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ゆがめられる教育~その4~
これまで、このNOTEの記事で3回にわたって、公教育が国や自治体の政治によってゆがめられてきたという実態や経緯について書いてきた。(「ゆがめられる教育~その1、2、3~」)
その最たるものが全国学力学習状況調査をはじめとする学力テストだろう。今回も『崩壊する日本の公教育 鈴木大裕 集英社新書(2024)』で述べられていることをもとにして少し書いてみたい。
【学力テストは政治介入】
2007年に全国学力学習状況調査が復活した。それは、2004年のPISA(国際学習到達度調査)で日本の成績が8位から14位に低下したことが社会問題となり、いわゆる「ゆとり教育」に見直しをかけようという動きがあったことに端を発している。
著者の鈴木氏は
『全国学力・学習調査』を純粋な学力調査と見るのはナイーブで、むしろ政治が教育に介入するためのツールと見る方が正しいのではないだろうか
と述べている。
本当に児童生徒の日常の学力を調査することが目的ならば、地域ごとに一部の生徒を抽出して調べれば十分なのだが、2007年の第一次安倍政権では77億円以上も経費をかけて悉皆調査を行った。この悉皆調査は民主党政権下で一時中止されたが、その後の第二次安倍政権下で再度悉皆調査に戻されてしまう。なぜか?
2014年、安倍政権は全国学力学習状況調査の結果を従来の自治体別だけではなく、学校別に開示できるように規制緩和を行った。
こうなると保護者の中には「自分の学校の成績を知りたい」「できるだけ成績のよい学校を選べるようにしてほしい」と国や自治体に求める者も出てくる。
これまで教育の中立性の原則から、なかなか教育問題に手を出せずにいた政治家が、77億円という税金に対する費用対効果という観点から、現場に「結果責任」を求めるようになってきたのである。
これ以降、全国の自治体は、全国学力テストの点数競争に翻弄されていくことになる。
この点数競争の渦に巻き込まれてしまった自治体の一つが、わがマチであることは、これまでのNOTEの記事で紹介してきた。
わがマチだけではなく、全国の多くの自治体と学校が数値の向上を目的としてテスト対策を行っているようだ。
テスト直前の過去問への取り組み、授業時間はもとより、夏休みなどの長期休暇まで補習授業を行ったり、春休みに(4月の調査に向けて)大量のドリル学習を課されたりする学校や、わが県のように自治体によっては、全国学力テストの模擬テストのような独自の学力テストを児童生徒に課すところもある。
日々の児童生徒の学力の定着度を測るための調査であるはずなのだが、授業をつぶしてまで入念なテスト対策を行えば、テストのための授業となってしまい、本末転倒も甚だしである。
国と自治体は、全国学力学習状況調査という”大義”を振りかざし、私たちが大切にしている一人一人の人間性を育てるための教育活動への介入をしてきていると考えるべきである。