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第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会 概要

第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会 概要(本文3,343文字)
 
 
消費者庁は、令和7年2月4日に第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会を開催しました。本検討会は、食品ロス削減と食品安全性の確保の両立を目指し、食品期限表示の設定のためのガイドラインを令和6年度末を目途に見直すものです。第4回である今回は、ガイドラインの改正案などについて取り扱います。詳しくは<一次情報>からご確認ください。
 
 
<議題>
1. 「食品期限表示の設定のためのガイドライン」改正案について
2. その他
 
 
<ガイドライン見直しの方向性(案)>
1. 消費期限/賞味期限
消費期限と賞味期限は、食品表示基準に基づき設定する。従来の「5日」での振り分けを廃止し、季節や出荷先の気候に応じた温度管理が求められる。保存方法の具体的な表示も検討する。
2. 指標
具体的な試験項目は一律に記載せず、HACCPに基づき自ら指標の決定を促す。リステリア菌の危害要因を含め、商品温度を7度未満にすることが課題として記載する。
3. 安全係数
食品表示基準Q&Aにある「0.8以上」の目安を削除し、食品特性に応じた適切な安全係数の設定を促す。加圧加熱殺菌や塩分濃度が高い食品など、安全係数を設定する必要がなかった食品にも記載する。
4. 賞味期限を過ぎても「食べることができる期限」に関する情報
求められた場合は「食べることができる期限」に関する情報を開示し、食品ロス削減を促す。保存方法に従った食品の寄附や、賞味期限が切れても食べられることの社会的認識を高める表示を推奨する。
5. 情報の一覧性向上
ガイドラインをQ&Aの別添とし、期限表示に関する記載をガイドラインの後ろに移す。その他の通知や消費者向け啓発事項もガイドラインの後ろに移し、情報の一覧性を向上させる。
 
 
<これまでの検討会での意見>
1. 指標について
指標は食品の特性により異なるため、ガイドラインに具体的な値を盛り込むのは難しい。リステリア菌は0℃でも増殖でき、7℃を境に増殖速度が異なるため、食品の種類によっては増殖して発症菌量になる可能性がある。リステリア以外にもクロストリジウム属などの嫌気性菌も考慮する必要がある。指標の設定は業界ガイドラインに反映し、食品の特性に応じた指標を設けることが望ましい。
2. 安全係数について
食品表示基準Q&Aでは安全係数を「0.8以上を目安に」としているが、食品の特性に応じた対応が求められる。水分活性が低い食品やpHが低い食品は菌が増えにくいため、低い安全係数を適用する必要はない。一方で、現時点でハザードとして認識されていないものについては、安全係数の設定が重要である。海外の状況も参考にしつつ、安全係数の見直しが必要である。
3. 食べることができる期限について
「食べることができる期限」に関する情報の開示は、消費者の安心感を高めるために重要である。事業者はブランドや技術力を総合して品質の劣化する期限を設定しているが、消費者への啓発も必要である。賞味期限と消費期限の区別がついていない消費者が多いため、賞味期限を過ぎても食べられることを伝えることが食品ロスの削減につながる。小売業者の情報発信力も活用することが望ましい。
4. その他
消費期限の設定や低温管理の基準は日本独自のものであり、輸入・輸出業者が困難を感じることがある。ガイドラインやQ&Aがばらばらに出ているため、統一した考え方を示すことが望ましい。商品温度を低くすることはエネルギー消費にも影響するため、SDGsの観点からも留意が必要である。温度管理だけでなく、添加物など他の制御手段も組み合わせることが重要である。
 
図表1 これまでの検討会で示された意見


<概要>

1. 改正案の構成

■改正の背景、課題等については、「食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会」の取りまとめとして整理し、ガイドラインは別紙とする。
本ガイドラインをもとに業界ごとのガイドライン作成が望まれることや、将来的な検討課題である「温度帯(7℃未満での管理)」については、取りまとめの中に記載する。
■ガイドラインの後ろに、期限表示に関連する「食品表示基準Q&A」及び通知の内容を添付し、情報の一覧性を高める。
■本ガイドラインは、「食品表示基準Q&A」の別添として位置付ける。

