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ユーミン(松任谷由実)のアルバム 全39作品をランク付けしてみた

○ユーミンに対する雑感

結論からいえば女性SSWの中なら間違いなく日本最高峰でしょう。なんなら世界で見てもあれだけ社会的な影響力を持ちつつと巨大な才能を発揮した存在はユーミン以外いないと思ってます。(前者だけならテイラー、後者だけならジョニ・ミッチェルなどといった例もありますが。)
もう少し作曲家としての能力を分析すると、まずメロディーメイカーとしてなら筒美京平、桑田佳祐と並ぶ天才でしょうね。やっぱり半世紀に渡ってあれだけの作品を出して売れ続けるのはちょっと異常ですよ。確かに最近はヒットナンバーも見受けられないですが、それでもCMソング・タイアップ曲レベルならいくらでも作り出せるレベルではあります。
それで、歌詞に関してはいわゆる「女性目線の歌詞のパイオニア」という点で非常に評価に値すべきものがありますね。男女平等が叫ばれている現代から遡って40年以上前…そもそも女性ミュージシャン自体非常に少なかった時代に、あれだけ洒落た歌詞を作れるのは、まさに革新的だと思います。
それは後述するバブル時代における恋愛至上主義的な側面とマッチしていくわけなんですが…。

さてここからユーミンの作風の変遷をざっと振り返ってみます。

非常にキャリアが長い彼女ですが、結論から言うと荒井由実期が最強なわけです。まあこれは世間一般の評価も多分同じでしょう。「ひこうき雲」「優しさに包まれたなら」「卒業写真」「ルージュの伝言」「中央フリーウェイ」といった今でも歌い継がれてるナンバーもこの時期に集中していますね。アルバムだってこの時代がぶっちぎりで完成度高いんですよね。「ひこうき雲」〜「14番目の月」までの四作は、同時代で比較すると、かのスティービーワンダーやデヴィット・ボウイの諸作に充分匹敵するんじゃねと思ってます。
しかも当時の邦楽シーンといえば歌謡全盛の時代。そんな中フォークでも何でも無い、ニューミュージックのアーティストが支持されたという事実は、紛れもなく彼女の楽曲の請求力が高さを証明するものなんじゃないでしょうか。

ただここまで才能を発揮し切ってしまうと、次からハードルを超えるのが中々難しいんですよね。なので、松任谷由美に改名してから80年代までの活動は言ってしまえば「荒井由実からの脱却」が至上命題であったようにも思えます。特に78〜83年まで半年に一枚ペースでアルバムを出していく訳ですよ。これって凄くないですか!?単に量産するだけでなくしっかり質を維持しつつ、なんならツアーをこなしながら制作してるんですからね?ハードワーカーぶりが凄いと思います。

ライブでも本物の象を登場させるなど話題作りを欠かさなかった


そしてあまり最近語られてない80年代後半について。セールスや社会的な影響力といった点ではここが間違いなくユーミンの全盛期ですね。当時バブルによる景気上昇を背景にして国民の生活が豊かになればなるほど、彼女の詩への共感と憧憬が集まっていくんですよ。「俺もクリスマスは彼女と過ごさなきゃ」「私もあんな恋愛がしたいな」といった具合に。

日テレのクリスマス特番のテーマソングを桑田佳祐と共同制作した時のライブ
まだテレビに金があった時代の奇跡のコラボである


そして彼女もそれに応えるかのごとく恋愛至上主義を全面に打ち出していくんです。なんなら今流行りのシンクラヴィアも導入しよう!そうしてどんどん膨れあがっていったプロジェクトは、しまいには雑誌、ポスター、テレビCM、ラジオCMで宣伝しまくるという異例の規模のプロモーションを行ったらしい。もはやここまで行くと「一人広告代理店」状態で、今のソニーや電通がやるようなことを彼女一人が行っていた訳ですよね。同じく「時代の寵児」として祭り上げられたアーティストに、カート・コバーンという男がいますが、カリスマとして祭り上げられる自分と本来の自分の間で葛藤し、ついには自らの手で命に終止符を打ってしまう訳ですよ。そんな悲劇的な彼の生涯に対し、ユーミンの場合これでもかってくらい時代の波に乗ってますね笑。やっぱこの人、フットワーク軽すぎるんだよなぁ。

