2024年アニメ映画評33・「劇場版すとぷり はじまりの物語 Strawberry School Festival!!!」
日本の六人組エンタメユニット(参照Wiki)、すとろべりーぷりんすを主役にしたアニメ映画。いわゆるファンムービーで、そんなに面白くない。5点。すとぷりはVtuberかと思っていたから、公式HPに2.5次元アイドルとあって、へえ、アイドルなんだ、と驚いた。
映画はすとぷりを当て書きしたもので、私立苺ヶ丘学園を舞台に、高校生のメンバーが文化祭を成功のため奔走する。生徒会メンバーの莉犬は、取り壊しのため、今年が現校舎最後の文化祭と知り、文化祭実行委員として文化祭の成功を決意する。彼は、やる気のない実行委員、ななもり。、ころん、ジェル、さとみ、るぅとをかき集め、何とか会議を開くも、妙案が出ない。気晴らしに出かけた海でライブの実施を思い付き、準備を進めるが、当日、嵐のため文化祭は中止となり、落胆する。台風が去り、学生は片付けのため学校を訪れる。そこで莉犬達は、生徒達を励ますためライブを行う。
アニメーションは中の下くらいで、一昔前なら、これくらいの作品はたくさんあったのだが、現在だとハイレベルな作画が多すぎて少し微妙に映る。全然ちゃんとしてるけれど、今年の映画の中では何とも言えない感じ。
「i★Ris」同様のファンムービーだが、こちらは一見でもそれなりに楽しめ、配慮が行き届いていた。
話のパターンが「劇場版i★Ris」に似ており、冒頭でキャラ紹介的挿話がダラダラ続くが、正直面白くなく、辟易。ただ、本作はメンバー間で出代の差が大きく、これがないと印象に残らない人もいるからあるのは仕方ない。
莉犬が歌う決意をするシーンは本作の白眉で、ライブも割といい。とはいえ、音楽を題材にした作品と比べればパンチ不足で、脳天に来るクオリティではない。PVとしてなら良いという程度。
にしても、文化祭中止で落ち込んでいる生徒が、ライブをされて盛り上がるのは少し変だ。パリピしかいないのか? 人によってはライブだけできるのはズルいと思うだろうし、そもそもライブができるなら、他にもできる企画はあろう。というか、そこら辺を調整するのが文化祭実行委員の仕事だろ、と思わなくはない。すとぷりメンバーは多少サイコなのかもしれない。
また、話の展開上詮方ないが、既述の通りキャラ毎の出代が違いすぎる。莉犬はメインだから出張っていて当然だが、他の5人間でも格差が大きい。まとめ役兼困った時のアイディア出しを担ったななもり。、作曲担当のるぅとは好待遇な一方、他三人は印象に薄く、冒頭の自己紹介シーン以外は大した活躍がない。それでも、奇天烈なキャラクターを示せたころんとさとみはまだマシで、ジェルは単なるモブイケメンに終わった。この落差はファン向け映画なら難点となりえ、莉犬・ななもり・るぅとのファンはいいだろうが、他担からすれば不満だろう。
テーマはよく分からないが、強いて言えば、未知へのチャレンジとその勇気と言ったところか。作品を通じて、莉犬とるぅとしか成長しないため、全般に日常系であることは否めず、ゆえにテーマとなればこの二人に着目する他ない。るぅとは作曲した歌を人前に披露するという、今までにない経験を味わうし、莉犬も、最初こそ渋っていたものの、結局は歌うことを決意している。チャレンジが人生を楽しくする、とそういうことなんだろう。
ちなみに、本作では生徒会長の正体が隠匿されており、末尾でななもり。と分かるのだが、その場合、あのメンツを集めた理由がよく分からない。莉犬は生徒会で人柄が分かっているから採用したんだろうが、他の4人はななもり。自身も初対面なわけで。文化祭を成功させるための選択と言うには、あまりに適当な人事だ。