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見てよこの筋肉
ヒトの体を動かしているのは筋肉で、ヒトの体を支えているのは骨です。この理屈はみなさんご存知だとは思うのですが、これらがどのようにつながって、体を動かしているのかは実際に見たことはないはずです。今回は手羽先を使って、腕を動かした時に筋肉がどのように動くのかを観察する方法を紹介します。一応、先に注意しておきますが、鶏肉は危険な細菌が付いていることが多いです。作業するときは手袋の着用もしくはしっかり手洗いと消毒をお願いします。
なぜ手羽先
早速ですが、今すぐ近くの紙に、記憶を頼りにニワトリを描いてみてください。私は、授業時間に余裕ができた時にこれをやります。他にも、カマキリを書いてみて、イカを書いてみてなど記憶を頼りに描いてみようシリーズを行います。これを行うとその生物の特徴を誤って認識している場合、ミュータントが誕生します。
ちなみに、ニワトリを記憶を頼りに描かせた時によく起きる現象が、脚が4本あるということです。鳥類は爬虫類から進化しているので、脚は爬虫類と同じく4本です。ニワトリの脚も4本なのですが、前肢は翼になっています。つまり、脚が4本に翼があるニワトリを描いた場合、脚が2本多くなっていることになります。
翼はいわば前肢なのですが、この前肢はヒトでいうと腕になります。すなわち、手羽先(翼)と腕の働きは全く異なるものの、構造は全く同じになっているため、今回の観察では手羽先を観察して、ヒトの腕の筋肉と骨の構造の理解を深めます。このように、進化して形やはたらきは違うが,もともとは同じ器官であったと考えられるものを相同器官といいます。
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手順その1
まずは部位の説明をします。これまで、手羽先と言ってきましたが、正確には鶏手羽と言います。この手羽が3つの部位に分かれて、手羽の先端(ヒトで言えば手)の部分を手羽先と呼びます。筋肉の動きを観察するには、皮を剥がして手羽元と手羽中の筋肉が見えるようにしてください。その後、手羽先を動かすと筋肉が動く様子が見られます。手羽先を伸ばすとヒトでいう上腕二頭筋が伸長し、手羽先を曲げると上腕二頭筋が収縮するのが観察できます。また、皮をしっかりと剥がせば、上腕二頭筋が伸長した時に、上腕三頭筋が収縮しているのも確認できます。
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手順その2
筋肉の動きを観察したあとは、筋肉を骨から剥がしてみてください。すると関節のところに腱とよばれる白い筋を見つけることができます。これを引っ張ると筋肉が動くので筋肉が引っ張られる様子をみることができます。さらに、注意深く関節部分を外していくと軟骨などを回収できるのですが、小さい骨が大量に出てきて訳がわからなくなり、いつもここでギブアップしています。
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骨格標本
授業で扱う場合は、だいたいその2で終わるのですが、この観察には続きがあります。ちなみに、この続きは調理済みの手羽先や某フライドチキンチェーン店の食べた後に残った骨でもできます。残った骨で骨格標本をつくるのですが、方法は簡単です。骨を全てバラバラにして、骨に付着している肉と脂肪を全て取り除いたのち、木工用ボンドでつなげます。
注意点は2つです。1つは、先に述べたように関節部の骨がどのようにつながっているのか、後からではわかりません。動画や写真撮影をして、あとから見直せるようにしておくことをおすすめします。もう1つは、あとで腐らないようにしっかりと筋肉と脂肪を取り除くことです。まずは、使い終わった歯ブラシなどでしっかりと磨いてください。肉と脂肪を物理的に取り除いたのちは、化学的に取り除きます。メジャーな方法としては、ポリデントで酵素の力を用いることです。もし、アセトンなどの有機溶媒があれば、ポリデントと併用することで効果が上がります(混ぜないで下さい)。ただ、この化学的な除去には時間がかかります。少し想像していただけるとわかるのですが、ポリデントが超強力であれば、入れ歯がすぐにぼろぼろになっちゃいますよね。だからと言って、カビキラーのような酸やアルカリを使ってしまうと骨を溶かしてしまうので、気長に取り除いてください。
水に浸けても油や小さいチリのようなものが出てこなくなれば、ボンドで接合して完成になります。
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本当は、Christmas前に投稿したかったのですが、想像以上に筋肉と脂肪の除去に時間がかかりました。