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詩)街の図書館にて

時間の経過した紙の臭い
色褪せた背表紙と貸出しラベル
棚に整然と並ぶ様々な書籍
人の息づかいさえ聞こえないほどに静まり返った館内とそこに漂う独特の緊張感
時計の針が鈍くカチリと響くだけの
静寂が支配する空間
言い表せない不快さにざわつきだす心
『怖い!』
声にならない叫びが心に響きわたる
恐怖に震える心にそっと語りかける
大丈夫、なにも心配はいらない
イジメという
かつて君を悩ませた人たちは
誰ひとり此処には居ないのだから、と

不快な過去の記憶、感情さえも
詩を書くために必要な材料(もの)
それでいいのだと
冬の冷たい空気を深く吸い込み紙の臭いの記憶を消していく







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