全世界をしっかりとつなぎとめているのは、ぼくたち子供なんだ。 「わたしたちが孤児だったころ」 カズオ・イシグロ

イシグロカズオの本には劇的なものはないけど、最後まで読めてしまう。以前読んだ「私を離さないで」と同じように幼少期を回想する描写がすごい。読み手である私もこんな事あった気がすると追体験できるかのよう。
舞台は1930年代の上海の租界。絢爛な世界の描写が美しく、映画のワンシーンのよう。内容としてはラストのイギリス人の横暴さがひどすぎて、それに持っていかれた。

「僕たちは気がつかないことが多いけれど、家族だけでなく、全世界をしっかりとつなぎとめているのは、ぼくたち子供なんだ。」

確かにそんな気がしてくる。子供をいかに健やかに育たせるかで社会は結束できるもんなと腑に落ちた言葉。

「大事。とても大事だ。ノスタルジック。人はノスタルジックになるとき思い出すんだ。子供だったころに住んでいた今よりもいい世界を。思い出して、いい世界がまた戻ってくれればと願う。だからとても大事なんだ。たった今、おれは夢を見ていた。おれは少年だった。お母さん、お父さんが、俺のそばにいた。我が家に。」

幼くして孤児になった主人公の言葉。こういうことを考える人を育てられれば、いい循環が起こるのではと思った。親になったとき、子供がこんな風に思ってくれたらいいなと思う。

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