2024年アニメ映画評13・「映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ」
3月最後は子供向け推理アニメの映画化。二幕物で、前半は「なんでも解決倶楽部VSかいとうU」というショートムービーである。テレビアニメはシーズン8までNHKで放送され、中々の長寿アニメだ。本作は「東映まんがまつり」の短編三本を含むと、五作目の映画にあたり、長編としては二作目。2025年にも新作長編をやるらしく、人気なんだなあと思う。まあ、小学校低学年くらいまではケツとかオナラがすごい好きだしね。ミステリーとは言っても対象年齢が低いので、半分パズルみたいなものである。悪辣で惨たらしい事件も起きない。
おしりたんていが、元相棒・すいせんの依頼で美術品の巨大贋作組織の捜査に乗り出すというのが導入。おしりたんていの知られざる過去が明かされる今作だが、作中描写から計算すると、彼は30代中頃くらいらしい。マジ? とてもそうは見えないんだが。
ショートムービーから本編に至るまで、パズルやクイズが殆どなく、構成がTV版とかなり異なる。筋は割と面白いが、贋作をめぐる話は結構壮大な上、おしりとすいせんのラブロマンスもあるという、幼年向けとは思えない内容だった。スコアとしては6点くらい。対象年齢を加味すれば7点。
「なんでも解決倶楽部VSかいとうU」は助手を含む子供達がおしりに代わってかいとうUを捕まえようとする話。筋の殆どは美術館で張り込みをする倶楽部の日常シーンが占めるため、ミステリーといった趣はほぼなく、ブラウンやコアラちゃん達のワチャワチャを見る微笑ましい内容になっている。他方で、かいとうUが美術館の贋作に気づくラストが本編の前振りとして機能する。尚、かいとうUが盗もうとした作品の元ネタはボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」である。
次に本編だが、前作「シリアーティ」が割とTV版の空気を残していたのに対し、今回はかなり急ハンドルを切った印象。先述の通り、パズルは冒頭に簡単なものがあるだけであり、犯人当て推理も軽いため、ミステリーというよりクライムといった雰囲気。「名探偵コナン」の劇場版に近い感じだ。「コナン」も映画になった途端、全然推理しないしね。真犯人は声優の格的にも、そりゃアイツだろとすぐ分かるが、そこまでの過程が割と濃密で、すいせんの過去話も含め多少重い箇所もある。分かりやすい勧善懲悪とするためか、犯人の動機がゴリゴリのエゴイズムだった。これは昨今減ってきている趣向だろう。
ちなみに10年もかけた割に、すいせんの捜査があまり進展してなかったのは謎だった。ラブロマンスがあると書いたものの、対象年齢が対象年齢だから露骨な恋愛表現はなく、恋愛っぽいのがありましたよーとさり気なく流されている。すいせんは割と察してちゃんキャラだったが、まどろっこしいこと言う暇があったら、自分からおしりたんていに告白すればいいのにと思った。なんで告られるのを待つのかねえ。