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草露 文(あや)
2022年7月29日 01:16
脚の一本を無くした虫は何を思う。 大雨時行。銀竹の立つ夕方のこと。ある青年は見つけた。それはオニヤンマの亡骸であった。青年はそれを拾うと大切そうに手のひらに乗せ、見つめていた。いろんな所を飛び回ったオニヤンマなのだろう。脚が一本欠けていた。青年はふと思う。この虫は生きていた間に何を思っていたのだろうか。しかし、すぐに思い返す。虫が思考することは無かろうと。ただ、虫は自分が心地良く感じる場所を
2022年7月28日 20:53
こうして、ああして。文章をねりねりしていく。悲しいなあ、悲しいなあ。隣の芝が青いのだ。土潤溽暑。草熱れに白南風の吹く。筆を取る。ペン先のインクすら蒸発しそうな暑さ、と書き、ああだめだ、用紙を丸める、くずかごへと投げつける。苦しいなあ、苦しいなあ。隣の花が赤いのだ。蝉時雨。抜け殻に這う朝顔の蔓。赤翡翠。ピョロロと鳴けば雨の空。新しい用紙を広げて、表面をすべるは筆先で