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完璧なゆで卵はここがすごかった
完璧なゆで卵はここがすごかった(本文2,078文字)
先日、イタリアの大学で「完璧なゆで卵」について報告がありました。一般ニュースでも取り上げられていたのですでにご存じの方も多いかと思いますが、簡単に研究報告をまとめてみました。
なお、このイタリア、フェデリコ2世ナポリ大学のE.Di Lorenzoらによる報告は、卵の茹で方の研究というよりも、実際の調理の場面にも適用できる条件検索の報告で、わかりやすい実用例として、「完璧なゆで卵」について言及しています。
<報告の概要>
卵を完璧にゆでるための新しい「周期的調理法」を提案する。卵を熱湯とぬるま湯に交互に浸けることで、卵白と卵黄をそれぞれ最適な温度で調理する新規調理法によって、卵白はしっかりと、そして卵黄はクリーミーな食感になる。
最適な調理条件は、数学的モデリングとシミュレーションを用いて、卵の中の熱の伝わり方を計算して決定した。この方法は、従来の方法よりも卵の食感や栄養を良くするだけでなく、調理時間も短縮できる。具体的には、卵を約2分間熱湯に浸け、その後ぬるま湯に浸けるというサイクルを32分間続けることで、理想的な食感と栄養を保つことができる。
さらに、この方法は料理だけでなく、他の分野にも応用できる可能性がある。例えば、新しい素材の開発、特に凝固・発泡のプロセスにも適用可能であり、新しい材料の開発が期待される。
この新しい調理法は、卵の調理における長年の課題を解決し、料理の世界に新しい可能性をもたらすものであると示唆された。
<作り方>
では、イタリアの研究者たちによって発見された「完璧なゆで卵」の作り方をご紹介します。「完璧なゆで卵」の作り方とは、卵を熱湯とぬるま湯に交互に浸けることで、卵白と卵黄をそれぞれ最適な温度で調理する方法です。下がその手順です。
1. 準備するもの
・ 鍋2つ
・ 約100℃の熱湯
・ 約30℃のぬるま湯
・ 卵数個
2. 手順
2-1. 鍋2つを用意し、一方には熱湯、もう一方にはぬるま湯を入れる。
2-2. 卵を熱湯に2分間浸ける。
2-3. 2分後、卵をぬるま湯に移し、再び2分間浸ける。
2-4. このサイクルを合計32分間繰り返す。
<「完璧なゆで卵」の新規性>
1. 何が違う?
従来のゆで卵の作り方は、一定の温度で一定時間ゆでる方法が一般的です。一方、「完璧なゆで卵」の作り方は、卵を熱湯とぬるま湯に交互に浸けることで、卵白と卵黄をそれぞれ最適な温度で調理します。
2. どのような効果がある?
この方法により、卵白は約85°Cでしっかりと固まり、卵黄は約65°Cでクリーミーな食感を保つことができるとされ、ゆで卵の食感が向上します。さらに、従来の方法よりも栄養が最適化され、調理時間も短縮されたとしています。
3. どのようなことが今後期待されるのか?
この新しい調理法は、料理だけでなく、材料科学や工学の分野にも応用できる可能性があります。例えば、新しい材料の開発や食品加工技術の向上が期待されます。
<研究成果と意義>
1. 発見・解明されたこと
1-1. 異なる温度での調理
卵白と卵黄を分離せずに、それぞれ最適な温度で調理する方法を発見しました。従来の調理法では、卵全体を同じ温度で調理するため、卵白と卵黄の理想的な調理温度を同時に達成することが難しかったです。しかし、この新しい「周期的調理法」では、卵を熱湯(約100℃)とぬるま湯(約30℃)に交互に浸けることで、卵白は約85℃、卵黄は約65℃で調理されます。この方法により、卵白はしっかりと固まり、卵黄はクリーミーな食感を保つことができます。これにより、卵の食感や栄養が最適化され、従来の調理法に比べて優れた結果が得られることが示されました。
1-2. 数学的モデリングとシミュレーション
数学的モデリングとシミュレーションを用いて、卵の中の熱の伝わり方を計算し、最適な調理条件を導き出すことに成功しました。具体的には、エネルギー伝達課題に周期境界条件を適用し、卵白と卵黄がそれぞれ最適な温度で調理されるように調整しました。これにより、卵の内部での熱の分布を正確に予測し、理想的な調理条件を見つけることに成功しています。このアプローチは、従来の経験則に基づく調理法とは異なり、科学的根拠に基づいた調理法を提供できると期待されます。
2. 今後の適用可能性
2-1. 料理の分野
卵の食感や栄養を最適化する新しい調理法として、料理の世界に新しい可能性が示唆されました。レストランや家庭での調理において、より美味しく、栄養価の高い卵料理を提供することができます。また、この方法は他の食材にも応用できる可能性があり、さまざまな料理の質を向上させることが期待されます。さらに、この調理法は、調理時間の短縮やエネルギー効率の向上にも寄与するため、持続可能な調理法としても注目されます。
2-2. 材料科学や工学の分野
料理だけでなく、材料科学や工学の分野にも応用できる可能性が期待されます。上述の新しい材料の開発のほかにも、食品加工技術の向上や新しい食品製品の開発に適用できると考えられます。また、この方法は、他の生物材料や工業材料の加工プロセスにも応用できるため、幅広い分野での革新が期待されるように、今後多岐にわたる分野での応用可能性が示唆されます。
<一次情報>
Periodic cooking of eggs
https://www.nature.com/articles/s44172-024-00334-w