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2024年アニメ映画評45・「映画 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」

 ラブライブ三作目の映画化。とは言え、映画ゆえのスペシャル感はなく(別の意味でスペシャルではあったが)、TV版の延長といった感じ。三部作の一本目なので評価に迷うが、単品でみると微妙。4点。
 ラブライブシリーズはスクールアイドルなる、歌って踊るアイドル部活を題材としたサンライズのアニメである。元は雑誌連載、PV、CD等々複合的に展開されたメディアミックス・プロジェクトで、アニメはそれらから派生したもの。ゆえにいわゆる無印「ラブライブ!」のアニメでは、元からあった曲を使う場面が多かった。とは言え、作品として大きくハネたのは、2013年から放映されたアニメシリーズで、ラブライバーなる言葉が生まれるくらいだった。2期、映画化と続いて無印が終わると、今度は舞台を沼津に移した新シリーズ「ラブライブ!サンシャイン!!」が2016年にアニメ化。メイン・ユニットのAquorsは2018年に紅白出場する程となった。「サンシャイン」は2期を経て、2019年の映画で幕引き。その後継として2020年から「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」、通称「ニジガク」が放送された。この作品は2022年の2期でTV版が終わっており、その完結篇が本作である。ちなみに、シリーズ4作目は「ラブライブ!スーパースター!!」なのだが、なぜか「ニジガク」2期よりも前に放映が始まっている。どうやら「ニジガク」はあまり人気がないらしい。
 全国各地をまたにかけた、スクールアイドルの配信ライブイベント・スクールアイドルGPXに参加するため、歩夢らニジガクの六人は沖縄を訪れる。大会の主催者である嵐珠の母からホテルのスイートを用意された嵐珠は自分が依怙贔屓されたと思って憤慨、ホテルを飛び出し、他のメンバーと民宿に泊まる。そこの子供である赤嶺天は幼馴染の石嶺小糸とスクールアイドル活動を巡って仲違いして以降、関係がギクシャクしている。その後、母と対話した嵐珠は母がニジガク全員をスイートに泊めるつもりだったと知り和解。これに着想を得た歩夢は赤嶺と共にライブを行い、石嶺に彼女の真意を伝えることに成功する。
 絵はTV版からガラリと変わっている。TV版の絵柄は割と線がシャープで、目はあまり複雑でなく、色合いも明瞭と平成ガンダムのようなデザインだったが、今回の作品は全体に線が丸くなって目の装飾性が上がったほか、色味もやや淡くなっている。傾向としては「ゆるキャン△」や「ぼっち・ざ・ろっく」に近い。これはファンの間でも賛否両論だったらしい。そりゃそうだろ。個人的には、トムジェリだと思えば違和感はないが、TVの続編と言ってここまで絵柄が変わるのは如何に。ライブシーンは正直TV版の方がよく、凝ってもいた。本作はかなりMV的で、ライブって感じはしない。あと、街中で歌う設定上、背景が地味なことも多かった。てか、カスカスだけライブしてないんだけど。
 話は凡庸で、つまらなくもないけど、面白くもない。噛み続けたガム。アニメを通覧してキャラに愛着があるなら観ていられるが、筋はよくない。
 主軸となるストーリーは二つで、一つは嵐珠と母親の葛藤だが、これがまあくだらない。いや、実際の親子喧嘩なんてそんなものだから、くだらなくて当然ではあるが、勘違いのポイントがアホくさ過ぎて逆に笑ってしまった。解決方法もお互いに思っていることをすべて言わせるというもので、昨今の作品では見ないそのストレートさには好感が持てる。ただ、ズルはしたくないと言っていた割に、ニジガク全員をスイートに泊める気だったと知って和解するのは変では?
 もう一つもすれ違いがモチーフで、こちらはゲストキャラクターをめぐる物語である。赤嶺は嘗て石嶺とコンビを組んでいた際、彼女に改善点を指摘できず、そのために石嶺は信用されていないと感じ、激怒する。本作は二人の間を歩夢が取り持つ展開。話し合いというテーマが反復されるが、嵐珠らが相手の話を聞かないのが問題なのに対し、こちらは話さないことが問題で、対比的だ。こちらは割と誰しもに身に覚えがある題材だろう。
 テレビ版を復習してから行くべきだったとは思った。この作品はキャラ数が多いため、周回しないと愛着もわかないし、記憶にも残らないから。ただ、2期は正直印象に薄い話が多くてそんなに観たくない。


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