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2024年アニメ映画評30・「大室家 dear friends」

 2月公開の「大室家 dear sister」の後篇。friendsと銘打っているだけあって、大室家三姉妹の友人に関する話がメインで描かれている。ただ、後述する通り、話の殆どは撫子の恋愛話に費やされているので、他の二人の担当は微妙な気持ちになるかもしれない。6点くらいで、前篇より高評価。ちなみに公開日は真夏一歩手前くらいで暑かったが、作品の時間軸は秋から冬だ。
 前篇同様、短編を連ねた構成だが、後篇独自の趣向として、冒頭から終盤まで、長女・撫子の恋愛模様を緩やかに描きつつ、合間合間に妹二人の挿話が入っている。要するに、大室家三姉妹の話のはずが、実際は撫子の話ばかりなのである。
 撫子の話は「ゆるゆり」のスピンオフとは思えない重苦しさで、ちょっと少女漫画っぽい。撫子の恋人が誰なのかは前後篇を通して明らかになっておらず、候補は園川めぐみ(CV.上坂すみれ)、三輪藍(CV.東山奈央)、八重野美穂(CV.悠木碧)のいずれかである。最初の方は仲睦まじく電話をしている様が描かれていたり、4人グループで遊びに行ったりしているが、中盤くらいから、なぜか撫子と恋人が喧嘩モードになり、グループ全体も多少ギクシャクする。喧嘩の原因は言及されず、後半ではいつの間にか仲直りしており、上機嫌で妹にアイスを奢る。撫子絡みのイベントは具体的に何が起きて、どう解決したのかが全く分からず、観客は、へえ、といった感じになる。こうなってしまうのは、3人の誰が恋人なのかを視聴者に推理させるためであり、試みは面白いものの、恋愛映画としては描写不足で全体にフワッとしている。相手の属性が分ってこそ恋バナは面白いものだから、物足りなさは否めない。ただ、本作のファンは「ゆるゆり」の読者と大部分は重なっていると思われ、ギスギスした恋愛模様や人間の面倒臭さの描写にはさほど需要がないだろう。ホワホワとした日常系アニメでリアル寄りな恋愛を描くには、本作くらいの加減が限度と言えるのやも。
 それにしても、撫子は随分、重い女と付き合ってるんだな。一度、不機嫌になったら話をマトモに聞いてくれないなんて、結婚したら大変じゃないか? 話し合い、ちゃんとできるのか? 喧嘩シーンの感じを見る限り、三輪藍か八重野美穂のどちらかが恋人っぽい。いや、まあ園川めぐみの可能性もあるが、仮にこの子が恋人だとしたら、裏表で差が激しいなあ、と感じる。八重野は小悪魔っぽく、占欲も強そうなので、個人的には第一候補だが、三輪もなんやかんやメンヘラ臭がするので、なくはないか。
 先述の通り、「大室家」と言いつつ過半は撫子の話なので、妹二人には殆ど焦点が当たらない。「ゆるゆり」本編で活躍の場をもらっている櫻子はともかく、前篇に引き続いて出代の少なかった花子は哀れである。せめて高崎みさきと不仲になった理由くらいは明かしてほしかった。
 それにしても、古谷家の間取りというのは随分とコロコロ変わるもので、「ゆるゆり」の1期・2期あたりは団地住まいだったはずだが、いつの間にか大室家向かいの和屋敷暮らしに変わっていた。引っ越したなんて話はしてなかったと思うけどなあ……。


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