2024年アニメ映画評27・「「ツキウタ。」劇場版 RABBITS KINGDOM THE MOVIE」
6月ラストを飾るのは「ツキウタ。」の劇場版。キャラクターCDを原作とし、12の月を擬人化した男性アイドルが題材である。人気を博しており、歌やテレビアニメも出ている。なお、本作とテレビアニメはほぼ繋がりがないためテレビを観ていなくても問題ない。が、普通につまらない。3点。元は2023年上映予定で、なぜか延期になった。延ばしたくせにこのレベルかと思うとガッカリ感がひとしおだ。ちなみに、i☆Ris映画同様、圧倒的な一見さんお断り作品なので、ファン以外は観るべきでない。まあ、ファンが見たとしても納得できないレベルだが……。
ツキノ芸能プロダクション所属のアイドルグループ、Six Gravity(通称・グラビ)とProcellarum(通称・プルセラ)は「RABBITS KINGDOM」という合同舞台の公演を控えていた。演技に不安を覚えている主役の睦月始と霜月隼は、古書店で見つけた原作を読むことにする。「RABBITS KINGDOM」は、ナーロッパ的世界観を舞台に、とある王国を治める黒の勢力(演・グラビ)と、異世界からやって来た白の勢力(演・プルセラ)が親睦を深めつつ、世界滅亡を狙う闇の勢力と戦うというストーリー。
アニメーションは正直お話にならないレベルで、何とか納品できたというクオリティだ。作画崩壊はしていないが、低品質。寧ろ、作画崩壊してない分、「DYNAMIC CHORD」や「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない」のようなネタ要素がなく、悪い以外に言うことがない。殆どのシーンで大して動がず、動いたとしても「チャージマン研」レベルだから紙芝居と言うべきだろう。「ブルーロック」の二期も同じことを言われているが、あの作品はシュート・シーンなど要所要所はちゃんとした動画になっている。本作はそれすらなく筆舌に尽くし難い。延期したのに何故なのか……。恐らく、品質のための延期というのは建前で、制作委員会が舵取りに失敗したのだろう。それでも流産せず、完成できた点は評価できる。また、一枚絵は悪くなく、紙芝居として見るならいい絵。
画がクソなだけで3点という悲惨なスコアを取るわけもなく、当然、話もつまらない。先述の通り、キャラクターがやってる舞台を我々が観ている設定なのだが、まあ、この話が終わっている。スカスカである。端的に言うと、4クールアニメの最初の5話と最後の5話を観せられた感じだ。
黒白の勢力は一応、鏡合わせの存在と言う設定で、各メンバーには逆の色の勢力に対となる存在がいる。だが、この設定が十全に生かされたのは睦月と霜月くらいで、あとは、だから何? という感じ。また、白の勢力が黒の王国に異世界転移してから仲良くなるまでの尺が異様に長く、その後の王国動乱絡みの話は呆然とするくらい一瞬で進む。敵方による侵攻もかなり速く、王国が秒で火の海になったのは笑ってしまった。この動乱篇で、各キャラクターにはアクションの見せ場が与えられるのだが、メインが12人もいるものだから全然名前が覚えられず、誰なんだろう、この人は、とずっと不思議に思っていた。というか、睦月・霜月の二人以外はあまり扱いがよろしくなく、アクションもこの二人意外は微妙だった。残りの十人の中でも活躍の濃淡はかなりクッキリ分かれていたが、まあ、あまり覚えていない。
12人のキャラの性格について、おおよそでも把握していないと全然楽しめない。i☆Risの映画は一応、各キャラ紹介があったものの、こちらにはそれもないためより不親切。作中劇を観ている設定なのになんでなんだ? と思うかもしれないが、そもそもの着想がツキノ芸能プロダクションのIFストーリーなので、各キャラは当て書なのである。そこは「A3」の作中劇に比べて面倒な点で、作中劇だけを楽しめる構成になっていない。
ちなみに、各キャラは常時ウサ耳装備(兎の獣人的なものが世界を支配している設定なため)である。