大切な人の最期に備える
今回は、四宮敏章先生の著書「また、あちらで会いましょう」
という本の内容を紹介します。
生きている人は必ず死にますから、私もあなたも、家族も友達も、
間違いなく死んでしまいます。
いつか必ず死ぬのであれば、私たちは自分自身の死や、大切な人との
死に向き合うほかありません。
本書は、ガン患者さんの心身の辛さをケアする「緩和ケア」と、
体と心の両方から病気を治療する「心療内科」を専門とする四宮先生が、
3,000人以上の患者さんを見送ってきた経験から、死に対する
向き合い方についてアドバイスをしてくれています。
自分の病気を受け入れて、最後までしっかりと向き合うことが
できた患者さんは、穏やかな最期を迎えられると言います。
今回の内容を通して、大切な人に死が訪れた時の向き合い方について
一緒に学んでいきましょう。
死ぬ瞬間に苦しみはない?!
どんな人でも、自分の死をはっきりと予測するのは難しいでしょう。
病気で死ぬのか?、何か事故に巻き込まれて死ぬのかもわからないし、
とんでもない痛みや苦しみを感じながら死んでしまうのか?、
想像もできません。
私たちが死を恐れる原因の一つは、死ぬときの苦しみに対する恐怖が
あるからではないでしょうか。
日本人の死因は、ガンや心疾患、脳血管疾患などの病気と、老衰が
大きな割合を占めています。
不慮の事故や自殺などの死因ももちろんありますが、大半の人は
自宅か病院のベッドで亡くなります。
日本人に一番多い死因はガンで、およそ3人に1人の割合で亡くなって
いますが、病気とガンを併発している人もいるので、
それも含めるとさらに割合は多くなります。
ガンという病気のことを知っている人は、痛くて苦しむ病気だと
判っていますから、ガンになって苦しみながら死ぬのが怖いと
考える人は、本当に多いと思います。
ところが、一般的には8割のガン患者さんは、何もしなくても
眠るように最期を迎えます。
残りの2割の患者さんは、苦しみを和らげるために睡眠薬による
痛みの緩和が必要になる場合もありますが、睡眠薬や
医療用麻酔によって寿命が短くなることはありません。
ホスピス医になって3,000人以上の患者さんを見送ってきましたが、
適切な症状緩和ができれば、ほとんどの患者さんの最後は
とても穏やかなものになります。
それを聞くと、「苦しまないで死ぬことができるんだ」と安心する一方で、
「本当は苦しんでいるんじゃないのか?」と疑いたくなる
気持ちもあると思います。
ですから、ここからはガン患者さんがどのように
亡くなっていくのかという、亡くなる直前のプロセスについて
説明していこうと思います。
ガン患者の死 数か月前
多くのガン患者さんは抗がん剤治療を行います。
ですが、抗がん剤の効果が無くなり、治療医から積極的な抗がん剤治療を
終了するかどうかの話をされるタイミングが来ます。
これは、薬が効かなくなって末期状態を迎えているということです。
実はこの時点では、患者さんは割と元気なことが多いです。
もし心身が弱っている場合でも、それは抗がん剤の副作用や痛みなどの
症状があるためで、これらの症状を緩和できれば、
また元気になる人が多いです。
ガン患者さんの体調や日常的な行動の自然経過を観察すると、
抗がん剤治療が終わってからも比較的元気に過ごせるのですが、
死の1か月前くらいになると、目に見えて急速に
症状が悪くなっていきます。
この状態を、緩和ケアを行う医療者の間では「週単位での変化」と言い、
病状や体調が一週間前と比べて大きく変わってくる
体の状態を意味している訳です。
そして、亡くなる一週間前くらいになると、「日単位での変化」になり、
この状態になると、毎日病状や体調が変わっていきます。
いよいよ、亡くなる2日ほど前になると、「時間単位での変化」になって、
患者さんには死の直前の特徴的な症状が現れます。
死の数日前に出る兆候
亡くなる直前の患者さんには、具体的に次の5つの兆候が表れます。
1.意識混濁
2.死前喘鳴(しぜんぜいめい)
3.下顎呼吸(かがくこきゅう)
4.四肢のチアノーゼ
5.橈骨動脈の触知不可(とうこつどうみゃくのしょくちふか)
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