そして90年代以降、バブル終焉の流れをいち早く汲み取り音楽性を深化させて行くんですね。いわゆる円熟期ってやつですよ。やっぱこういう嗅覚が流石だなというか、伊達に邦楽シーンの第一線で活躍してるのではないと思わされます。んでそれ以降の特徴はクラブミュージックやワールドミュージックに接近したり、過去のアプローチを焼き回したりといった感じでしょうか。上手く大御所アーティストとしてのポジションに収まったと思います。

改めて振り返るとやっぱり彼女の業績って日本社会とJPOPの確立に大きな影響を与えていたんだなってのが分かるし、時代への嗅覚と適応力とにめちゃくちゃ長けていたんだなってことが分かります。
余談ですが、巷で「日本でヒップホップが流行らないのはダウンタウンのせい説」という面白い定説がありますが、俺に言わせれば「日本でフェミニズムがいまいち活発にならないのはユーミンのせい説」「クリぼっちという言葉が生まれたのはユーミンのせい説」も充分説得力ありそうな気がします。

あと最後に言及しておきたいのがプロデューサーの松任谷正隆についてです。

もはやユーミン専属プロデューサーになっている彼ですが、やっぱ彼の仕事ぶりは凄いですよ。アルバムを全部聴いて分かったんですが天才・ユーミンであってもちょっとしっくり来ないメロディーだなぁって時があるんですよ。(特に90年代以降)そういう時の彼のアレンジってやはり凄くて80点の曲が90点にまで上げられる訳です。これでアルバムの構成力がぐっと引き立つんですね。しかも音楽的な感覚が凄く若くて、50歳を迎えてもまだ海外でトレンドになっている音を取り入れているんですよ?こういうところもっと評価してもいいような気がします。

さて、ざっとおさらいしたところでランキングを見ていきましょう!

第39位 LOVE WARS (21st,1989)

さすがに言い訳できないくらい駄作。全体的にアレンジもメロディーも陳腐な上に、そもそもアイデアが枯渇してね?と感じるくらい似通った大味バラードが散見してます。それでもANNIVERSARYという大名曲でラストを飾るのでそこは救いかな。

第38位 そしてもう一度夢見るだろう (35th,2009)

タンゴだったりニュージャックスウィングだったりに寄ることで新境地を見出そうとしてるのは分かるんですけど、これがいかんせん空振りしてんだよんなぁ。音楽的な感覚は夫妻ともに若いんですけど、結局大御所のJPOPの枠をはみ出てないのが残念なポイントなんですよね。結果次作「Road show」の下位互換になってしまった。


第37位 スコアの波 (29th,1997)

ハウスっぽかったり、大味バラードだったりとバブル期をずるずる引きずっていて、いよいよ絶不調だなといったところでしょうか。ここまでハイペースで曲を量産してきたからしゃーないのは分かるんだけど、いかんせん’あの’ユーミンの曲がパットしないってのは悲しくなるよなぁ、、

第36位 TEARS AND REASONS (24th,1992)

新たな境地を模索するつもりのはずが結局迷走してしまったなって印象。DAWN PURPLEで見せた攻めた作風を突っ切らずに守りに入ってしまったのが失敗作となった要因だろう。それでいて王道バラードに寄せることもなくファンキーなギターやクラブミュージックだったり、別に入れなくてもよくね?って思うようなへんてこりんなアレンジを強引に入れてくるので、中途半端だなぁという感想しか出てこなかった。ユーミンに加え正隆さんまでもサウンドに迷いが出始めたのか?

