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2024年アニメ映画評25・「クラユカバ」
塚原重義監督のアニメ作品で、「クラメルカガリ」と世界観を共有する甲鉄傳紀シリーズの一つ。と言っても二作品の間にストーリー的な繋がりはほぼなく、ムジナと総称される地下犯罪組織や地下道を走る装甲列車、大正時代風の意匠が共通な程度である。一応、「クラメルカガリ」に出てきた武器商人も引き続き登場する。「クラメルカガリ」よりはつまらないので6点かなあ。しかし、地下鉄の駅や路線にギャングが住みつくなんてのは、「メトロ」にちょっと似た設定だ。
荘太郎は先代の遺産を切り売りしながら自堕落に生きる探偵で、ある日、馴染みの記者である稲荷坂から集団失踪事件の調査を持ち込まれる。クラガリと呼ばれる地下の危険地帯絡みなため断ろうとしたが、金持ちが失踪者に含まれていると知り、案件を請ける。彼は子飼いの情報屋・サキを調査に出すが、彼女は地下ギャング集団・福面党に誘拐される。手掛かりを求めクラガリへ降りた荘太郎は、そこでギャングを蹴散らす装甲列車・ソコレ四六三と、その指揮官タンネに遭遇する。
絵柄については「クラメルカガリ」で述べたので割愛。同じシリーズなので変化はないが、本作はやや動きが固い気がした。
話は絶賛する程いいものではなく、まあ、普通って感じ。「クラメルカガリ」は三部作の最初だけ観た感じだったが、こちらは二クール作品の六話を観せられた気分で、消化不良感一層だ。
荘太郎の父はクラガリに関わったため失踪しているのだが、彼の「クラガリには近づくな」という台詞がどういう意味なのか、最後までハッキリしなかった。文面だけ取れば、危ないから近づくなよ程度の注意と取れるが、作中ではもっと深遠な、それこそ世界の裏事情に繋がるような勿体ぶった演出がされており、その割にはノータッチだった。当然、失踪した父を見つけたりもしない。それ以外にも、あの雑技団は何だったのか、何で誘拐なんてしたのか、ソコレ四六三って軍人となんか違うのかなどなど、設定やストーリーの根幹に関わる事柄がマルっと放り投げられていたので、これで終わり? と呟いてしまった。テレビシリーズでやれよ、と正直思った。
物語はクライムもので、探偵は出て来るものの、ほぼ推理せず。一応、轍やサキの証言からサーカスが犯人かもというところまでたどり着いているが、視聴者からすると、サーカス? 聞いたことないですねえ……となるから、これを推理と言ってよいのかは謎だ。一応、冒頭にてサーカスが仄めかされてはいるものの、知名度なり何なりが不明確なまま進むので、ああ、繋がったな、とはなるが、それだけ。推理モノというよりも調査・冒険モノの色が濃く、ハードボイルド探偵や警察小説に近しい。ただ、荘太郎が割と凡人寄りなのは他にない特色かもしれない。人物像としては「仮面ライダーW」「風都探偵」の左翔太郎から熱意を抜いたような感じだが、身内のためならガッツを見せるのはいい。……まあ、サキが失踪したのは荘太郎のモノグサが原因なんだけどね。そう書くとおそ松さんみたいに思えてきたや。
もう一人のメインキャラは、一応タンネなのだが、この人はお助けキャラ以上の役割がないので、どうにも印象が薄い。ただ、荘太郎のガッツはそれなりに評価しているのか、同行を許可している。が、それだけ。あんまり踏み込んだ会話はなく、事件解決のための一時的バディという雰囲気。その立ち位置ゆえ、この人がどういう性格なのか最後までよく分からなかった。
荘太郎の喋り方は妙に講談っぽくて、何だろなあ、と思ったら六代目神田伯山が声優だった。なるほど。あと、調べて知ったのだが、サキの声って芹澤優だったのね。全然分からんかった……。