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生レバーの喫食に注意

生レバーの喫食に注意(本文2,115文字)
 
 
報道によると、令和6年11月20日に大分県の食肉加工会社、株式会社Meフードシステムが基準を満たさない牛レバーを販売していた疑いで社長らが逮捕されました。この会社は、食品衛生法で定められた75度で1分以上の加熱基準を大幅に下回る温度で加熱していたとされています。昨年度には「生レバー」を加工食品として販売し、1億円以上の売り上げを記録していましたが、消費者の健康リスクが問題視されています。警察は食品衛生法違反の疑いで捜査を進めています。
 
生の牛レバーの喫食は、食品衛生法により禁止されています。牛レバーには腸管出血性大腸菌O157などが検出されることがあり、現在のところ安全に生で食べる方法がないためです。
 
改めて牛レバーの生食について関連情報をまとめます。
 
 
<背景>
1. 問題点
本件の問題点は、基準を満たさない加熱処理による販売です。
食品衛生法(昭和22年法律第233号)の第6条では、販売される食品は清潔で衛生的に処理されなければならないと規定されています。特に生食用の牛レバーについては、75度で1分以上の加熱が義務付けられています。この基準を満たさない加熱処理は、食品衛生法第13条に違反する行為です。
2. 食品衛生法改定に至る経緯
法改正の発端は、平成23年(2011年)に発生した焼肉チェーン店でのユッケによる食中毒事件とされます。この事件では、ユッケを食べた複数の客が食中毒を起こし、5人が死亡しました。この事態を受け、食品衛生法の改正が検討開始され、平成24年(2012年)7月1日から、牛のレバーを生食用として販売・提供することが禁止されました。
3. 改正内容
食品衛生法の改定により、牛レバーを生食用として販売・提供することが禁止されました。この改定は、食品衛生法第13条第2項に基づいています。
旧法: 生食用の牛レバーの販売・提供に関する明確な規制なし。
新法: 牛レバーを生食用として販売・提供することを禁止。牛レバーは中心部まで75度で1分以上の加熱を必要とする。違反した場合、食品衛生法に基づき罰則が適用される。

食品衛生法
第13条 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。

2 前項の規定により基準又は規格が定められたときは、その基準に合わない方法により食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、調理し、若しくは保存し、その基準に合わない方法による食品若しくは添加物を販売し、若しくは輸入し、又はその規格に合わない食品若しくは添加物を製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、若しくは販売してはならない。

これを受けるかたちで、政府は牛レバーを生食用として提供することを禁止し、中心部まで75度で1分以上の加熱を義務付けました。
 
表 畜肉の生食に関する規制

※筆者が関係情報をもとに作成



<違反の論点>
今回の事件では、製造者は牛レバーにハム様の加工をしています。加熱不十分により食品衛生法違反と判断された論点を整理します。
1. 当該品に施された低温加熱処理
当該品には、レバーの風味や食感を生かしつつ病原菌のリスクを低減することを目的に、低温での加熱処理がされています。具体的には、中心温度63度で30分間の加熱です。この加熱処理条件は、ハム特有の食感を保ちながら、一定の殺菌効果を得るために広く用いられています(※当該の牛レバーはハムではありません)。
2. 加熱不十分の論点
厚生労働省の基準では、牛レバーは中心部まで75度で1分以上の加熱が必要とされています。しかし、今回の事件では、基準を満たさない低温での加熱処理が行われていた疑いがあるとされています。
当該品に施されたとあれる低温加熱処理では、腸管出血性大腸菌などの病原菌が完全に死滅しない可能性があります。
 
 
<今後の展開>
操作が開始されたばかりですが、今後の展開は次のように予想されます。
1. 予想される処分
1-1. 罰金
食品衛生法違反により、罰金が科される可能性があります。具体的な金額は違反の程度や影響範囲によりますが、数百万円から数千万円に及ぶことがあります。
1-2. 業務停止命令
行政から業務停止命令が出される可能性があります。これは、一定期間、事業活動を停止する命令であるので、違反の重大性に応じて期間が決定されます。
1-3. 社長らの刑事罰
社長や関係者には、懲役または罰金の刑事罰が科される可能性があります。懲役刑の場合、数ヶ月から数年の実刑判決が下されることがあります。
2. 社会的影響
2-1. 消費者の信頼低下
食品安全に対する消費者の信頼が大きく損なわれる可能性があります。特に、ふるさと納税の返礼品として提供されていたため、全国的な影響が懸念されます。
2-2. 業界全体への影響
食肉加工業界全体に対する信頼が低下し、他の業者にも影響が及ぶ可能性があります。業界全体での品質管理や安全対策の強化が求められます。
2-3.法規制の強化
今回の事件を受けて、食品衛生法のさらなる改正や規制強化が検討される可能性があります。また、業界全体でのコンプライアンス意識が高まることも期待されます。
 
 
 
<一次情報>
【厚生労働省】牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syouhisya/110720/index.html
【厚生労働省】7月1日から牛のレバー(肝臓)の生食用としての販売・提供を禁止
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002e1r3.html
【厚生労働省】牛のレバーは、中までしっかり加熱してください
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002e1r3-att/2r9852000002e1sk.pdf
【Meフードシステム】さしみーと牛レバーハム 5食入り
https://www.mefoodsystem.jp/product/4
 
<参考情報>
【日本経済新聞】牛レバー基準満たさず販売か 大分の業者、容疑で逮捕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE208OM0Q4A121C2000000/
【FNNプライムオンライン】【独自】「生レバー」を加工食品として販売か食肉加工会社社長ら逮捕 昨年度1億円以上売り上げ 基準を大幅に下回る温度で加熱
https://nordot.app/1231907722647995113?c=724086615123804160
 

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