アニメ映画評47・「トランスフォーマー/ONE」
10月最初の映画は「トランスフォーマー」シリーズの新作。映像は結構いいんだが、話は凡庸。6点。「トランスフォーマー」とは、元々タカラとアメリカのハズブロ社の提携から生まれた変形ロボット玩具で、そこからアニメや実写映画に展開した。デストロンの司令官はメガトロン、サイバトロンの司令官はコンボイというのが定例なのだが、作品によってはガルバトロンになったり、オプティマスプライムになったりするらしい。
サイバトロン星の地下都市・アイアコンで暮らすオライオンパックスとD-16は変形ができないために搾取される労働者階級である。サイバトロン星は元々、エネルゴンと呼ばれる燃料が潤沢にあったが、クインテッサ星人との戦い以降、マトリクスといわれる物質が消失、燃料不足に陥っており、異星人を退けた英雄・センチネルプライムがそれを探索しているが見つからない。オライオンはある時、マトリクスの所在を示した地図を見つけ、D-16やB-127、そして巻き込まれたエリータと地上へ探しに行く。そこで死んだはずのアルファトライオンに遭遇し、かつての戦争時にセンチネルが敵と内通したことや彼が誕生したばかりのトランスフォーマーから部品を盗んだために変身できない階級が生まれていることを知る。その後、センチネルとクインテッサ星人の取引を目撃したオライオンらは彼をを倒すため、地下都市に戻り、戦いを挑む。何とか勝利したものの、怒りに囚われたD-16はセンチネルの処遇を巡ってオライオンと衝突。その後、自らをメガトロンと名乗ってアイアコンから去り、残ったオライオンが星の意志に選ばれてマトリクスを獲得、オプティマスプライム改名したことで、再び星にエネルゴンが溢れるようになった。
前篇3DCGで、その出来栄えは相当なもの。ロボットの質感やアクションの派手さなど、映像だけなら高レベルだが、演出が下手なのか、特に最終決戦のアクションはやや見づらく、盛り上がりに欠ける。
話はすごくシンプルだが、専門用語が大量に出てくるためにボーっとしているとよく分からなくなる。「エヴァンゲリオン」みたいなやり口だが、あちらと違って、本作には懇切丁寧な説明がある。設定は割と入り組んでいて、手がかかっているなあ、という感じだが、ストーリーについては意外性も何もなく、まあ、そうなるよね、といった感じで進んでいく。中盤、センチネルプライムが裏切者だったことがドドーンと明らかになるが、いやまあ、そうでしょ。他に怪しいキャラがいなかったせいで、一番の驚きポイントが微妙になっているのは残念である。
キャラ造形はB-127/バンブルビーがかなり道化ていてファニー。木村良平の力もあって、かなり親しみやすかった。正直、オライオンよりも印象に残っている。オライオンは適度に賢く、仲間思いで向こう見ずとテンプレ主人公過ぎて記憶に残りにくい。エリータもやや無難なキャラか。ただ、委員長気質の人間が叛逆の正義に目覚めていくというのには、成長が感じられる。D-16/デストロンが一番の悩みの種で、感情が急旋回過ぎて、正直ちょっとついていけないところがある。彼は、ラストで崩れる塔から落ちたオライオンを救おうと自ら手を掴んだくせに数秒後に手を放して突き落としており、情緒不安定か? と言いたくなる。センチネルへの憎悪が強く、それに囚われた設定にしたいがあまり、オライオンとの絆を忘れてしまったのはちょっとよくないのでは? と感じた。流石に、親友と殺し合いをするのに躊躇が無さ過ぎて、親友だなんだと言っていたのは最初から嘘だったのか? と思ってしまった。