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2024年度米国の食品安全・輸入関連制度について

2024年度米国の食品安全・輸入関連制度について(本文6,202文字)
 
 
独立行政法人日本貿易振興機構JETRO(Japan External Trade Organization)は、令和7年2月21日付にて「2024年度米国の食品安全・輸入関連制度の解説(第四版)(2025年2月)」を公開しました。
ここでは、米国の食品安全・輸入関連制度についての詳細な開設から特に重要な部分を抽出しまとめました。詳しい情報は<一次情報>からご確認ください。
 
 
<レポート概要>
米国の食品安全管理や輸入規制は、主に食品医薬品局(FDA)と農務省(USDA)が所管している。近年、食品安全や輸入制度の脆弱性が指摘され、特にFDAによる規制が強化されているところである。さらにバイオテロ法(2002年制定)により、食品関連施設の登録や輸入時の事前通知が義務付けられた。加えて、2011年に成立した食品安全強化法(FSMA)は、70年ぶりの抜本改革とされ、ヒト向け食品の危害予防管理規則(PCHF)などが導入された。日本企業はこれらの規制に対応する必要があり、ジェトロはそのサポートとして解説を提供している。
第1部 総論
米国の食品安全・輸入関連制度の概要を解説。食品安全・輸入制度を所管する省庁として、FDAとUSDAが挙げられる。FDAは、畜肉・家きん肉および卵製品以外の食品を所管し、USDAはこれらを所管する。また、FSMAにより、食品の製造・加工・保管に関する規制が強化されている。特定の食品には、残留農薬、食品添加物、着色料、食品表示、食品規格などの規制が適用される。さらに、トレーサビリティ確保のための規制や輸入食品に対する規制も存在する。
第2部 食品一般に関する規制
食品に共通して適用される規制、具体的には、適正製造規範(GMP)、残留農薬、動物用医薬品、食品添加物、着色料、食品表示に関する規制について説明。また、FSMAに基づく危害の未然予防管理、農産物安全基準、意図的な食品不良の防止に関する規制も説明されている。これらの規制は、食品の安全性と品質を確保するために重要である。
第3部 特定の食品に関する規制
植物・生鮮野菜・果実、畜肉・家きん肉・卵製品、水産物、ジュース、低酸性缶詰食品・酸性化食品、栄養補助食品、ボトル入り飲料水、二枚貝、アルコール飲料、乳児用調製乳に関する規制について説明。これらの規制は、食品の安全性を確保し、消費者を保護するために設けられている。
第4部 FDAによるトレーサビリティ確保のための規制
バイオテロ法に基づく食品関連施設の登録、食品輸入の事前通知、食品のトレーサビリティの確保のための記録保存義務について説明。これらの規制は、食品安全事故が発生した場合に流通経路を追跡し、汚染源を特定するために重要である。
第5部 FDAによる輸入食品に関する規制
食品安全強化法により、外国供給業者検証プログラム(FSVP)、輸入食品に対する証明書の要求、任意適格輸入業者プログラム(VQIP)、第三者監査人制度、試験所の認定制度といった輸入食品の安全性確保のための規制が新設された。これらの規制は、輸入食品の安全性を確保し、消費者を保護するために設けられている。
第6部 FDAによる輸入食品に対する取締り
食品の輸入許可の条件や輸入手続き、輸入食品に対するFDAによる取締りを説明。食品の輸入手続きは、FDAの規制によるものとUSDAの規制によるものがあるが、USDAが所管する食品の適用範囲は畜肉等に限られているため、ここではFDAの規制による手続きに焦点を合わせる。また輸入許可の条件、輸入警告、外国食品関連施設の査察、法令励行のための指導的措置・法的措置・手数料についても合わせて説明している。
 
