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野良学芸員が「キュビズム展」に行きました②

キュビズムはピカソとブラックが「ザイルでつながれた」ごとく固い絆で協力して作り上げた美術界の革命的なムーブメントであり金字塔で、二人の芸風は一時期混然一体としますが、もともと持っている資質はかなり違う。
ピカソが有名すぎてよく見過ぎていた…ということもありますが、今回私はブラックのカッコよさに改めて感動しました。

ジョルジュ・ブラック「果物皿とトランプ」

ブラックはいい意味での分かりやすさ、親しみやすいリズム感、緻密でいて軽やかな構成が素敵です。
もとが内装屋さんのせいか、家に飾りたくなる作品多数。
私はピカソは芥川賞的な、ブラックは直木賞的な印象があるのですが、いかがでしょうか…(^▽^;)
ブラックは銅版画も良かったです。

ここから少し夫が撮影した作品をまとめて…

そして今回の目玉ともいえる大きな、見上げるような大作がこちら…

ロベール・ドローネー「パリ市」

実物に触れると、写真では体感できない圧倒的な祝祭感というか、色彩のシャワー!!
言葉になりません…美しいです。
古代と現代が溶け合ったモチーフ、引用というかサンプリングというかコラージュというか、様々な意匠の美麗なコラボレーション。
あ…これは…ある種の…
マルチバースもの…?

ついつい☝やスパイダーマンを思い出してしまいましたが、
キュビズムという手法、キュビズムの世界の捉え方自体が、それまでふつーに
「絵画は三次元⇒(一方向から見た)二次元」
としていたものを、それだけではないはず…それだけではない方が面白いし美しいし、私達の真実に近いのでは…
として始まった実験ですから、もともとのスタンスとして事物を多次元的、多層的に見ているのです。
見る、感じるということの多層性、時間・空間を自由に行き来できる人間ならではの喜びや不可思議さを体感できるカレイドスコープ。

19世紀の終わりから20世紀のはじめは、フロイト、ユングによって「無意識」の存在が発見された、人間存在、自分自身へのまなざしも大きく変わった時期でした。
今目の前にあるもの、見ているものの存在は、これまで通りでは到底捉えられない。自分自身でさえ自分が知らない領域があるのだから…。
野良がきちんと調べないままに印象を語っていますが、どうなんでしょうね、このあたりとも関連があるような気がするのですが…?(゜-゜)?。

この展覧会は本当に充実していて、ここに紹介していない作品も含めて一点一点正のパワーがものすごく、正直圧倒されすぎて疲れを感じるほどです。
しかしへこたれてはいけない…こんな名品も…

マルク・シャガール「ロシアとロバとその他のものに」

以前ポーラ美術館でシャガール展を見て感激というか、(いい意味で)呆れたというか
「この人はファンタジックとか生ぬるいものではなくて、しみじみヤバい…」
と理解してから、本気でリスペクトしています、シャガール。
彼の「白い襟のベラ」(写真は一部)⇩も展示されています。日本初出品。

ベラに見守られるシャガール自身と娘のイダ…と言われています。
ベラとの対比、ぜひ実物をご覧ください。

他にも
当時の書籍や新聞などの紙の資料、
彫刻(ブランクーシの美しさ!)
建築
そして映像(長いですが、ぜひ全編ご覧ください。本当に素敵!!)
など展示は盛りだくさん。
きちんと消化するなら複数回行った方がいいかも…と思いました。時間が許せばまた行きたいです。
バウハウス、アール・デコがお好きな方も必見ですね。

最後はこちら…

ル・コルビュジエ「静物」

西洋美術館は彼が設計しました。
50年ぶりの大キュビズム展の会場がここ、というのも感慨深いです。
西美の設計については常設展の入り口スペースに「ル・コルビュジエのコーナー」があるので興味がある方はそこをご覧くださいね。

西洋美術館は世界文化遺産。
美しい秋の夕暮れ。雲。

ポンピドゥーセンターの改修のお陰で、日本にいながらにしてすごい展示を見ることが出来ました。
沢山のアーティストの業績を改めて尊敬しつつ…この展示を作り上げて下さった皆様、本当にありがとうございます!!

さて野良犬…じゃない野良学芸員、次はどこに行きましょうか…?

(キュビズム展見学記・おわり)


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青柳寧子
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