第35位 OLIVE  (7th,1979)

歌謡曲要素と荒井由実要素が混在していて中途半端な作品です。当然っちゃ当然なのですが半年に1枚も出してるならそりゃ1曲ごとのアイデアの質が薄くなりますわな。それを埋め合わせるために無理やり提供曲をセルフカバーした結果、はっきり言って地味ぃなアルバムに。もちろん「青いエアメイル」とか良曲は散見してるんですけどね。

第34位 Cowgirl Dreamin' (28th,1997)

ここに来てついにアイデアが尽きたのか、思いっきり過去の焼き回しになっていてつまらない内容になっています…。先進性も懐かしみも感じられないですが、ここは正隆シェフの腕が冴え渡ってなんとか曲のクオリティはまずまずに抑えられている。そんな一枚です。

第33位 DAWN PURPLE (23rd,1991)

「天国のドア」と同様に、今作もスピリチュアル要素多めでパーソナルな内容にまとめられています。
ただ最初ハウスミュージックって方向で行くのか!?と期待させておきながら蓋を開けてみればメロウな曲調が多めの内容となっているのはちょっとガッカリかな。おそらくマンネリを防ぐために新境地を模索し始めてる段階なんだろうけど、今回は恐る恐る一歩目を踏み出せた段階のアルバムという感じかね。
もしかしたらただ年齢のせいで落ち着き始めただけかもしれんが。
要はバブル期からワールド・ミュージック期への架け橋的なアルバムと思っていただきたい。

第32位 viva6×7  (33rd,2004)

「Wings of Winter, Shades of Summer」の作風をさらに拡張してシティポップを始めとして全体的にアーバンな質感に仕上がってますが、その一方でレトロな曲もあるんで世界観がいまいち掴めないんですよねぇ。あと正隆さんの編曲と素材としてのユーミンの曲が上手く噛み合ってない気がするしね。

第31位 天国のドア (22nd,1990)

相変わらずバブル期は音の情報量は多くて聴き疲れるんですが、歌詞のテーマが都会の恋愛から次第にスピリチュアルや社会問題の要素が顕著になり始めますね。
当然、説明的だし固有名詞も多用しているんだけど、どこか漠然としている世界観は個人的に癖になってしまった。「ホタルと流れ星」「SAVE OUR SHIP」なんかは当時の海外のR&Bと比べても遜色ないサウンドで素敵。というわけでポテンシャルは感じさせるので、ぜひとも正隆さんにremixしてもらいたいものだ。

第30位 KATUMANDU (27th,1995)

はっきり言って趣味全開のアルバム。ワールドミュージックを貪欲に取り入れた全力で新規リスナーを突き放すようなキッレキレの内容なので、ユーミンの前衛的な側面を知りたい人なら結構おすすめ。
中東の雰囲気を再現するためにマンドリンを使用してるのも面白いポイントだし、それに加えてアシッドハウスを取り込んだ曲も収録されている。
かと思えばバート・バカラック リスペクトの「walk on,walk on by」なども聴けてなんとも奇妙でアグレッシブな作品。

第29位 FROZEN ROSES (30th,1999)

ここに来て声の劣化がごまかしきれないレベルに達してしまってますね。しかもあれだけ時代の波を乗りこなしてきた松任谷夫婦がこんだけへんてこりんな曲を出しまくるもんだから、聴いててカオス感がはんぱない。
というかユーミンレベルのキャリアを経るとレジェンドのポジションにうまく収まって保守的な作品を出すのが普通(桑田佳祐のようにね)なのに、それらを捨て去るように次々と新しいアレンジに手を伸ばすのははっきりいってイタいを通り越して狂気だと思います。駄作だとは思いますが、一聴の価値は全然ありますね。

第28位 ダイヤモンドダストが消えぬ間に  (19th,1987)

