2024年アニメ映画評32・「怪盗グルーのミニオン超変身」
イルミネーション・スタジオ大看板の最新作。「怪盗グルー」シリーズも本作で四作目で、2010年の第一作から本篇4本、番外篇2本が公開されている。ミニオンシリーズについては、他のイルミネーション作品で短編が流れることもあり、それを含めると、もっと多い。6点くらいかな。
反悪党同盟に勤めるグルーは同級生のライバル、蟷螂人間・マキシムを捕縛する。しかし、マキシムはすぐに脱獄し、彼から命を狙われたグルーは家族共々、同盟のセーフティ・ハウスへ避難。素姓を他人に知られてはいけない中、隣家の一人娘で、悪党に憧れるポピーにグルーの正体がバレる。グルーは身元を隠してもらう代わりに、彼女と彼の母校へ校長のペットを盗みに入る。グルーJr.の力で窃盗には成功するも、ペットの首輪から自宅が知られる。校長はマキシムに協力を求める。グルー宅を襲撃するが、すったもんだの末、マキシムはグルーに逮捕される。
「怪盗グルーのミニオン超変身」はグルー本編では一番よかった。ハチャメチャさが程よく継続し、2や3のようなダレて退屈になるシーンが殆どない。とはいえ、スピンオフの「ミニオン」シリーズの方がいいとは思うが。まあ、それでも今までの集大成といった感じで悪くない。
子供が飽きないようにするため、グルーVSマキシムという大筋の中に、関係性の薄い短編がいくつも組み込まれている。顕著なのはメガミニオンを作ろうの段で、まあ、ぶっちゃけあんまりなくてもいい。メガミニオンも一応、終盤で活躍はするけどね。ちなみに、邦題の「超変身」とはミニオンのメガミニオン化(こう書くとメガシンカみたいだが)を指している。
ポピーやらウーベルシュレヒト校長やら、アクの強いキャラクターがこれでもかと投入され、彼らのちょっと奇天烈な行動が笑いを誘う。しかし、こういったゲストキャラはマキシム含め基本的に話を動かすための役割が強いため、どうしても表層的描写なのは否めない。
メインキャラの扱いがお粗末なのがグルーシリーズの特徴で、作品を追うごとにグルー以外の影が薄くなっていく。また、2を除いて、ミニオンの話とグルーの話の関わりが薄く、二つの話を無理矢理、一本化している感じがある。売上のためにも、人気のミニオンを活躍させなくてはならないが、ギャグキャラの彼らをシナリオの主要素とするのは難しいんだろう。スピンオフでもミニオンは主役でないし。ミニオンシリーズが面白いのはギャグ作品として振り切っているからで、グルーシリーズでは、スラプスティックなミニオンと、「フルハウス」っぽいグルーの家族コメディという別物過ぎる二つが混ぜられ、不整合な感じだ。
ミニオン跳梁跋扈の皺寄せは他のメインキャラに行っていて、特に三人姉妹はいてもいなくてもいい存在になっている。個人的には子供たちにフィーチャーした話があってもいいと思うも、2以降、そういうのはない。1から察するに、グルーシリーズは家族の絆を中心に据えたいのだろうが、ミニオンを活かそうとするとそれは難しい。三姉妹が依然続投しているのは、家族ものの制作を諦めていない証左と言えるか。
メガミニオンはファンタスティック・フォー、X-MEN、スパイダーマンを組み合わせた設定で滑稽なパロディで、観てて面白かった。
あと、グルーという名は、ネルソン・グッドマンのグルーのパラドックスから来てるんだよね?