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DXの核心はカスタマーサクセス
このnoteは前回の続きです。僕らは顧客体験を磨くことでプロダクトの独自性・優位性を作ろうとしていて、その具体的な内容を前回のnoteでは書きました。このnoteがその続きで第4弾になります。
プロダクトの外にある「体験」
前回のnoteで書いた3つのキーとなる体験。これが僕らにとっての理想のUX。このUXを実現できるプロダクトになるよう開発を推進している。具体的な開発の進め方はこちら ↓
ただ、これはあくまでもプロダクトに閉じた話。ユーザが僕らのプロダクトを使ってどういう身体的・心理的な変化を感じるか。その変化の瞬間がやってくるタイミングは、何もサービスの利用中だけとは限らない。
プロダクトの使用前も使用後も、すべてが設計すべき「体験」になりうる。たとえば、使用前の商談、申込手続きだって立派な「体験」のひとつだ。
たかが自動応答、されど自動応答。
— かじ @ 魚類養殖のDX (@kaji_fish_dx) October 31, 2022
よくあるシーンのよくあるメール。地味で当たり前だけど、だからこそここで手を抜くと全てが台無しになる。
サービスだけじゃなくて、裏側のサポートやアプローチまで丁寧に設計することで、本当の意味でUXで尖ったサービスになれる。
使用後もそう。僕たちのサービスに記録をつけたり、グラフをつけたりしてくれたとしても、それで養殖業の日々の業務が完了するわけじゃない。むしろ記録もグラフも業務上における一通過点に過ぎない。今はサービスを使ってくれていない時間でも価値を提供できる瞬間が本当はあるかもしれない。
DXとは、業務プロセスの再定義である
たとえば、給餌記録。活用データを見れば、各業者の給餌記録をいつだれが付けているのかはすぐにわかる。そして、A社の給餌記録は2~3日に一度17時に社長が入れているっぽいぞ、ということが分かるとする。さて、あなたはどんな反応・行動をするだろうか。
そもそも活用データを見ない(これはさすがに残念すぎる)
入力頻度が落ちていないかをチェックする
活用する上での困りごとについて電話やメールで聞いてみる
いろいろ考え方はあると思うけど、僕はこのシーンにおいては「業務プロセスの改善提案を行う」というのが取るべき行動だと思っている。なぜなら、終業後に社長が一人でデータ入力しているということは、データ入力の作業自体がA社の社員に浸透していない可能性が高いと推測できるからだ。
そして、こういう状態はいくら活用されていたとしても、サービスとしては黄色信号を出すべきだ。なぜなら業務が属人化しているからだ。社長が病気になったり、忙しくなったり、飽きたりした瞬間にサービスがパッタリ使われなくなる。誰も代わりに使う人がいなければやがて忘れられ、そして解約される。業務プロセスの中に「当たり前」のように組み込まれない限り、本当の意味でBtoBの業務用SaaSが生産者の中で定着したとは言えない。
これまでは陸に戻ってから給餌記録を紙に書いていたかもしれない。でもタブレットで記録できる仕組みがあるなら、陸に戻るのを待つ必要はない。たとえばエサを自動給餌機に入れている時間。操船する人は手が空く。その人がエサを仕入れたこと、自動給餌機に投入したことを記録すればいい。
そうなると給餌記録の記録者は社長ではなく、操船者ごとになる。データが記録されるタイミングも2~3日に1回ではなく、毎日日中に数回になる。はたして、A社の業務プロセスは変わり、生産管理データの傾向も変わる。
プロダクトを通してユーザに「最高の体験」を届けきるためには、プロダクトが利用された瞬間だけではなく、業務フロー全体にまで視野を広く持っておかねばならない。
DXという言葉は流行り言葉なだけで、かなり定義の曖昧な言葉だ。「デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容していくこと」くらいの意味だと思っているけど、用いる技術もその先の変化も何も具体的に定義されていない。
養殖におけるDXについての僕なりの解釈は「デジタル技術を用いて、業務プロセスを再定義すること」だ。
現場での作業中にいつ誰がどう記録をつけるか
記録されたデータはいつ誰がどう分析するのか
分析されたデータを用いてどうPDCAを回すのか
新しい業務プロセスを導入し、同時にこれまでの業務プロセスを捨てる。人の行動をデザインし、文化を変える。それがDXだ。
カスタマーサクセスなしにDXは成立しない
そう考えると、いかにプロダクトがそれ単体だけでは効果を発揮しきれないかということに気づく。もちろんUXが磨かれた強いサービスを創ることはとても重要だ。だけど、それだけだとパズルのピースが足りない。
BtoBのSaaSにおいて単に自社が売上を上げるだけでなく、業界の標準的な業務プロセスまでをも変革(DX)しようとするのであれば、サービスの中だけの話をしていても仕方がない。
そういった背景の中で特に存在感が増すのが「カスタマーサクセス」だ。彼らの存在は業務プロセスを変革していく上でものすごく重要だ。2年間toCのカスタマーサクセスチームを引っ張っていた経験もあるので、その重要性は身に沁みている。
※カスタマーサクセスって何?
SaaSサービスの活用を促し、ユーザの目的達成を支援する仕事。具体的な仕事の一部を挙げるとこんな感じ。
● スムーズにサービスを使い始められるような初期導入支援
● 使い方に迷ったときのQA整備
● より効果的な使い方のレクチャー・コンサルティング
● プロダクトの活用状況を定点観測
カスタマーサクセスが大事なのは、開発するサービスのUXだけではなく、その先のストーリーまで含めた全体の体験を設計した方がサービスの良さを発揮しやすくなるからだ。「体験」やサービスの「価値」をより広い意味で捉える。
不具合やバグに対するクレームに都度都度対応しているのでは遅い。ユーザの困りごとに先回りして働きかけることで、ユーザのビジネスゴールの達成を支援する。プロダクトを愛してもらうことができれば、解約率が下がり、売上(LTV)が伸びる。リファラル(紹介)が生まれれば新規契約数も増える。
※LTVって何?
顧客生涯価値(Life Time Value:LTV)とは、ある顧客から生涯に渡って得られる利益のこと。
「カスタマーサクセス」の仕事は、UXデザインの考え方と本質的につながっている。プロダクトやサービスを通じてどんな体験を届けるか。その体験を実現するためにどんな支援ができるかを考えるのがカスタマーサクセスだからだ。
大抵の企業やサービスは「機能で競合優位性が作れる」と思っているわけだから、機能はある程度模倣される。知財である程度守りたいとは思っているけど、おそらく完全に防ぐことはできない。でもこのUXやカスタマーサクセス含めた全体の顧客体験(CX)は一朝一夕では真似できない。UXで尖るということはCXまで徹底的に考え抜くということだ。
※CXって何?
「Customer Experience(カスタマー・エクスペリエンス)」の略。ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験のこと。利用前後の体験も含めた顧客体験を指す。
続編あります!
このnote、実はもともと2.2万字ある超長編noteの一部。ようやく50%超えました。この後はカスタマーサクセスの話が続きます!
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