今作からシンクラヴィアを導入したことで、ついにアナログの持っていた暖かみが完全に失われ硬質な打ち込みサウンドになってしまった!皆さんお待ちかねバブルあへあへ状態のユーミンが見れますな!
予想通りここぞとばかりに初っ端からサンプラーの音を入れてきて、勘弁してくれ…ってなってしまいますよホント。
それに加えユーミンらしさであった素朴な恋心が捨てられ大味バラードとパワフルなロックナンバーが詰め込まれていて、あの素朴な恋心を歌ってたかつての姿はどこにもありません…。

とまあここまでボロクソに言ってしまいましたが、腐ってもユーミンなんでまあ聴けるなという仕上がりにはなっています。


第27位 流線型'80 (6th,1978)

前作の「紅雀」の作風から一転。歌謡曲と当時のAORの中間辺りを走るややポップな作品に。ヒットナンバーの「埠頭を渡る風」なんかは完全に歌謡曲のそれですよね。振り返って聴くと荒井由実期からシティポップ期に至るまでの意外に重要なマイルストーンだったりします。その証拠として歌詞にサーフィンや入江などリゾート要素がちらほら出てきているんですよ。「魔法のくすり」なんかはユーミンの恋愛至上的な側面を象徴した楽曲だしね。
とツラツラ語りましたが、結局このアルバムを聴くぐらいだったら荒井由実聴けばいいじゃんとついつい考えてしまいます。

第26位 DA・DI・DA (17th,1985)

ここから段々ときらびやかなサウンドになっていきます。シンセサイザーにしろキックの音にしろ力強い上に、JPOPにありがちな足し算的な構造が顕著に見えだす時期でもあるので、アルバムの聴き疲れが生じてしまいがちなんですよ。でもだからといって曲ごとにしっかりとしたギミックがありますし、決して妥協している作品ではないことだけは確かですね。あとここから急に俺の知ってる松任谷由実の声になってくるし、やっぱこの作品の前と後じゃ世界観がかなり変わってると実感できます。

第25位 Wings of Winter, Shades of Summer  (32nd,2002)

どうやらSURF & SNOWの続編としてリリースしたらしいんですけど、無理にポップ路線に寄せずに郷愁を全面に押し出してるんですよ。それがこの年齢になったユーミンにしか出せない味わいで非常に良きです。それに今回はバンドサウンドを多用してることで、これまでの諸作より躍動感が増してますしね。ただ7曲しか収録されてないのがどうしてもネック。それに曲の強度も少し弱いしなぁ〜。

第24位 水の中のASIAへ (11th,1981)

ミニアルバムだからといって舐めてはいけません。気合を入れすぎずうまい具合に肩の力が抜けた状態で録った作品だからなのか4曲全てちゃんとした世界観が構築されていて歌詞も申し分ない出来です。この頃のユーミンのソングライティングがいかに充実していたかがわかります。溢れるぬくもりは次回作に繋がっていきますね。

第23位 delight light slight kiss (20th,1988)

前作のヒットで乗りに乗ったユーミンはさらにバブリーなサウンドに舵を切ってしまいますね。失われた30年を経た今の時代の耳で聴くと想像もつかないくらい弾けたサウンドだし、チャゲアスと同様この頃のユーミンの作品は一部黒歴史のような扱いになってしまっているが、当時はスキー映画の大ヒットの煽りも受けてか、当時最速ミリオンセラーを記録し年間アルバムチャート一位を記録。(ちなみにこれが三年間続く)。
上記で述べたとおり、もはやここまで売れると毎年アルバムをリリースすることが音楽界の一大行事のようになっていたらしい。「商品」としては大成功といった具合だが、とかく作品としての質は下がる一方…。
でもあまりに吹っ切れてる作風なので、これはこれでありかもと思ってしまいました。それに万が一80's後半リバイバルが起きたときバブル期を象徴する最重要資料になりうるポテンシャルを感じさせたので期待も入り混じってこの順位に。