 
<食品一般に関する規制(第2部)>
1. 適正製造規範(GMP)
・ GMPは、食品が不衛生な条件下で製造、梱包、保管されることを防ぐための規則である。2016年9月19日から新しいGMP規制(21CFR Part117 SubpartB)が義務化された。
・ 一般食品のGMPは、製造、梱包、保管における衛生管理の基準を定めている。特に、微生物危害やアレルゲンによる交差接触の防止が重要である。
2. 許容量・欠陥対策レベル
・ FDAは、食品に含まれる自然由来の欠陥に対する最大許容値を定めている。これにより、食品の安全性を確保し、法的措置の基準としている。
・ 一例として、冷凍ブロッコリーには100グラム中に平均して60匹以上の昆虫の死骸が含まれてはならない、と定められている。
3. 残留農薬に関する規制
・ EPAは、食品中の残留農薬の許容量を設定している。許容量を超える残留農薬を含む食品は規制違反とみなされる。
・ 残留農薬の監視と取締りは、FDAとUSDAのFSISが担当している。
4. 残留動物用医薬品に関する規制
・ 動物用医薬品の残留許容量は、連邦規則集21CFR Part556に定められている。許容量を超える食品は規制違反となる。
・ 養殖水産物に対して使用が認められている動物用医薬品は限られている。
5. 食品添加物に関する規制
・ 食品添加物は、FD&C法第409条に基づき規制されている。使用が許可されている食品添加物は連邦規則集21CFR Part172~180に列挙されている。
・ 新規の食品添加物を使用するためには、FDAの許可を受ける必要がある。
6. 着色料に関する規制
・ 食品着色料は、FD&C法第721条に基づき規制されている。使用が許可されている着色料は、連邦規則集21CFR Part70~82に定められている。
・ 新規着色料の使用には、FDAの承認が必要である。
7. 食品表示に関する規制
・ 食品表示は、FDAとUSDAが所管している。表示が必要な事項には、食品の名称、正味内容量、製造業者の名称と住所、原材料リスト、アレルゲン、栄養成分表、輸入品の原産国名が含まれる。
・ 栄養成分表表示は、2016年に改正され、2020年1月1日から新規制が適用されている。
 
 
<特定の食品に関する規制(第3部)>
1. 植物(食品関係)の輸入に関する規制
・ 植物検疫USDAのAPHISが植物防疫法に基づき、植物の病害虫の蔓延を防止するための規制を行っている。果実および野菜は原則として米国への輸入が禁止されており、病害虫の存在が認められない国・地域からの輸入に限って許可される。
・ 輸入許可乾燥、塩漬け、調理、または加工された果物および野菜は、USDAの許可なしに輸入可能。生鮮果物および野菜の輸入には、USDAの輸入許可が必要。
2. 動物・動物由来の加工品の輸入に関する規制
・ 動物検疫USDAのAPHISが動物検疫を管轄し、動物や動物由来の加工品の輸入には、APHISによる規制を順守する必要がある。
・ 食品安全管理家畜や家きん肉、およびその加工品の安全は、USDAのFSISが管轄している。
3. HACCPに関する規制
・ HACCP方式原料の入荷から製造・出荷までの全ての工程において危害を予測し、その危害を防止するためのプログラム。米国では、畜肉、家きん肉、水産物、ジュースに対してHACCP導入が義務付けられている。
4. 低酸性缶詰食品・酸性化食品に関する規制
・ 定義と規制低酸性缶詰食品は、pHが4.6より大きく、水分活性が0.85より大きい加工品。酸性化食品は、pHが4.6以下で、水分活性が0.85より大きい加工品。これらの食品は、FDAに製造工程に関する情報を提出し、承認を得る必要がある。
5. 栄養補助食品に関する規制
・ 定義と規制栄養補助食品は、食事を補完することを目的とする加工品であり、ビタミン、ミネラル、ハーブなどを含む。新栄養成分を含む栄養補助食品は、FDAに事前通知を提出しなければならない。
6. ボトル入り飲料水に関する規制
・ 定義と規制ボトル入り飲料水は、ヒトが消費するための水であり、安全で適切な殺菌剤以外の成分を添加してはならない。フレーバーウォーターや栄養添加水飲料も規制の対象となる。
7. 特定の水産物の輸入に関する規制
・ 二枚貝の輸入二枚貝は、全米貝類衛生プログラムに基づき、安全な海域で漁獲され、衛生的な方法で加工される必要がある。
・ 水産物輸入監視制度(SIMP)特定の水産物が米国に輸入される場合、輸入業者は漁獲情報や輸出証明書を提供し、記録を保持する義務がある。
8. アルコール飲料に関する規制
・ 定義と規制アルコール飲料は、FDAの規制に加え、TTBの規制を受ける。輸入業者は、TTBの輸入業許可を取得し、ラベル承認証明書を取得する必要がある。
9. 乳児用調製乳に関する規制
・ 定義と規制乳児用調製乳は、乳児の発育に必要な栄養素と安全性を保持していなければならない。FDAへの登録、栄養素含有条件、記録、リコール等について特別な要件が課されている。
 
