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幻灯


寒さの厳しくなる頃に
出勤前の慌ただしさに囚われる私を
呼びとめるのは
白地の襖(ふすま)に映し出された影絵
陽光が朝の窓から差し込む間だけ
刻々と移動する幻灯
主題はいつも葉っぱばかり
廊下に育つゴムの木の葉だ

つかの間の和み

数年後
わが家の東側には
真四角のガレージ付きのアパートが建ち
まっさらの朝陽を遮ってしまった
ゴムの木は生長しすぎ
屋内で育てることができなくなった
あれは幻の灯りとなってしまった
あの冬の朝のひとときはもう戻らない




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まさに「光陰去ってまた還(かえ)らず」ですね。

毎週木曜日に更新します。
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