第22位 VOYAGER (15th,1983)

前作「REINCARNATION」が攻めた作風だっただけに、今作はまた一転してありがちなシティポップに終始してしまっています。まあアレンジは充実しているし駄作ではないけど、ベタな印象をもってしまうんですよ。後、ここまでアルバム・マラソンをしていると”ユーミンが良い曲を作るのは当たり前”と勝手に耳がハードルを高く上げてしまい、どうしても「ダンデライオン」や「時をかける少女」などの人気曲が来ても大して感動しないという厄介な現象が起きてしまいがちなんですよ。なのである程度時間を置いてから聴くともっと評価が上がるかも。

第21位 時のないホテル (9th,1980)

これはユーミンの詩才が存分に発揮されたファンの間でも人気の作品ですね。戦争や病などの暗いテーマを扱いながらも少女から老婆まで主人公の心情を巧みにつづる楽曲群は職業作曲家としても一流だといわしめる内容です。
ただ曲自体は平均以上のクオリティは保ってるものの、ありがちなギターサウンドに終始しているのがなんだかなぁといった印象。よってこの順位に。

第20位 深海の街 (39th,2020)

前作から引き続き、コロナによるロックダウンの影響もあっていつにも増して内省的な作風なんだろうなと期待して聴いたのだが蓋を開けてみれば中盤辺りからいつものユーミンのアルバムと変わらない内容でちょっとガッカリしてしまった。とはいえ期待値が高すぎただけでアルバム本来の完成度はしっかりしたものである。

第19位 road show (36th,2011)

従来のアプローチをなぞりながらも、しっかり「ひとつの恋が終るとき」や「ダンスのように抱き寄せたい」などの往年の切れ味を感じさせる心地よい佳曲も収録されていて、だいぶソングライティングの勘を取り戻していってるなって感じが漂ってる作品。ジャケットも含めて今のユーミンのパブリックイメージを表してるともいえる。

第18位 NO SIDE (16th,1984)

AOR〜シティポップ〜テクノポップといったジャンルを縦横無尽にかける圧巻の一枚。半年に一枚だったペースを年に一枚ペースに絞ったことで曲の強度がわずかに上がったように思えます。ノーサイド、DOWNTOWN BOY、BRIZZERDなどといった名ナンバーもきちっと収録されていて、まさに80年代前半のユーミンの総決算的な内容ですね。
じゃあなぜこの順位なんだ!?とそこのあなた疑問に思いましたね?
確かに内容が内容なので聴く前はかなり期待値高かったのですが全体的に過度なシンセサイザーで飾られていて、ハイカロリー感は否めないですよやっぱ。なんなら前半にインパクトあるナンバーを続けたせいでアルバムが按配な感じに思えてしまって…。ゆっても想像を超えてくるものではないよなっていう。なので巷の評価より低めにつけてしまいました。すんません。

第17位 SURF &SNOW (10th,1980)

時代の波に乗るため、素朴でナイーブな恋心を綴るシンガーソングライターというイメージをかなぐり捨てたかったのか、強引にポップ路線にシフトした結果がこれです…。聴いてもらえれば分かると思いますけどこれまでのシックなメロディラインが埋もれてしまってますね。特に今作は「サーフィン!スキー!リゾート!」っていう明確なコンセプトを持ってるので、オールディーズを意識した耳障りの大変いい曲で並べられてはいます。
個人的にこういう能天気な作風は結構受け入れられるんですけど、やっぱり「恋人はサンタクロース」が別格過ぎてどうしても他の曲の印象が薄れてしまってるのが勿体ないかな。それにこの時代のポップアルバムならもっといい作品あるしね。あぁ無念。

第16位 POP CLASSICO (37th,2013)

