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人工透析の現実
以前、「眠れなくなるほど面白い 図解 腎臓の話」という本の内容を
紹介し、腎臓の働きや慢性腎臓病の怖さ、腎臓に良い食べ物、
悪い食べ物を紹介しました。
腎臓が壊れてしまうと人工透析が必要になってしまうのですが、
今回は具体的に人工透析を開始することになった
悲惨な生活について説明していきます。
日本の透析患者数は現在35万人を超えていて、新たに透析を開始する人は
毎年4万人を超えています。
最近では透析患者の高齢化が進んでいて、透析導入の平均年齢は
現在71歳ですが、この年齢はどんどん上昇しているようです。
ただでさえ透析になれば大変なのに、70代になって体が不自由に
なってきた時に透析を始めることになったら、
人生最後の老後生活が台無しです。
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ですが、多くの人は透析を始めることになった時の悲惨さを知りません。
そして、人工透析なんか自分には関係ないと思っているかもしれませんが、
現在では命を繋ぐために多くの方が人工透析を受けているのが現状で、
沈黙の臓器である腎臓の健康は、症状が出る前に気遣って
いかなければならないのです。
今回の内容を通して、人工透析になった人の
あまりに残酷すぎる末路を知っておきましょう。
透析になってしまえば、いかに過酷な現実が待ち受けているのか
分かるでしょう。
まだ20代、30代だから関係ないと思っている人、腎臓を気遣っていなければ
いつか通るかもしれない道ですよ。
年間600時間、病院に拘束される
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そもそも人工透析というのは、人工の腎臓(装置)を使って
血液をろ過するという治療法です。
私たちの腎臓は本来、血液から余分な老廃物をろ過して尿を作って
いるので、腎臓が無いと血液が毒まみれになって、
人間はすぐに死んでしまいます。
腎臓が機能不全になってしまう腎不全の患者さんは年々増え続けていて、
特に最近では糖尿病患者から腎不全になる人が大変増えています。
実際に糖尿病は、日本の透析導入理由の1位なので、人工透析を
避けるためにも糖尿病は絶対に予防しなければいけないと言われています。
「糖尿病は尿に糖分が混じる病気だから、そのくらいは
別に良いじゃないか」
と思っているとしたら大間違いです。
実は、糖尿病が進行すると合併症によって腎臓を破壊し、透析になって
しまうかもしれない本当に恐ろしい病気です。
では具体的に、腎不全になってしまった人の身体は
どうなってしまうのか見ていきましょう。
腎不全では左右2つの腎臓が無くなってしまうのと同じですから、
腎臓の代わりに血液から不純物をろ過してくれる装置が必要となり、
それが人工透析です。
人工透析には、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類がありますが、
現在日本で行われている人工透析の97%が血液透析ですから、
ここからは血液透析の説明をしていきます。
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正常な腎臓は、1日に150Lもの血液がろ過されて尿が作られていますが、
ろ過された尿は濃縮されるため、実際の尿の量は1日1.5Lほどになります。
人工透析は腎臓の代わりをしなければいけませんから、本来であれば
毎日働く腎臓のように、透析も毎日やらなければなりません。
ですが、毎日病院に通うのは現実的ではありませんので、
週に3回病院に通って、1回につき4~6時間の透析治療を受けます。
日本透析医学会をはじめ、様々な機関が透析の頻度や時間について、
週に3回、1回4時間を下回ると死亡リスクが格段に跳ね上がると
発表しています。
つまり、週に3回、1回4時間(週に12時間)は病院で血液を浄化して
もらわなければ死んでしまうということです。
単純計算で年間150回以上病院に通い、600時間以上は透析を受けながら
寝て過ごさないといけないのです。
おまけに、大部屋の透析室には、糖尿病で足が腐った患者さんや、
認知症で大騒ぎをしている患者さんが居たりすると、臭いや騒音で
落ち着いていられる環境ではありません。
さらに酷いと、高圧的な看護師がいたり、実習中の学生が
いちいち話しかけてきたりということもあるかもしれません。
ですから、1回4時間に及ぶ透析時間を有効活用することは現実的には
難しく、血液透析が必要になると、最低でも年間600時間以上となる
人生の貴重な時間を無駄に過ごさなければいけません。
しかもこれは、「最低でも」の話です。
実際には、透析前日にラーメンを食べたせいで、追加で透析が
必要になったり、シャントのトラブルによって緊急手術が
必要になる場合もあります。
シャントというのは人工的に作った動脈と静脈の回路のことです。
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透析が原因の副作用によって入院することも珍しくなく、
もはや満足に予定を立てることさえ出来ません。
血液透析は、人生の中心が血液透析になってしまい、
何のために生きているのか?というのが分からなくなってきて、
うつ病になってしまう患者もいます。
これからも人生を楽しむために透析を導入したのに、透析をすることが
生きる目標となってしまうのです。
しかも日本の医療では、透析を一度導入したら
二度と離脱することは許されません。
これは、人工呼吸器を入れたら二度と外せないのと同じで、
一度導入した透析を止めると死ぬことが分かっているので、
病院が殺人罪として訴えられてしまうからです。
そのため、一過性の薬物中毒のような特殊な例を除き、透析を開始すると
死ぬまで続けなければならないのです。
ですから、人工透析を始めるということは残りの人生の全てを
透析に捧げると言っても過言ではありません。
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