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【フィナンシェ話#12】福祉の領域でも欠かせない金融教育を届けたい
様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資、更にはサステナブルな生活のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。
みなさんは、社会的養護についてご存じですか。具体的な例には、児童養護施設や里親などが挙げられ、下記のような定義があります。
社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。
今回は、金融機関で社会的養護に対する金融教育を行ない、現在はOcalea+として、特に社会的養護分野で人生のセーフティネットを築くお金のサポートの仕組み=お金のリービングケアを目指している牛堂望美さんにお話を伺いました。
■ お金のトラブルが多いことも、頼れるところがないことも大きな課題
――社会的養護の分野での金融教育はどのように始められたのでしょうか?
私は以前から子供の貧困や虐待問題などに関心があったんです。一方で、当時の勤め先である金融機関は、他社と同じように金融教育をやっていました。はじめは両者がつながっていなかったのですが、ある時この2つがつながったんです。はじめのきっかけは、発達障がい児の療育センターの方から、お金のトレーニングをやってほしいと声をかけられたこと。「楽しくお金のことを学べればいいです」というお話だったのですが、よくよく聞いてみると金融リテラシーがないことによる自立などに対する問題がある、という事が分かってきたんです。そこで色々な子ども支援のNPOや施設の方に「お金の問題ってどうですか?」と聞いたら、もう課題意識がどんどん噴出して。口をそろえてみなさんお金のトラブルがある、と仰るんです。それで、福祉分野での金融教育は大事なんだと気付いたことが、スタートになっています。
――お金のトラブルというと、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
児童養護施設の退所後のトラブルはよく聞きます。たとえば、退所するときに支度金がもらえる自治体があるんですが、児童手当の貯金と併せてもらった金額を1~2か月で何十万円も趣味に費やしてしまった、先輩や親にお金を無心されたなど。施設にいる間でも、アルバイトで稼いだ数万円をほぼアプリにつぎ込んでしまう、奨学金制度を知らず「貯金がないから進学したいけどできない」と思い込んでしまうなど。お金で人の心を結び付けようとしてしまう愛着障害が関係しているところもありそうです。
施設の職員の方も、将来のために貯金してくれているんです。でも子どもはその必要性を認識していなかったり、自分のお金なのに勝手に貯金されていると反発したり。お小遣い帳を書かないといけないなどあらゆるルールに窮屈さを感じて、退所したらパーってお金を使っちゃう子もいます。
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一般の家庭の子でも、お金のトラブルはあると思うんです。でも、トラブルにあっても実家に帰って親に頼ることができるかもしれない。児童養護施設の子どもたちはそれができず、施設の先生が家賃を肩代わりした話も聞きます。生活が一回崩れてしまうと取返しがつかない、頼れる大人がいない、という状況が深刻なんですよね。仕事も非正規雇用や住み込みの仕事を選ぶことで不安定になる。。こうやってお金のことを学んだからと言っても、将来安心とは言えない状況なんです。
■ 情報がなく、進学をあきらめてしまう子どもたち
――確かに、同じトラブルに巻き込まれたとしても、拠り所がないのは大きな違いですよね。進学できると就職先の幅が広がることは統計的にもあると思いますが、彼らの課題の解決策の一つが、進学になるのでしょうか。
そうですね、一つの解決策ではあると思います。でもその解決策に行けない子がいっぱいいるんです。特別支援の子もとても多いんですよね。
金融教育である施設に行ったところ、参加者20人くらいいる子どもたちのほとんどが特別支援学級の子でした。そして進学は1人だけ、のこりは全員進学せずにアルバイト含め就職をするという子たち。奨学金の存在を知らないから、無理と決めつけて勉強に身が入らない。周りも大学に行かないことが当たり前のような雰囲気になっている。そういう子どもたちを見ていると、高校ではなく中学生の早いうちから、ちゃんと勉強ができていればこんな道もあるんだよ、奨学金の制度もあるんだよ、ということを伝えておかないといけないと思いますね。実態としては、施設によっても対応はバラバラですし、何百とある施設にどう伝えるか、というところも課題です。また、職員の方にとっては、課題はお金だけじゃなく、他にもたくさんの課題があるので、奨学金の話をしづらい背景もあります。
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――先ほどのトラブルの話や進学の話を伺うと、実施されている金融教育の対象は中高生あたりになるのでしょうか。
はじめは小学生向けにやっていたんです。すると、中高生向けにもやってほしいと言われ、次に自立前のタイミングでも必要だ、となっていき幅広く実施しています。小学生は本当みんな楽しみながら頑張って取り組んでくれて、「お金って結構大事なんだ」とか「たくさん知らないことを教えてもらえてよかった」などアンケートに書いてくれています。中高生は思春期だから、最初は「えー…、60分もやってられない」という雰囲気。でも、児童養護施設だとお金の不安が大きいこもいるんですよね。一見嫌そうに言っていても、よくよく聞いてみると「貯金したいと思う」とか「ちゃんと考えて買い物したいと思う」という声も出てきますね。
教える内容も、一般向けとは少し違うと思い、意識をしながら話しています。たとえば、一人暮らしでお金はどのくらいかかる?という質問に対して、手取りの設定を15万円にしたり。施設では、ティッシュなどの備品はいつも用意されているので、買い物に行く機会が少ないなど、金銭感覚を持ちづらいという点も考慮しています。また、金融教育と言うと投資の話が出てきますが、それよりもどう生活を守るか、という点を重視しています。
最近は、ネットなどで子どもたちの方が情報を知っていることも多く、大人がついていけないことを懸念に思っている、というケースもあります。ですので、子ども向けだけでなくて先生向けの講座というのもありますね。
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■ 社会的養護と金融教育についてより知りたいなら
現在は、独立されて社会的養護での金融教育を進められている牛堂さん。後編では、今後どのような活動をされていく計画なのかを伺っていきたいと思います。
そして、22年8月に開催されるウェビナーでは、牛堂さんと社会的養護の当事者の方のお二人によるセッションを通した社会的養護×金融教育の勉強会を開催する予定です。ご興味ありましたら、ぜひ申し込みフォームからお申込みください!
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