【資料1】「食品期限表示の設定のためのガイドライン」改正案の構成 から抜粋

図表2 改正案の構成について

2. 検討会としての取りまとめ(案)
提案された取りまとめの要旨(【資料2】をもとに筆者が作成)は次の通り;
2-1. 背景、目的
食品期限表示の在り方については、令和5年12月22日に公表された「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」に基づき、平成17年に策定された「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を見直すことが示された。これを受け、消費者庁は令和6年5月に「食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会」を設置し、事業者の期限表示策定や食品ロス削減の実態調査を行い、科学的知見に基づく見直しを行った。
2-2. 現行の期限表示の課題と目指す方向
(1) 期限の設定を行う食品関連事業者等(表示責任者)
①定義に基づく「消費期限」又は「賞味期限」
食品表示法に基づく定義に従い、消費期限は安全性を欠くおそれがない期限、賞味期限は品質が保持される期限を示す。しかし、実態調査では「5日」で区別している事例が認められたため、定義に基づく期限設定の周知が必要である。
②食品の特性等に応じた指標
期限設定は食品の特性を考慮し、微生物試験や理化学試験を行う必要があるが、実態調査では一般的な衛生指標菌を用いて必要以上に短い期限設定をしている例があった。事業者が自ら必要な指標を選定することが求められる。
③安全係数
食品表示基準Q&Aでは安全係数を「0.8以上」としているが、実態調査では0.8未満に設定している例が多く見られた。安全係数は食品の特性に応じて設定し、安全性が担保されている食品には設定しないことが望ましい。
④賞味期限を過ぎても「食べることができる期限」
実態調査では、賞味期限を過ぎた食品の「食べることができる期限」を開示することが可能な事業者が多かった。消費者から求められた場合には、可能な範囲で情報提供に努めることが望ましい。
(2) 消費者
①「消費期限」と「賞味期限」の正しい理解
実態調査では、消費期限と賞味期限の用語についての理解が進んでいるが、一部で理解不足が見られた。用語の意味を正しく理解する必要がある。
②賞味期限を過ぎた食品の取扱い
賞味期限を過ぎた食品でも適切に保存されていれば食べられることを理解し、見た目や臭いで判断することが重要である。一方、消費期限を過ぎた食品は安全性を欠くおそれがあるため、食べてはいけない。
(3) 行政等
行政や事業者団体は、改正後のガイドラインの普及・啓発を行い、食品ロス削減と科学的知見に基づく期限設定を支援する必要がある。
(4) その他
①情報の一覧性の向上
期限表示に関する情報をまとめて一覧性を高める必要がある。
②将来的に検討が必要な課題
冷蔵保存温度の低温化や技術の活用による期限延長の検討が必要である。
 
3. ガイドライン(改正案)の公表に向けて
改正案の構成ならびに検討会としての取りまとめ(案)に基づき作成したガイドラインの改正案について、令和7年2月7日から3月6日までの1ヶ月間パブリックコメント(意見公募)を募集する。寄せられた意見を考慮した修正等を行い、第5回検討会での審議を経て、年度内に改正「食品期限表示の設定のためのガイドライン」として公表する予定である。
 
※詳しくは<一次情報>からご確認ください。
 
 
<配布資料>
【議事次第】第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_001.pdf
【資料1】「食品期限表示の設定のためのガイドライン」改正案の構成
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_002.pdf
【資料2】食品期限表示の設定のためのガイドライン見直し検討会 取りまとめ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_003.pdf
【資料3】食品期限表示の設定のためのガイドライン(改正案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_004.pdf
【資料4】ガイドライン改正に向けた今後のスケジュール
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_005.pdf
【参考資料1】「食品期限表示の設定のためのガイドライン」見直しの方向性(案)(第3回検討会資料6)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_006.pdf
【参考資料2】「食品期限表示の設定のためのガイドライン」検討会での委員の意見
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_007.pdf
【参考資料3】食品期限表示の設定のためのガイドライン
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250203_008.pdf
 
 
 
<一次情報>
第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会(2025年2月4日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_
第4回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_250124_001.pdf
食品表示基準Q&A(平成27年3月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_240401_212.pdf
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/foodlabeling/foodlabelingact/assets/foodlabelingcms20524083002.pdf
 
 
<関連情報>

 

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