かなりお気に入りの作品。素材の良さを最大限に生かしたアレンジが当時還暦間近のユーミンの溢れ出る創作意欲をうまぁ〜くパッケージ出来てるんですよね。あと「early springtime」や「夜明けの雲」なんかはもっと評価されるべき曲だと信じてます。要は美メロと爽やかなアレンジを堪能できるってわけですよ。
あと…失礼を承知で申し上げますと…ただ一つ文句を言うとすると…中盤がどうしても弱く感じられる!!(←何回最後は文句で締めるんだよお前)

第15位 紅雀 (5th,1978)

正隆さんと無事に結ばれ、こっから半年に一枚ペースでアルバムを出していく量産型体制に入ります。そんな新たなスタートを切った割にかな〜り内省的な作風になっていますね。曲は荒井由実路線を堅実に固めつつ、ジャズやラテンとかにも手を伸ばしてますね。もちろん荒井由実時代から連綿と続くような伸び伸びとした歌唱が見られる作品でもあります。曲ごとの完成度はかなり高水準なのですが作風がバラバラでどっちつかずになってしまったのが勿体ないかな。

第14位 acasia (31st,2001)

40代のユーミンのはっちゃけぶり(正隆さんのアレンジがはっちゃけてるだけなのか…?)はちょっと異常で、世間をことごとく突き放すかのような狂気性を孕んでます。その中でもこの作品は80年代のユーミンに匹敵する豊富なアイデアとメロディーを内包している一枚です。
というか純粋に良い曲が多くて自分のツボにどストレートにハマりました。mi-fioを客演に迎えたりと今まで取り組んできたクラブミュージック要素もしっかり引き継ぎつつ、静と動をうまく使い分けた全体構成は充分傑作と言えよう。

第13位 宇宙図書館 (38th,2016)

この作品がリリースされたのは2016年で、まさにサブスクが台頭し始め音楽市場が急激に変化した年だ。そうした背景もあってか内省的な歌詞も見受けられるが、それでも愛を希求する普遍的な姿勢を貫いたドラマティックな作品です。
3年のブランクもあってか割とゆとりを持って制作されたので、緩急がしっかりつけられた飽きさせない構成となってます。 後、ついつい安っぽくなりがちなシンセサイザーやストリングスを多用しても尚、新鮮な解釈を与えている。ここはGOH-HOTODAのミキシング参加が大きな影響を与えているのでしょうね。
とにかく壮大なサウンドスケープを味わいたい方にはおすすめな、独創性と普遍性を高いレベルで両立した快作です。
あと余談だが「星になったふたり」はEDMやvaporwaveへの彼女(もしかすると正隆さんかも)なりの回答なのか、それともただのお遊び感覚で作られたのか知りたい…


第12位 PEARL PEACE (13th,1982)

「昨晩お会いしましょう」に引き続きアレンジも素晴らしいし、なんなら全カタログの中でも抜群に洒落た一枚なんじゃないかな。それもあってシティポップ(AOR)期のユーミンの最高傑作だ!という意見も充分にうなずけるんだけど、僕としては若干曲が弱い気もするのでこの位置に。いくら天下のユーミンでも、この時期松田聖子に楽曲提供してるし曲のストックが尽きるのはしゃーないよな。それでもひっそりDANG DANGとかいう名曲が収録されてるのが魅力の一つです。

第11位 alarm de alamord (18th,1986)

「DA・DI・DA」と地続きな印象。しかしパワフルな音をなるべく避け、メロウなバラード多めにしているためこの時期にしては珍しく聞きやすかったです。シングル曲もなく、アルバムとしての存在感はあまりないと思いますが完成度はかなり高いですよこれ。

第10位 A GIRL IN SUMMER (34th,2006)

紛れもない復活作。「Wings of Winter, Shades of Summer」で打ち出したノスタルジー路線をさらに突き詰めてることに加え、音の余白を生かした伸び伸びとしたサウンドがユーミンのソングライティングをより際立たせることに成功してます。まあウダウダ語るのは抜きにして、とにかく00年代のユーミンってどんな作品作ってたんだろう?と興味持った人は真っ先にこの一枚を聴いてもらいたい。