 
<FDAによるトレーサビリティ確保のための規制(第4部)>
食品安全に関わる事故が発生した場合に、その流通経路を追跡し、汚染源を特定することが重要である。このトレーサビリティの確保を目的として、2002年に制定されたバイオテロ法と2011年に制定された食品安全強化法に基づく規制について解説されている。
1. 食品関連施設の登録
米国内でヒトや動物向け食品を製造、加工、梱包、保管する国内外の施設は、FDAに登録することが義務付けられている。登録はオンラインで行い、偶数年の10月1日から12月31日までに更新が必要である。登録内容には施設名、住所、食品の分類などで、米国外の施設は米国代理人を指定しなければならない。
2. 食品輸入の事前通知
輸入業者は、輸入する食品をFDAに事前に通知することが義務付けられている。事前通知は、輸送手段に応じて到着予定時間の2時間から8時間前までに行う必要がある。通知には、食品の詳細情報、製造業者、輸送会社などの情報。
3. 食品のトレーサビリティの確保のための記録保存義務
食品を輸入する者や米国内で製造、加工、梱包、保管する者は、直前の入手元および直後の受け渡し先を特定する記録を作成し、保存することが義務付けられている。記録は、食品の種類に応じて6ヶ月から2年間保存する必要がある。また、食品安全強化法に基づき、「高リスク」食品に指定される食品については、追加的な記録保存義務が課されている。
4. 高リスク食品に関する追加的な記録保存義務
FDAは「高リスク」食品を指定し、それらを製造、加工、梱包、保管する施設に対し、2年間の記録保存を義務付けている。対象となる食品には、特定のチーズ、ナッツバター、キュウリ、葉物野菜、トマト、メロン、スプラウト、特定の魚介類など。これらの食品を扱う施設は、食品の流通の要所で重要な情報要素を含む記録を作成し、FDAからの要請があれば24時間以内に提供する義務が課せられている。
 
このように、FDAによるトレーサビリティ確保のための規制は、食品の安全性を確保し、迅速に問題を特定・解決するための重要な手段である。
 
 
<FDAによる輸入食品に関する規制(第5部)>
食品安全強化法に基づき、外国供給業者検証プログラム(FSVP)、輸入食品に対する証明書の要求、任意適格輸入業者プログラム(VQIP)、第三者監査制度、試験所の認定制度など、輸入食品の安全性を確保するための規制がいくつか新設された。
1. 外国供給業者検証プログラム(FSVP)
輸入業者は、輸入食品の安全性を検証する義務を負う。FSVPの対象者は、米国入国時の食品の所有者や荷受人、またはその代理人である。適用除外となる食品は、水産物HACCP、ジュースHACCPプログラムの対象食品、低酸性缶詰食品、アルコール飲料など。輸入業者は、食品の安全性を検証するために、リスクに応じた検証活動を行う必要がある。具体的な検証方法には、現場監査、食品のサンプルテスト、供給業者の食品安全管理記録のレビューなどがある。
2. 輸入食品に対する証明書の要求
FDAは、輸入食品が規制に準拠していることを示す証明書やその他の保証証明を要求することができる。証明書は、原産国の政府機関や認定を受けた第三者監査人が発行する。証明書の形式には、船荷ごとの証明書や認可施設のリストなど。
3. 任意適格輸入業者プログラム(VQIP)
VQIPは、認定を受けた第三者監査人の証明を受けた食品関連施設から食品を輸入する業者に対し、輸入手続きを迅速化するプログラムである。参加するためには、輸入業者は適格基準を満たし、ユーザー料金を支払う必要がある。参加のメリットには、輸入手続きの迅速化やFDAの検査・サンプリングの限定がある。
4. 第三者監査制度
第三者監査制度は、食品輸入時の証明やVQIPに参加するために必要な証明を行うために創設された制度である。認定機関が第三者監査を実施する認証機関を認定し、認証機関は食品安全監査を実施し、証明書を発行する。認証機関は、利益相反を避けるため、監査対象の事業体と独立している必要がある。
5. 試験所の認定制度
食品の試験を行う試験所の認定プログラムが制定され、認定試験所による試験が義務付けられている。認定試験所は、FDAの基準を満たす必要があり、試験結果はFDAに直接送付される。認定試験所の試験結果が必要となる場合には、食品安全に関する特定の問題に対処するための試験や輸入許可を支持するための試験が要求される。
 
