1月3日(水):書籍「疲労とはなにか」からの整理⑥
先週末からは12月に発売したばかりの書籍「疲労とはなにか(近藤一博著)」を取り上げながら、本書からの学びを自社の事業領域(フィットネスクラブ運営)に沿って整理を進めているところです。
前段としては「疲労感」と「疲労」の違いに触れ、疲労の程度は「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)」によって測定できること、そのうえで疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に区分されることを記しました。
次いで生理的疲労が体内の抹消の組織(臓器や筋肉)で炎症が生じた時に細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」が、血液脳関門の隙間を通り抜けたり、神経を通ったりして脳内に入ることで疲労を感じ、この炎症性サイトカインは統合的ストレス応答(ISR)によって産生され、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化である点に触れました。
それを受けて生理的疲労を回復させるための観点で、リン酸化したeIF2αからリン酸を取って脱リン酸化していくことが疲労回復につながり、脱リン酸化を担うリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素の産生を誘導するのが疲労であることから、軽い運動が疲労回復力を高める旨の説明をしたと思います。
そして大事になってくるのが疲労と疲労回復のバランスで、疲労回復力は「疲労回復指数=脱リン酸化の量(GADD34またはCReP)÷リン酸化の量(ATF3)」の式で表され、軽い運動は疲労感を減少させるのではなく、疲労回復力を高めることで生理的疲労そのものを減少させるほか、本当の意味で疲労回復をさせる栄養成分のことも紹介をしました。
これまでは生理的疲労にフォーカスをしてきましたが、今回から病的疲労の話に移っていきます。
改めて振り返ると生理的疲労は仕事や運動などで発生し、1日休めば回復するような短期的な疲労を指し、一方の病的疲労は、それが何ヶ月も続いて少々休んだぐらいでは回復しない疲労にあたります。
書籍内で病的疲労として取り上げられているのは慢性疲労症候群、うつ病、新型コロナ後遺症です。
生理的疲労と病的疲労においては共通する部分がある反面、異なる点もあり、それらは以下のように整理されています。
・疲労感の原因は脳が炎症性サイトカインにさらされることである(これは生理的疲労も病的疲労も同じ)
・脳が炎症性サイトカインにさらされる原因は次のとおりである
生理的疲労:抹消組織で産生される炎症性サイトカイン
病的疲労:脳内の炎症
・新型コロナ後遺症の脳内炎症の原因は、脳のコリン作動性抗炎症経路の障害である
一言でいえば生理的疲労と病的疲労の本質的な違いは脳内炎症が起きているかどうか、だといいます。
そして、その違いを生むのは脳の抗炎症機構が正常に働いているかどうか、ということでした。
この機能が正常に働いていれば労働や運動による疲労で炎症性サイトカインが大量に産生されても脳内炎症は起こらず、病的疲労にまでは至りません。
通常の風邪などで高熱が出ても、この機能が正常に働いていれば疲労感はすぐに回復し、病的疲労にはならないのだそうです。
まずはこうした生理的疲労と病的疲労の共通点と相違点を知り、生理的疲労が病的疲労へと移行していかないようにケアをしていくことが大事だろうと思います。