第9位 REINCARNATION (14th,1983)

個人的に過小評価されているユーミン作品第一位。シンセサイザーを中心とした綺羅びやかなサウンドがエイティーズの雰囲気をすごく味わえて良きです。特に最初の三曲が格別なんすよ。まじで勢いが名盤特有のソレというか。
それにここまでロックに振り切っていてサウンドが古臭くないのはアレンジャーが相当優秀な証拠だと思います。アルバムタイトルからも察せられる通り、スピリチュアルな要素と恋愛を混ぜた歌詞で占められている。それに加え過度な打ち込みサウンドはこの後のユーミンが向かう方向性を先取っているかのよう。

第8位 悲しいほどお天気 (8th,1979)

前3作のやりたい放題感から一転、荒井由実時代を正当に引き継いだかのような傑作。全編に渡ってオラオラユーミンさんだぞと言わんばかりの華麗なメロディラインを展開していきます。そして80年代を予見するようなちょっぴり背伸びしたファンキーでゴージャスなアレンジも聴きどころです。「DESTINY」なんて完全にロックに振り切っていますしね。

第7位 the dancing sun (26th,1994)

オリジナルアルバムの中で最多のセールスを記録し、90年代のユーミンの名盤としても評価が高い一作。
特に加齢による声の衰えが見えてるにも関わらず都会の恋愛を歌う姿が痛々しく見えていたが、本作ではそのしゃがれた声を逆手に取ってエスニック味のある世界観とマッチさせてるのも素晴らしいポイント。
ただアルバムの構成という点では小気味良いポップナンバーと彼女の趣味との振り幅があまりにもかけ離れているので、聴いてて困惑してしまう節はあるかな。「good-bye friend」 と「hello my friend」はほぼ同じだし、なかなか歪な構造アルバムであることは間違いないと思います。
それでも「春よ来い」でアルバムの幕を閉めくくる時には傑作だと確信させるパワーはちゃんとあります。
結果としてサイケデリックな香りのする異色作でありながらも、彼女のキャリアの分岐点となるような重要作であったと感じますね。


第6位 COBALT HOUR (3rd,1975)

本格的にバンドサウンドを導入して新たな模索をし始めた一枚。ユーミンの名盤というとひこうき雲とこれが挙げられがちな印象があります。勿論これといった文句は無いんです。ただ躍動感が出てる割に「卒業写真」と「ルージュの伝言」以外の曲がちょっと弱く感じてしまうんですよね。あとティンパンアレーとシュガー・ベイブが気合い入れすぎて荒井由実本来の世界観が崩れがちになってない?って瞬間がちょくちょく見られるんですよ。なので前後作と比べると完成度は一段劣るかな、まあそれでも全然上位なんだけどね。

第5位 昨晩お会いしましょう (12th,1981)

80年代のユーミンを語る上で外せない一枚。「水の中のASIAへ」で挑んだ路線をさらに発展させたようなオシャレかつ暖かみのあるAORサウンドが特徴です。
一曲目からしっかり世界観に引き込み、ウルトラ大名曲「守ってあげたい」で毎回ノックアウトさせられ、終わった後もしっかり聴き手をぬくもりで包んであげるような正にユーミンの真価が発揮されてる傑作なんですよ。
捨て曲も0と言い切って良いんじゃないかな。
それに無理に時代に波に乗りました感もなく、それでもちゃんと支持されるような作品を作る姿勢もしっかり高評価。
あとジャケットからして名盤っぽいなと思わせるヒプノシスはやはり神。

第4位 U-miz (25th,1993)

