのフォローが十分に行き渡っているとは言い難い状況は散見されるので、学校内や教育委員会でのフォローアップの仕組みをもう少し制度化するなど、こちらも現状の応募や採用倍率をふまえた育成の形をつくっていくのが望ましいと感じます。

当然ながら現場で奮闘して素晴らしい授業や指導をされている先生も存じ上げていますが、属人的な頑張りだけに委ねていては持ち直せないほどの構造的、制度的な課題があるから、そこは大きな転換が必要だと思います。

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