 
<FDAによる輸入食品に対する取締り(第6部)>
1. 食品の輸入許可・検査
1-1. 輸入許可の条件
・ 食品が非衛生的な条件下で製造・加工・梱包された場合
・ 生産国または輸出国で販売が禁止・制限されている場合
・ 食品が不良または不当表示と判断された場合
1-2. 食品通関手続・輸入検査の概要
・ 輸入業者はCBPに申請書を提出し、バイオテロ法に基づく事前通知を行う。
・ FDAは事前通知や輸入申請から情報を得て、検査の要否を判断する。
・ 検査が不要な場合、FDAは「通関可能」と通知する。
・ サンプル検査が必要な場合、FDAは「サンプル検査通知」を発行する。
・ 検査結果に基づき、輸入品が法令に違反していない場合は「リリース通知」、違反している場合は「拘留とヒアリングの実施通知」を行う。
1-3. 輸入警告(インポート・アラート)
・ FDAが規制に違反していると判断した食品に対し、物理検査なしで即時拘留する。
・ 輸入業者は、違反していないことを立証する権利を有する。
2. FDAによる外国食品関連施設の査察
2-1. 査察の事前通知
・ 米国内の施設は事前通知なしに査察が行われるが、外国施設は事前通知が行われる。
・ 査察を拒否した場合、当該施設の食品は米国への輸入が拒否される。
2-2. 査察への対応
・ 査察通知に回答し、査察の日程調整を行う。
・ FDA査察官が施設を訪れ、責任者とのミーティングや施設内の査察を実施する。
・ 不備が指摘された場合、速やかに修正し、重大な不備がある場合はFDA Form 483が発行される。
2-3. 査察の内容
・ FDA検査官は施設の操業状況や関係書類を査察し、食品安全計画の策定・実施状況を確認する。
3. 法令励行のための指導的措置・法的措置・手数料
3-1. 指導的措置
・ 警告書(Warning Letter)が重大な違反が認められた場合に発行され、是正計画の提出が求められる。
3-2. リコールに関する手続き・規制
・ リコールの分類は、クラスI(重大な健康危害)、クラスII(一時的な健康危害)、クラスIII(健康危害の可能性が低い)、の3つに分類される。
・ リコールの手続きは、FDAや州の衛生当局への通知、報道発表、リコールの効果の評価が必要である。
3-3. 法的措置
・ 行政による留置・・・ 不良または不当表示された食品を市場から排除するための措置。
・ 差し押さえ・・・ 違反食品を流通ルートから排除するための民事司法措置。
・ 差し止め命令・・・ 違反食品の州際取引を停止するための民事司法措置。
・ 刑事訴追・・・ 違法な食品を放置した場合に行われる刑事手続き。
・ 施設登録の一時停止・・・ 重大な健康危害があると判断された場合に施設の登録が一時停止される。
3-4. FDAによる手数料の徴収
・ 輸入食品の再検査、食品関連施設の再査察、強制的リコール、任意適格輸入業者プログラムへの参加に際して手数料が徴収される。
 
 
解説の詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
2024年度米国の食品安全・輸入関連制度の解説(第四版)(2025年2月)
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/02/9e6f39b5ec2a3d89.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2025/9e6f39b5ec2a3d89/202502.pdf
 
 

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