長い暗黒期(?)を抜けついに松任谷由実の名盤が誕生した。
ジャンルとしてはワールドミュージックとクラブミュージックの融合といったところか。
もはや名刺代わりになってしまっている代表曲「真夏の夜の夢」を含め、作品通してポップスターとしての威光が存分に発揮されており、シンガーソングライター 荒井由実のままでは絶対に作れなかったであろう一枚だ。
このアルバムが発表された1993年といえばバブルの余波に酔ってる米米CLUBやビーイング系アーティストから、渋谷系〜ミスチル〜小室哲哉へと世代交代しかける激動のタイミング。まさにそんな瞬間に大衆性と独自性溢れる傑作を作ってしまうのだから、彼女の異常な適応力に恐ろしさを感じてしまう。

第3位 ひこうき雲 (1st,1973)

これは時代背景、完成度も含めて文句なしの名盤ですよね。もうこの時点でシンガーソングライターとしてはほぼ完成されちゃってますし、最高傑作に据えても良いと思うんですけど、後のユーミンとは似つかないような垢抜けない瞬間も見られたのと、デビュー作ということもあり簡素なサウンドにまとめられてるので最高傑作では無いかなと。それでもこの作品は名盤特有のテンポの良さと中毒性みたいなのが内包されている事は間違いない。というか表題曲がチートすぎるんよマジで。

第2位 14番目の月 (4th,1976)

荒井由実期の最後を飾る作品。もうね、ぐうのねも出ない名盤ですよ。
前作の欠点を上手く消化して、躍動感あふれるバンドサウンドとユーミンの繊細なソングライティングが程よく融合しているんですよね。それは中央フリーウェイが象徴するようにまさにニューミュージックとしての一つの完成形を見せてるというか。
んでシュガーベイブ色も出しゃばりすぎず絶妙なエッセンスを加えてるしもう文句なしです!
ついでに言うと今作で一つ謎なのが、細野さんがベースを担当してないってところ。


第1位 MISSLIM (2nd,1974)

結局これが最高傑作という結論に至りました。というか日本のSSWの金字塔と言い切ってもいいです、これは。
「ひこうき雲」では、垢抜けない少女 荒井由実のイメージを全面に押し出していましたが、今回はsuger babeのコーラス陣が加わったこともあり、楽曲のバリエーションが豊かになり、後のユーミンにも続く程よい上品さが味わえる訳なんですよ。
勿論アルバム構成も間違いなし!
初っ端からフュージョン色のある尖った楽曲をぶつけてきて、そこからレイドバック加減がたまらない「瞳を閉じて」で一気に世界観に引き込む。その勢いのまま「優しさに包まれたなら」が来るのだから、初速度がえげつないよねマジで。
そして、俺の好きなユーミン曲でも12を争う「海を見ていた午後」と「12月の雨」を挟んで、妖しさムンムンのファンキーな曲「あなただけのもの」、50年前にこんな前衛的なイントロ!?でびっくらこいてしまう「魔法の鏡」、最強の大味バラード曲「私のフランソワーズ」といった具合で名曲オンパレード状態ですよ全く…。
いやほんと、冗談抜きで曲・詩の完成度はどのユーミンの時代と比べてもぶっちぎりに高くて、もはやここまで来ると理屈なんか抜きで、ユーミンの迸る才覚にただただ圧倒されるばかりなんですよね。
それにバンドでしか味わえない躍動感とピアノとアコギが醸し出すオーガニックな安心感が絶妙な配分で配置されてるのもホント奇跡すぎるんだよなぁ。しかもあれだけ巨大な才能を持ったミュージシャンが一堂に会してるのにだよ?
まさに全盛期のユーミンの才能、そしてかつてのニューミュージックシーンを紹介する際に、真っ先に取り上げたい一枚でございます。

いかがでしたでしょうか?なにしろ作品数がプリンス並に多い方なので記事を書いてる途中に、ランク順より年別順に並べた方がいいかも…と思ってしまいましたね。しっかしよくこんだけコンスタントに名曲を生み出せるよなぁ…

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