聴き合う教室づくりのために⑤ 【聴き合えるペア・グループにするために~その3~テンションを上げないようにする~】
1年ほど前、大阪のある小学校の公開研究会で授業を拝見する機会があった。学年に3クラスほどあるような比較的規模の大きな学校で、全校挙げて学び合い(聴き合い)に取り組んでいる。
聴き合う声の大きさ
印象的だったのは、その時参観したどの教室にも共通した子どもたちの様子が見られたことである。
どの教室に伺っても、子どもたちはグループの仲間と額と額を突き合わせて、真剣に聴き合っている。その時の声がきわめて小さく、グループの他の子どもに向かってささやくように語っているのだ。
だから、参観者は、子どもたちが何を話しているのか興味津々で聞き取りたいと思っているのだけれど、子どもたちにかなり近づかないと聞きとることができない状況なのだ。
そんな小さな声であっても、子どもたちの間では、互いが何を言っているのか、何が言いたいのか意思疎通が十分にできている様子である。
そういう様子だから、各グループからは「ひそひそ」と互いに聴き合う声がするけれど、教室全体はきわめて静かな雰囲気の中で授業が進んでいく。担任の先生は、教師用のいすに腰掛けたまま、子どもたちの聴き合いに耳をそばだてているだけである。
聴き合いができる教室は
こうした聴き合う環境がいかにして創られていくのか。
学び合いを考え実践する際に私が手本としてきた石井順治先生(東海国語教育を学ぶ会顧問)
は、次のように述べておられる。
教室で学び合っている時の子どもたちの様子はどうだろうか?話す声があちらこちから響いてきて、騒々しい空気になってはいないだろうか。グループで誰かが話をしたら、他の仲間は全員話し手の語りに耳をそばだてるという聴き方になっているだろうか?話し手の言葉を遮らずに最後までじっくりと聴いているだろうか。語りたいけれど、言葉がなかなか出てこない子どもにグループの周りの子どもが離すチャンスを上げているだろうか。言葉に詰まった子どものことを言葉が出てくるまでじっくりと待つことができているだろうか。
聴き合いはおしゃべりではない。「何を言っているのかな」「それはどういうことかな」「どうしてそういうことを言ったのかな」「今の話は、誰の話とつながっているのかな」
そういう聴き方ができることが、一人一人が対話によって深い学びをすることにつながっていくと考えている。